更新日: 2023.03.16 子育て
年収400万、子1人の世帯。子どもをエスカレーター式の私立小に通わせる「夢」は叶えられる?
今回は、一般的な収入ともいわれる年収400万円の世帯に子が1人いると仮定し、実際に子どもをエスカレーター式の私立小学校に通わせることが可能なのかを考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
小学校から私立に通うと学費はいくらかかる?
小学校から私立に通うと、どれくらいの学費が必要となるのでしょうか。文部科学省のデータを基に考えてみます。
図表1 大学卒業までにかかる教育費
出典:文部科学省 中央教育審議会教育振興基本計画部会(第22回)配布資料【資料5-2】教育投資 参考資料集
上表から計算してみると、子どもを小学校から私立の学校に進学させる場合、必要となる学費は公立の幼稚園含めて2134万円程度となります。この2100万円を超える学費を実際に確保できるかどうかが、1つのポイントとなります。
年収400万円で子どもをエスカレーター式の私立小に通わせるのは容易ではない
親の年齢や今後の給与変動、これまでの貯蓄額、祖父母からの支援の有無などにもよりますが、現実的に考えてみると、年収400万円の世帯で子どもを小学校からエスカレーター式の私立に通わせるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
単純に、15年間で2000万円超のローンを組むことになると考えると、その大変さが実感できると思います。日々の生活を維持し、万一のための貯蓄も行い、そこに子どもの学費もとなると、相応の覚悟が必要です。
大学無償化や高校無償化といった制度による支援策が充実しているとはいえ、全額がカバーされるわけではないため、重い負担が生じることに変わりはないでしょう。
実際、日本政策金融公庫によれば、世帯年収に占める年間の学費の割合は平均で14.9%となっています。分布で見ると一番多いのは10%以上20%未満の層で35.4%、続いて10%未満の層で33.1%です。一方で、30%を超える世帯はわずか14.6%となっています。
図表2
出典:日本政策金融公庫 ~令和3年度「教育費負担の実態調査結果」~
しかし、図表1より計算すると、私立小に通うには平均で年間147万円ほどかかり、これは年収400万円の36.7%にもなる。教育の無償化制度によって親の金銭的な負担を抑えることができるとはいえ、これらのデータを基に考えると、年収400万円で子どもをエスカレーター式の私立小に通わせることは容易ではないといえるでしょう。
現実的には祖父母からの支援や教育ローンなども検討すべき
もともと十分な財産を有していた場合などを除き、年収400万円で子どもをエスカレーター式の私立小に通わせるとなると、高校無償化や大学無償化といった支援制度をフル活用しつつ、教育ローンの利用や祖父母からの支援も不可欠でしょう。場合によっては、各種奨学金の併用も必要になるかもしれません。
そういった諸制度の利用や親族からの支援もなく、無理をして通わせたとしても、日々の生活がまともに維持できなくなっては元も子もありません。親の年齢などによっては老後の生活資金が十分に用意できなくなり、老後は子どもに負担を強いることになる可能性もあります。
年収400万円でエスカレーター式の私立小に通わせたい場合は十分な検討が必要
年収400万円、子1人の世帯が、子どもをエスカレーター式の私立小学校に通わせることは、祖父母からの支援が見込める世帯や十分な貯蓄を有している世帯などでもない限り、容易なことではありません。
また、親の夢だからと無理に実現させたとしても、それを子どもが本当に望むのか、それが子どものためになるのかは別の問題です。
年収400万円で「子どもをエスカレーター式の私立小に通わせたい」と考えている方は、一度冷静に家計の収支と学費について見つめ直し、諸制度を活用した上で教育費が無理のない範囲に収まるよう、現実的な視点から検討していくことをおすすめいたします。
出典
文部科学省 中央教育審議会教育振興基本計画部会(第22回)配布資料【資料5-2】教育投資 参考資料集
日本政策金融公庫 ~令和3年度「教育費負担の実態調査結果」~
執筆者:柘植輝
行政書士