「スープストック」の離乳食提供開始、なぜ炎上した? 顧客戦略をもとに読み解く

配信日: 2023.08.01 更新日: 2023.08.02

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「スープストック」の離乳食提供開始、なぜ炎上した? 顧客戦略をもとに読み解く
2023年4月、スープストックトーキョーが離乳食の提供を開始したことが話題となりました。子育て世代を支援する画期的な取り組みですが、一部の利用者からは「二度と行かない」といった声も上がり、大きな論争を呼びました。なぜ、こうした反対の声が上がったのか、約4ヶ月弱が経過した今、改めてスープストックの経済的狙いも含めて解説します
守屋鮎美

執筆者:守屋鮎美(もりや あゆみ)

2級ファイナンシャルプランナー

スープストックトーキョーが離乳食の無償提供開始

スープ専門店として人気のスープストックトーキョーが、2023年4月25日より全店舗で離乳食の無償提供を開始することを発表しました。これを受けて、SNSでは肯定的な意見のほか、「子連れが大挙したら、ゆっくりご飯が楽しめない」と言った声や、赤ちゃんモデルの容姿を否定する内容にまで発展し、さらにそれを批判する意見も相次いで一時は大騒動となりました。
 

スープストックの顧客戦略

なぜ今回、こんなにも大きな話題を呼ぶこととなったのでしょうか? その理由の1つが、本来スープストックトーキョーがメインの顧客としていたターゲット層と、今回の離乳食無償提供のターゲットである顧客層がかみ合っていないことにあるようです。
 
スープストックトーキョーの創業者である遠山正道氏に対して行われた、2012年のインタビューによると、創業当初は「女性のひとり客」を想定してコンセプトが作られていました。
 
簡単に食事を済ませられる「スープ」を提供するお店でありながら、他の「1人で気軽に入れるチェーン店」と比べて内装や清潔さなどにこだわっていたため、コンセプト通り女性のひとり客に人気を博してきました。
 
それに対して、今回の離乳食無償提供開始はファミリー層をターゲットにした施策であり、もともとのメインターゲットの中には受け入れられないといった意見も多かったようです。
 

スープストックの理念

そもそも、なぜスープストックは本来の顧客ターゲットへの施策とは異なる離乳食の無償提供開始を始めたのでしょうか? スープストックの歴史とその理念をひもといてみましょう。
 
スープストックトーキョーは、全国に店舗を抱えるスープ専門のチェーン店です。「世の中の体温をあげる」を理念に、うま味調味料や保存料を使わずに手間やコストをかけることで、素材のうまみを生かした豊かで安心できるスープを提供してきました。
 
その理念のもと、「soup for all!」という食のバリアフリーの取り組みをしており、グルテンフリーやベジタリアン対応スープの販売、咀嚼配慮食サービスの開始など、さまざまな「ひとり」のための取り組みを行っています。
 
もともと、無添加のスープを売りにしており、無添加食品と親和性の高い離乳食の提供は一部の店舗で行っていました。さらに、スープストックの別事業である「100本のスプーン」では、家族の時間に寄り添うファミリーレストランとして、離乳食の無料提供がファミリー層に人気を博しています。
 
このように、どの取り組みを見ても「ひとりに寄り添う」を徹底して行っていることが分かります。
 
「ひとりに寄り添う」姿勢がしっかりと伝わっていたからこそ、批判をした顧客たちは「自分に寄り添ってくれていたスープストックが、自分とは違う顧客層を優遇しだした」と感じたのではないでしょうか。そして、スープストックはこれらの批判にも「誰も区別することはない」として、すべての人がスープストックの顧客である、というメッセージを発表しています。
 

子育て支援と日本経済

スープストックトーキョー全店舗での離乳食提供開始は一部の顧客から批判を浴びてしまいましたが、政府のこども政策担当相もこの件に触れ、この取り組みを「歓迎したい」と述べ、「社会の意識を変えていくことは簡単ではないが、より多くの方の理解と行動を促せるよう努めたい」と話しました。
 
スープストックトーキョーからも、批判を受けて発表した声明の中で、その理念や歴史からじゅうぶんに合理的理由があったこと、改めて同社の目指すべき姿や顧客に対する姿勢を示してくれました。少子化対策は日本にとって緊急の課題です。より子育てしやすい社会が実現をすることを願っています。
 
執筆者:守屋鮎美
2級ファイナンシャルプランナー

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