更新日: 2023.05.02 その他暮らし

「生活保護」って簡単に受けられるの? 親族が「年収1000万」あっても受給可能?

執筆者 : 柘植輝

「生活保護」って簡単に受けられるの? 親族が「年収1000万」あっても受給可能?
生活保護に関する不正受給や受給者増加というニュースを聞くと、「生活保護」って簡単に受けられるのでは? もしかして親族が年収1000万円を超える高収入でも可能なのでは? と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
 
そこで、今回は生活保護は簡単に受けられるのかについて考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

生活保護の概要

生活保護とは、最低限度の生活を保障するとともに、その方の自立の援助を目的に必要な保護を行う制度です。生活保護は、世帯員全員がその利用し得る資産、能力その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用することが前提となっています。その上で、地域や年齢、世帯の人数によって定められる最低生活費を賄うことができない場合に支給がなされます。
 
なお、扶養義務者による扶養は生活保護に優先されます。扶養義務者とは父母や兄弟姉妹など3親等以内の親族が該当します。
 
とはいえ、扶養義務者の扶養は絶対ではなく、それが生活保護の諾否に影響を及ぼすことはないとされています。また、扶養義務者による扶養が望めない場合や、そうすることで本人に大きな不利益が生じる場合などは直接的な扶養照会(扶養義務者へ扶養を求めること)が行われないこととされています。
 

生活保護の受給は簡単なのか?

生活保護の受給は簡単ではありません。生活保護を受給するには所定の手続きに従ってお住まいの自治体の申請窓口にて申請し、審査を経る必要があります。多くの場合自治体の福祉事務所が申請の窓口になります。
 
審査はその人の資産状況や就労能力、親族への扶養照会など多くの面から行われ、本当に生活保護に頼らなければならないのかが調査されます。そのため、生活保護の受給は簡単ではありません。健康で働く能力を有している状態や、生活できるだけの資産がある状態では基本的には受給できないよう制度が運用されているのです。
 
仮に生活保護が受けられたとしても資産の保有に大きく制限がかかります。例えば、車なしでは生活できない地域に住んでいるなど例外的な場合でもない限り車の所有は認められません。テレビや新聞、インターネットといったメディアの情報から感じられるほど生活保護の受給は簡単ではないのです。
 

親族の年収が1000万円あっても生活保護の受給は可能?


 
絶対ではありませんが、親族の中に年収1000万円ある方がいても生活保護の申請と受給が可能となる場合があります。
 
例えば、扶養義務が及ばない遠い関係性にある方であったり、扶養義務があっても本人と著しい関係不良があるなど扶養照会が本人の不利益となることが明らかであったりする場合です。
 
また、扶養照会の際「扶養できない」といったように扶養を拒否されてしまった場合は、その拒否した親族の年収が1000万円あっても、生活保護の申請と受給ができる可能性もあります。
 

まとめ

生活保護の受給は世間で言われるほど簡単なものではありません。申請すれば受給する資格を有しているかさまざまな面から審査されます。受給後も保有資産に関する制限を受けるなど完全に自由な生活といかない部分もあります。また、生活保護は親族の年収が1000万円あったとしても状況によっては受給できる場合もあります。
 
生活保護についてはさまざまな意見がありますが、国民一人ひとりがセーフティーネットのひとつとして正しく理解しておくべき制度であることには間違いないでしょう。
 
執筆者:柘植輝
行政書士