更新日: 2023.03.28 その他暮らし
「生活保護」申請件数は令和3年度より上昇傾向か。大半を占める高齢者世帯の受給要件とは?
そこで、本年度の生活保護申請件数の見通しや高齢者世帯の受給要件について確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
高齢者の生活保護受給世帯が多いというのは本当か?
速報値ではありますが、令和4年3月の生活保護受給の世帯数は164万2821世帯となっています。総人口に占める生活保護受給者の割合は1.63%となります。うち、高齢者世帯は91.3万世帯で、生活保護受給世帯の約56%をも高齢者世帯が占めていることになります。
生活保護の世帯数は、多いとか少ないとか、上昇傾向や下降傾向などについて度々話題になりますが、意外にも生活保護受給世帯の総数は近年横ばいとなっています。一方で、高齢者世帯の生活保護受給世帯数は微増傾向にあります。
こういった最近の傾向から、高齢者の生活保護受給世帯が多いというのは本当だと分かります。
今後の生活保護申請件数の見通しは?
令和4年度は全体的に生活保護の申請件数が前年度に比べて上昇傾向となりそうです。令和4年5月に申請件数が前年同月比で10.6%、保護開始世帯が9.2%増加して以降、毎月前年同月比での増加を示し続けています。
直近の令和4年12月においては申請件数が前年同月比で0.3%減少、保護開始世帯数は0.7%減少となっているものの、物価の高騰なども踏まえると、この後も生活保護の申請件数の上昇傾向は続く可能性が高いとみられるでしょう。
同様に、受給世帯に占める高齢者世帯の割合についても引き続き高い傾向が続くものと思われます。
なぜ生活保護受給世帯に占める高齢者世帯の割合が高いのか
なぜ、生活保護受給世帯に占める高齢者世帯の割合が高くなっているのでしょうか。理由はいくつか考えられます。一つには、年金の給付水準がそれだけでは生活できないレベルとなっている点が挙げられます。
現役世代の間に資産形成が十分できていればそれも解決できるのですが、不況や長らく賃金の上がらない時代が続くなどさまざまな理由から、それができないまま老後を迎える方が増えているのでしょう。
もう一つの理由には、核家族化が挙げられます。親から孫までが同一の世帯で暮らす世帯は今や珍しく、子は親と離れて暮らすことが一般的になりました。子や孫に親を援助する資力があればまた話は別なのですが、今の日本にはそれほどの資力のある方はそう多くはなく、親が金銭的に厳しくなって生活保護を頼るという流れになっています。
いずれにせよ、高齢者世帯が生活保護を受給する根本的な要因は、社会の変化にあるといえそうです。
生活保護の受給要件は?
生活保護の受給要件は、高齢者世帯であろうとその他の世帯であろうと変わりはなく、世帯の全員が持ちうる資産などあらゆるものを駆使しても最低限度の生活を維持できない場合に受給できます。
具体的には下記の要件を満たすことが必要です。
●不動産、自動車、預貯金など、ただちに活用できる資産がない
※個別の事情によっては、自動車や不動産といった資産を保有することが許される場合もあります。
●就労できない、または就労していても生活に必要な収入を得られていない
●年金などの社会保障給付によっても必要な収入を得られない
●親や子などの扶養義務者から扶養を受けられない
支給される金額などの生活保護制度の運用については地域によって異なる部分もあります。詳細についてはお住まいの自治体の福祉事務所または担当の窓口へご相談ください。
生活保護の申請件数は上昇傾向にある
生活保護の受給者数自体は減少傾向にあるものの、申請件数自体は上昇傾向にあるようです。受給世帯においては高齢者世帯が目立ち、この傾向も今後続いていくことになりそうです。
生活保護の受給要件が高齢者世帯か否かによって変わることはありませんが、生活保護の申請件数が増加傾向にあることは一種の社会問題です。
生活保護の受給は悪いことではありませんが、財源には限りがあります。親族間での助け合いができるような社会にしていくためにも、私たち一人ひとりが考えて行動していくべき時代になっているのかもしれません。
出典
厚生労働省 被保護者調査:調査の結果
厚生労働省 生活保護制度の現状について
執筆者:柘植輝
行政書士