更新日: 2023.05.15 その他暮らし
座り仕事ですが仕事中に「ぎっくり腰」になりました。「労災」になりますか?
ただし、すべての腰痛が認定されるわけではありません。腰痛の労災認定は、厚生労働省の「業務上腰痛の認定基準」で判断されますが、「ぎっくり腰」は原則労災の対象外とされています。
ただし、場合によっては認められる可能性もあるため、自分で判断することなく当該機関に問い合わせることが大切です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
まずは労災について確認しておこう
労災(労災保険)に加入していると、業務や通勤時の負傷、病気、障害、死亡に対して労働者やその遺族に保険が給付されます。
・労災の概要
労災は労働保険の1つで、原則として労働者を使用しているすべての事業に適用されるため、職種や雇用形態は問われません。事業に使用されていて賃金が支払われている全労働者が対象です。なお、労災の保険料は全額事業主が負担します。
・給付の種類
労災の主な給付は、下記の5種類です。
(1)治療費や通院費などが無料になる療養給付
(2)仕事を休んだ場合に給与の8割が支給される休業給付
(3)障害が残った場合に一時金や年金が支給される障害給付
(4)介護が必要になった場合にその費用が支給される介護給付
(5)本人が死亡した場合に一時金や年金などが支給される遺族給付
・給付の請求方法
労災の給付の請求方法や請求先などは、各給付によって異なります。そのため、労災の申請が必要になった場合は、事業主か労働基準監督署に問い合わせて確認してください。なお、労災申請には時効があり、療養給付、休業給付、介護給付は2年、障害給付、遺族給付は5年で請求権が消滅します。
「業務上腰痛の認定基準」とは
厚生労働省が労働者の腰痛が業務上腰痛であるかどうかを判断するために設けているのが、「業務上腰痛の認定基準」です。当認定基準では、医師によって療養が必要と認められた仕事中の腰痛を2種類に分類し、それぞれに要件を設けて労災に該当するかどうかを判断しています。
・要件1.災害性の原因による腰痛
災害性の原因による腰痛とは、下記の2つの要件を満たしている腰痛のことです。
(1)腰の負傷と負傷の原因になった急激な力の作用が、仕事中に起こった突発的な出来事が原因であることが認められる
(2)腰への力の作用が腰痛の原因で、既往症や基礎疾患としての腰痛を著しく悪化させたことが医学的に認められる
・要件2.災害性の原因によらない腰痛
災害性の原因によらない腰痛とは、突発的な出来事が原因で発症した腰痛ではなく、腰に大きな負担がかかる仕事の従事者に発症し、作業の状態や期間から考えてその仕事が原因であることが認められる腰痛を指します。
座り仕事中の「ぎっくり腰」は労災の対象になる? 座り仕事中の「ぎっくり腰」は労災の対象になる?
それでは、問題の座り仕事中に発症した「ぎっくり腰」で労災が出るかどうかを考えてみましょう。
・そもそも「ぎっくり腰」とは何か?
「ぎっくり腰」は急に発症した強い腰の痛みを指す通称で、正式には「急性腰痛(症)」と呼ばれています。物を持ち上げたり腰をねじったりした際に発症しがちですが、寝起きの直後や何もしていないときに起こることもあります。痛みの原因は、関節や椎間板に許容限度以上の力がかかって発症するけが(捻挫や椎間板損傷)や、腱(けん)や靱帯(じんたい)などの損傷によるものが多いと考えられています。
・座り仕事中の「ぎっくり腰」で労災は出るのか?
座り仕事中に発症した腰痛の原因が、上記の要件に該当していれば労災の対象になるかもしれません。ただし、「ぎっくり腰」に関しては日常的な動作でも起こることから、「労災による補償の対象にはならない(厚生労働省)」とされています。とはいえ、発症した際の姿勢や動作が異常で腰への強い力の作用があったと認められれば、業務上腰痛と認定される可能性はあります。
労災が出るかどうか不明な場合は労働基準監督署に問い合わせよう
座り仕事中の「ぎっくり腰」が災害性の原因による腰痛であったとしても、原則労災の対象にはならないようです。ただし、仕事中の異常な姿勢や動作が原因で腰に強い力が作用した結果の「ぎっくり腰」である場合は、この限りではありません。業務上腰痛と認められる可能性があるため、事業主に相談した上で最寄りの労働基準監督署に問い合わせてみましょう。
出典
厚生労働省 労災補償
厚生労働省 腰痛の労災認定
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー