更新日: 2023.03.22 子育て
高校・大学が私立の場合は「1400万円」の教育費が必要って本当? 手当や支援制度にはどんなものがある?
本記事では、教育費について高校・大学が国公立の場合と私立の場合でどの程度違うのか、国からの手当や教育費の支援制度について解説します。
執筆者:齋藤彩(さいとう あや)
CFP
大学までの教育費はいくら?
教育費は、学校でかかるお金だけでなく、学校外での教育にかかるお金も含みます。例えば、ピアノやスポーツなどの習い事、学習塾も教育費に含まれます。
幼稚園~高等学校の年間の教育費
文部科学省の調査によると、幼稚園から高等学校までにかかる年間の教育費は図表1の通りです。
図表1
文部科学省 令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します より筆者作成
年間の教育費は公立と私立を比較すると、私立の方が約2倍高く、小学校に関しては4.7倍です。学校外活動費も中学は僅差ですが、それ以外は私立の方が高いことが分かります。
幼稚園~高等学校までの教育費総額は?
幼稚園の3歳から高等学校3年生の18歳までの15年間における教育費の総額は図表2の通りです。
図表2
文部科学省 令和3年度子供の学習費調査の結果を公表しますより筆者作成
ケース1:全て公立
ケース2:幼稚園のみ私立、小学校から高等学校は公立
ケース3:幼稚園と高等学校が私立、小学校と中学校が公立
ケース4:全て私立
ケース1の幼稚園から高等学校まで全て公立の場合、教育費の総額は約570万円、ケース4の全て私立の場合は約1800万円となり、3倍以上の教育費の差になります。
大学の教育費
日本政策金融公庫の令和3年度「教育費負担の実態調査結果」によると、大学の教育費は図表3の通りです。
図表3
令和3年度「教育費負担の実態調査結果」より筆者作成
国公立大学で約480万円、私立大学文系で約690万円、私立大学理系で約820万円です。国公立と私立とでは教育費が200万円以上の差になることが分かります。
また、大学入学と同時に1人暮らしをする場合は別途お金が必要になります。同調査によると、1人暮らしを始めるために必要な費用は38万7000円、仕送りは年間平均95万8000円です。大学4年間1人暮らしをする場合、初期費用含めて合計約420万円になります。私立大学文系で1人暮らしをすると約1100万円必要になる計算です。
全て国公立の場合と高等学校・大学が私立の場合の教育費の比較
幼稚園から大学まで全て国公立の場合と、高等学校・大学が私立の場合の教育費を比較してみましょう。
幼稚園から大学まで全て国公立の場合:教育費の合計は約1050万円
高等学校・大学(文系)が私立の場合:教育費の合計は約1430万円
高等学校・大学(理系)が私立の場合:教育費の合計は約1560万円
大学で1人暮らしをする場合はさらに約420万円必要ですので、高等学校・大学が私立で1人暮らしをする場合は1800万円~2000万円程度の教育費が必要になります。
国からの手当と支援制度
幼稚園から大学までの教育費は、全て国公立の場合は約1050万円、高等学校・大学が私立の場合は約1430万円~1560万円であることが分かりました。一度に準備をすることはなかなか難しい金額ですから、計画的に準備することが望ましいです。また、子育て世帯を対象とした手当や、子どもの教育を後押しする制度もありますので紹介します。
児童手当
中学終了まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもがいる場合、児童手当が支給されます。児童手当の金額は子どもの年齢等によって異なり、3歳未満は一律1万5000円、3歳以上小学校卒業までは1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は一律1万円です(図表4)。
図表4
内閣府 児童手当Q&Aより筆者作成
しかし、児童手当には所得制限があります。一定の所得以上の場合は児童手当が満額もらえず、特例給付となり子ども1人当たり5000円が支給されます。この特例給付ですが、2022年10月より所得上限限度額が設定され、一定の収入を超えると支給されなくなりました。
所得制限や所得上限限度額は扶養親族の人数によって異なりますが、子ども2人と収入103万円以下の配偶者がいる場合、所得制限の目安の収入は960万円(所得として736万円)、所得上限限度額の収入は1200万円(所得として972万円)になります。
所得制限に該当しない場合、児童手当を0歳から中学卒業までもらうと総額は約200万円になります。所得制限に該当し特例給付となってしまったとしても総額は約90万円です。児童手当を子どもの教育費に充て計画的に貯金するのも1つの方法でしょう。
高等学校等就学支援金制度
高等学校等へ進学を希望する子どもの授業料を一部または全額を支援する国の制度として高等学校等就学支援金制度があります。家庭での教育費の負担軽減と教育を受ける機会の均等化を目的としています。
文部科学省によると、本制度は全国の約80%の生徒が利用しています。支給額は公立高校の場合は年間約12万円、私立高校の場合は年間約12~40万円です。全日制高等学校の年間平均授業料は公立で約12万円、私立で約40万円なので、公立・私立ともにほとんどの授業料をカバーすることができます。
しかし、支給を受けるにあたって所得制限があります。4人家族(両親・子ども2人)の場合、年収約910万円が所得制限の目安となります。
まとめ
本記事では幼稚園から大学までの教育費についてと、全て公立の場合と高等学校・大学が私立の場合ではどの程度教育費に差が出るのか、教育費を準備する手段として児童手当の活用、国の支援制度である高等学校等就学支援金制度について解説しました。
子育て世帯にとって、子どもの教育費は大きな負担になります。子どもの希望する進路への進学のために国の制度や手当を上手に活用してみてはいかがでしょうか。
出典
文部科学省 令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します
日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
内閣府 児童手当Q&A
内閣府 児童手当制度のご案内
文部科学省 高等学校等就学支援金制度リーフレット
執筆者:齋藤彩
AFP