高額な医療費、窓口で提示すれば自己負担限度額までになる「限度額適用認定証」とは
配信日: 2018.08.17 更新日: 2019.05.17
Text:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
高額療養費って?
高額療養費は、年齢と所得によって自己負担限度額が定められていますが、1ヶ月(1日から月末まで)に医療機関の窓口で支払った金額が、自己負担限度額を超えた場合、申請することで超えた分が払い戻される制度です。
ただし、食事代、差額ベッド代、保険外の負担分は対象にはなりません。
例えば、標準報酬月額20万の場合の自己負担限度額が57,600円で、3月3日から3月13日まで入院したとします。支払った医療費は11万円。自己負担額の上限57,600円を超えているので、110,000円-57,600円=52,400円 申請すれば戻ってきます。
ところが、3月26日から4月5日まで入院したとした場合、支払いの医療費が3月分6万円、4月分5万円の合計11万円でしたが、3月は6万円>57,600円なので、申請することで2,400円戻ってきますが、4月は5万円<57,600円なので該当しません。合計すれば自己負担限度額は超えているのですが、それぞれの月ごとの自己負担額が対象となるため、月をまたいで合算したものは対象になりません。
上限額は、年齢や所得によって違います
自己負担額の上限は、年齢と所得により定められています。
負担が軽減出来る「世帯合算」
世帯(被保険者とその扶養家族)のそれぞれが同じ月にそれぞれ病院にかかったり、複数の病院にかかったり、同じ病院でも入院と通院の場合など、それぞれの窓口で負担した額を世帯で合算することができます。
70歳未満の場合自己負担額が21,000円以上、70歳以上は全ての自己負担額を合算できます。
医療機関ごとに算出します。同じ医療機関でも、医科入院・外来、歯科入院・外来と分けて計算します。医療機関の処方箋により薬局で調剤を受けた場合は、薬局で支払った自己負担額を、処方箋を交付した医療機関の分に含めます。
合算できる範囲は、同じ健康保険証の被保険者と扶養者であれば、同居していなくても合算の対象になりますが、別の保険証の場合(例えば、夫婦共働きで、それぞれが健康保険の被保険者の場合など)、同居家族でも合算の対象となりません。
さらに限度額が引き下げられる「多数該当」
高額療養を受けた月の前1年間に、同一世帯で3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けた場合は、4ヶ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額が軽減されます。
ただし、多数該当は同一保険者での場合に限られます。
例えば、協会けんぽから国民健康保険に加入した場合など、加入前に高額療養費の受給が3度あったとしても、多数該当に通算されません。
また、多数該当は同一被保険者で適用されます。途中から、誰かの扶養家族になった場合、それまでに3回の高額療養費を受給していたとしても、多数該当に通算されません。
立て替え払いをしなくていい「限度額適用認定証」
高額療養費は、医療機関の窓口で支払った金額が自己負担限度額を超えた場合、申請することで超えた分が払い戻される制度です。
申請して、高額療養費が払い戻されるまでに少なくとも3ヶ月程度かかります。いくら返金されるとしても、高額なお金を一度払わなければならない負担は大きいですね。「高額医療費貸付制度」という、無利息で借りられる制度がありますが、療養費は入ったら返済に一手間がかかります。
しかし、「限度額適用認定証」(低所得者の場合は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」)を予め交付してもらうことで、窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。
協会けんぽ加入者は各支部、組合健保加入者は担当、国民健康保険加入者は市役所に、「限度額認定申請書」(「限度額適用・標準負担額減額認定申請書」)を提出します。
申請受付月より前の限度額適用認定証の交付は出来ません。日にちに余裕を持ってご提出ください。制度の詳細は、厚生労働省のHPをご覧ください。
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者,相続診断士,終活カウンセラー,確定拠出年金相談ねっと認定FP