更新日: 2023.03.29 その他暮らし
新車ディーラーとの関係が崩れた? 徹底した値引き交渉による意外な弊害
ただ、ディーラーのある地域性や営業担当者との関係性によっては、頑張って値引き交渉すると「気持ちのよい買い物」ができなくなってしまうこともあるようだ。
本記事では、徹底した値引き交渉で、20年来続いていた親と営業担当者の仲をこじらせてしまったAさんの話をしていく。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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初の新車購入で値引き額25万円成功!
Aさん(男性)は、当時、34歳で人口2万人程度の実家で両親と3人で暮らしていた。自家用車は計2台で、Aさんは、あまり車に乗らない母親と2人で、国産の普通車をシェアして使っていた。
父親の車を含めた2台とも、地元の正規ディーラーで同じ営業担当者から数十年購入しており、Aさんも車検などの際に対応してもらったこともあるという。そしてAさんが26歳のとき、母親と共用している車の買い換えを真剣に検討しはじめたのが、全てのきっかけだった。
「WEBで見積もると、7人乗りの乗用車がオプション込みで270万円程度でした。私はいわゆる『子ども部屋おじさん』でしたが、日頃の恩返しのつもりで新車の購入費は私が全額出す予定でしたので、金額を見た瞬間は正直『キツいなぁ』と思いましたね(笑)。だからこそ1円でも安く『値下げ』にこだわろうと思いました」
最初に相談に行ったのは、もちろん父母が数十年懇意にしている、同系列では地元で唯一の正規ディーラーの営業担当者だ。だが、最初の交渉では「下取り価格」を含めて3万円程度しか値引きされずに憤慨した。
「良好な関係を築いているから、何も言わなくても頑張ってくれると思っていたのですが、甘かったですね。実際、父母に聞いてみると、これまではほとんど定価で車を購入していたし、車検なども価格面のサービスはほとんどなかったんですよ。完全に数十年、営業担当者にとって『都合のよい客』だったのだと思いました」
とはいえ、数十年の付き合いがあり地元唯一の正規ディーラーなので、最終的にはAさんはお決まりの店と担当者から購入したいと思っていたという。そこでAさんは2週間程度かけて、競合車や別地域のディーラーを巡り、見積書をつくって再度訪問。そのなかから最安の価格を見せて「1円でも安ければ、即契約して現金一括で購入する」と告げたという。
「ちょっとぶしつけだったかもしれませんが、最安の見積書の新車値引き額は10%程度で常識の範囲内でしたし、何度も交渉すると相手が迷惑なのも分かっていたので、2回目で決めようとしました。私なりに配慮したつもりだったのですが、営業担当者は明らかに不機嫌になっていましたね」
ただ、結果的には車両本体価格、オプションパーツ価格から総計約25万円の値引きを引き出せた。Aさんも満足して購入できて、「意外と俺は値引き交渉が上手なのかもしれない」とも思ったという。しかし、Aさんの値引き交渉によって、思わぬ弊害があったことを数年後に知った。
なぜか別メーカーで買い換えた父。その理由は?
Aさんは新車を購入した1年後に、会社都合で上京した。新車の交渉のことはすっかり忘れていたが、父親が新車を別メーカーで購入したことから、父母が体験した「その後」を数年越しに知ったという。
「まず、私が値引き交渉してから営業担当者からの定期的な連絡などが、一切なくなったとのことです。そして数ヶ月後、車検で訪れると連絡なしに担当が変更されており、前担当者が同じフロアに居たのにあいさつもなかったとか。めちゃくちゃ居づらい雰囲気で、利用しづらいから他社で車検するようになったそうです。父親が新車購入の相談で訪問した際も、あいさつすらなく、結局気まずさから全く別メーカーのディーラーで購入するほどだったということです」
盲点だったのは、同系列の正規ディーラーがない地域では競合が少なく、値引き交渉する知識や体力が少ない高齢者が多いAさんの地元では、競争が起こりにくく「売り手が有利」な立場だったのだ。
「後から知ったのですが、交渉したディーラーは母親が事故を起こした際に無関係にもかかわらず、一時的に車両を無料で保管してくれるなど融通を利かせてくれていたようです。ポツリと『値引き交渉が原因だったのかもね』と言われたときは、さすがに『やりすぎたかな』と思いましたね」
覆水は盆に返らない。70歳近い両親にとっては、お金はともかく買いやすい購入先があったほうがよかっただろうと考える一方、Aさん自身はむちゃな値引き要求をしたつもりはなく、ディーラーが「殿様商売している」と思うところもあるようだ。
まとめ
25万円という「お金」を取るか、それ以外の「付き合い」を取るかは人それぞれだ。ただ、その影響は、地域性や関係性まで考慮して損はないだろう。特に半導体不足などの影響で新車の納車が遅れている昨今、従来の「値引き額の目安」や、そもそも「値引き交渉をするか否か」といった判断も慎重に行う必要があるのではないだろうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部