更新日: 2023.04.05 その他暮らし

40代男性。勤続年数25年の年に会社が倒産。「退職金」は満額支給される?

執筆者 : 柘植輝

40代男性。勤続年数25年の年に会社が倒産。「退職金」は満額支給される?
正社員なら雇用が安定して定年まで同じ職場で働けるというものでもありません。気づいたら会社が倒産ということは決してあり得ないことではないのです。
 
もし、会社がいきなり倒産してしまった場合、退職金は満額受け取れるのでしょうか。25年間勤め上げた40代男性の例を基に考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

会社が倒産したとしても退職金を受け取る権利自体はなくならない

退職金の支払いに関する規定が雇用契約や就業規則、退職金規定などに記載されており、会社と労働者との間で退職金の支払いが合意されている場合、退職金が支給されます。
 
この退職金は会社が倒産したとしても受け取る権利は失われません。労働者は満額受け取る権利を有しており、会社は満額支給する義務を有しています。年齢や性別、勤続年数に関係はありません。
 

現実には倒産に伴う解雇の場合退職金を受け取ることは困難

退職金を支払う旨の規定があったとしても実際にそれが支払われるかどうかは別問題です。
 
実際に支払いを受けるには、支払いをする側の会社にそれだけの資力がなければなりません。無い袖は振れないという言葉がありますがまさにそのとおりで、会社に支払い義務があっても実際にお金がない場合は支払いを受けることができないのです。
 
倒産する理由は、後継者がいないことによる廃業などを除き基本的に会社にお金がなく立ち行かなくなることに起因します。そういった倒産に伴い解雇や退職となった場合、多くの場合は、よくて一部のみにとどまるでしょう。
 

未払賃金立替払制度の利用も検討すべき

倒産した会社から退職金の支払いを受けられないという場合、未払賃金立替払制度の利用も検討してみてください。
 
未払賃金立替払制度とは、倒産した会社から給与や退職金の支払いが受けられない場合にその一部が立て替え払いされる制度です。この制度は全国の労働基準監督署および独立行政法人 労働者健康安全機構が運営している公的かつ安全性の高い制度です。
 
残念ながら、支払われる金額は未払いの賃金を含めた額の8割となっています。退職金の支払いが全額保証される制度ではない点には留意する必要があるでしょう。また、退職日の年齢によっても限度額があります。その限度額を超えるときは支払われる金額は限度額の8割となります。
 
図表


出典:独立行政法人労働者健康安全機構 未払賃金の立替払制度の概要
 
40代の場合、性別や勤続年数に関係なく立て替え払いの上限額は176万円から296万円になります。詳細については最寄りの労働基準監督署へご相談ください。
 

中小企業退職金共済制度を使っている場合は確実に支払いを受けられる

倒産する会社から退職金の支払いを受けられない可能性があるのは会社が退職金を直接支払うような場合です。会社が中小企業退職金共済制度を利用して退職金を用意していた場合は、会社にお金が全くなくとも退職金について全額支払いを受けられます。
 
なぜなら、中小企業退職金共済制度は運営元である独立行政法人勤労者退職金共済機構から直接従業員に支払われることになるからです。請求は従業員自身で行うことになりますので、会社が倒産した場合速やかに退職金の請求をするようにしてください。
 

会社が倒産した場合退職金が満額受けられないこともある

会社が倒産した場合、状況によっては退職金が満額受け取れないことも珍しくはありません。勤続年数25年と40代に至るまで長期にわたって会社に貢献し続けたにもかかわらず退職金が支払われないのは理不尽に感じるかもしれません。
 
しかし、理不尽さを嘆いても現実は何一つ変わりません。退職金の有無は今後の生活に影響を及ぼすこともあります。退職金の請求手続きについては速やかに確認し、今後の生活設計と並行して行っていくようにしてください。
 

出典

独立行政法人労働者健康安全機構 未払賃金の立替払制度の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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