更新日: 2023.07.24 その他暮らし

「最悪、生活保護を頼ればいい」は大間違い!? 受給要件はかなり厳しいって本当?

執筆者 : 柘植輝

「最悪、生活保護を頼ればいい」は大間違い!? 受給要件はかなり厳しいって本当?
「最悪の場合には、生活保護を頼ればいいじゃん」そういった言葉を耳にしたことはないでしょうか。こうした話を聞くと、「生活保護はそんなに簡単に受けられるの?」と疑問に感じる方もいることでしょう。そこで、生活保護は簡単に受けられるのか。その受給要件について確認していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

生活保護の受給要件は?

生活保護は、世帯の全員が資産や能力などあらゆるものを活用しても、最低限度の生活を維持できない状況であるということが前提条件になります。そのうえで、親や兄弟姉妹、3親等以内の親族など、扶養義務者からの扶養が受けられない場合に受給できます。
 
つまり、貯金や株式、土地といった財産などがなく、かつ、病気やけがなどで働くことができない状況に加え、親族から支援が受けられない極限の状態でようやく受けられるのが生活保護というわけです。
 
ただし、車がないと生活できないなど所定の状況であれば、一定の範囲内で財産の保有が認められることもあります。
 

実際に受給開始に至るのは容易ではない

先の条件だけ見ると「あれ? 意外と簡単に生活保護を受けられるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、現実に生活保護の受給に至るのはそう簡単ではありません。
 
生活保護を受給する場合、まず福祉事務所などに申請します。そして、その申請に基づき生活保護が必要かどうか審査されます。このとき、先に挙げた生活保護を必要とする要件を満たしており、実際に生活保護の受給が必要か厳しく審査されます。
 
申請者本人に対してだけでなく、預貯金の有無や生命保険への加入状況などについて、関係機関の協力を得て、病気やけがについては主治医にヒアリングを行うなど、徹底的な調査もされます。
 
もちろん、本当に支援が必要だという場合には、審査と調査の結果に基づき生活保護による支援決定となるわけですが、財産を保有していることが発覚したり、働くことができるのに働いていなかったりするだけという状況であれば、生活保護による支援は受けられません。実際、調査と審査の結果、生活保護を受けられなかったという事例は少なくありません。
 

生活保護は受給後も厳しい制約が課せられる

生活保護は受給が決定すれば、その後働かなくても悠々自適に生活できるといったものではありません。生活保護で支給されるお金は、本当に最低限の生活を営むのに必要な分のみになります。
 
具体的に支給される金額は、地域や世帯の人数など個別の要件によって異なりますが、単身者なら家賃含めて10万円程度になるでしょう。そして、生活保護の受給中に収入や支出、生活状況に変化が生じた場合は福祉事務所などに届け出なければなりません。
 
加えて、生活保護の受給中はケースワーカーと呼ばれる相談や支援を担当する支援者が付きます。生活状況によっては、ケースワーカーからの指示に従って生活を改善する必要もあったり、心身の状況などによっては就労するよう指導されたりすることも当然あります。
 
ケースワーカーの指示に従わない、虚偽の申告で生活保護の受給に至ったなどの場合は、生活保護の打ち切りや受け取った保護費の返還になる可能性もあります。このように、生活保護を受給すれば悠々自適に毎日何も心配せず暮らせるというわけではありません。
 

生活保護は多くの人が想像するほど生易しいものではない

メディアでは、生活保護が簡単に受給できるかのような報道がされることもあります。しかし、生活保護は本当に困窮している人を支援する制度です。実際にはそう簡単に生活保護は受給できず、厳格な審査の上、本当に必要な人にしか受給できないようになっています。
 
また、一度受給に至っても日々の生活には厳しい制約が課されることとなり、場合によっては打ち切られてしまうこともあります。
 
「最悪、生活保護を頼ればいい」と安易に生活保護の受給を考えても思うようにいかない可能性が高いです。最初から生活保護に頼ることを前提に考えるのではなく、生活保護に頼らずに済むよう、堅実に日々生活するようにすることをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度

厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和4年4月)

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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