【どうなる児童手当】少子化対策たたき台発表。「所得制限撤廃」や「多子世帯増額」は?
配信日: 2023.04.20
なお、本記事は関係府省会議による「こども・子育て政策の強化について(試案)」に基づくものであり、決定事項ではありませんので、ご注意ください。
執筆者:柳沢俊宏(やなぎざわ としひろ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表
「こども・子育て政策の強化について(試案)」とは?
児童手当について記載されている「こども・子育て政策の強化について(試案)」とはどのようなものなのでしょうか?
関係府省会議で取りまとめられたもの
「未来への投資」であるこども政策の強化に向けて、目指すべき姿と当面加速化して進めるべき事項について集中的に検討するため、こども政策担当大臣の下、関係府省から構成される「こども政策の強化に関する関係府省会議」が開催されており、そこで取りまとめられたものが「こども・子育て政策の強化について(試案)」です。
この試案は、「我が国のこども・子育て政策を抜本的に強化し、少子化の傾向を反転させるため、今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策と、こども・子育て政策が目指す将来像を取りまとめたもの」です。
児童手当はどうなる?
それでは、児童手当の所得制限撤廃や多子世帯増額はどうなるのでしょうか? あくまでも「こども・子育て政策の強化について(試案)」に記載されているものであるという前提ではありますが、今後の児童手当がどうなるかについて見ていきましょう。
所得制限撤廃について
現在の制度では、所得制限が設けられており、おおむね年収が833万3000円を超えると所得制限にかかる可能性があります。しかし、この所得制限については、撤廃すると試案には記載されています。
年収が高いからといって、子どものために十分にお金が使えているとは限りません。また、年少扶養親族(年齢16歳未満の扶養親族)の扶養控除(所得控除38万円)を廃止する代わりに児童手当(当時は「子ども手当」)が導入された経緯を考えると、所得制限を撤廃することは制度間の整合性の面からも妥当性があります。
年少扶養親族の扶養控除は所得制限がないものでしたので、その代わりに導入された児童手当も本来は所得制限がないものであるべきですが、所得制限が設けられていました。所得制限を撤廃することで、この矛盾が解消されることになります。
支給期間について
現在の制度では、支給期間は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)となっています。しかし今回の試案では、支給期間は「高校卒業まで延長する」と記載されています。大学等の教育資金の確保につながるなど、この3年間の延長は、家計において非常に助かるものではないでしょうか。
多子世帯増額について
現在の制度では、3歳以上小学校修了前の期間で第3子以降は月額1万円ではなく1万5000円になるという多子世帯増額が行われています。
しかし、多子世帯増額については、「多子世帯が減少傾向にあることや経済的負担感が多子になるほど強いこと等を踏まえ、手当額についても、諸外国の制度等も参考にしつつ、見直しを行う」と記述されています。
見直しを行うとされているので、一定の増額は期待できそうです。しかし、増額について所得制限が設けられるのではないかという不安もあります。前述の所得制限撤廃がどこまでかかるのかが気になります。
つまり、現行の所得制限は撤廃するが多子世帯増額には所得制限を設けるのか、それとも児童手当制度に所得制限というもの自体を考慮しないのか。子どもを産み・育てやすい環境作りが目的であるのであれば、多子世帯増額について所得制限を設けるべきではないでしょう。
「骨太の方針2023」を待たなければならない
試案では、「対象や金額など見直しの具体的内容については、今後、財源の議論と併せて検討し、骨太の方針2023までに結論を得る」とされており、私たちがより関心を寄せている部分については、2023年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2023」(「骨太の方針2023」)を待たなければなりません。
子育て世帯はもちろんのこと、これから子どもを産み・育てようと考えている世帯からその結果が注目されることでしょう。
出典
内閣府こども家庭庁 「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」(2023年3月31日)
執筆者:柳沢俊宏
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表