更新日: 2023.08.04 その他暮らし
分譲マンションの「修繕積立金」はなぜ払う必要があるの? 目安金額はどう決まるかについても解説
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
分譲マンションの修繕積立金とは
分譲マンションを所有すると、管理費のほかに修繕積立金を毎月支払うことになります。修繕積立金は、マンションの居住環境の確保と資産価値の維持や向上のためにあてられる、欠かせない支出です。
そのため、主に新規購入者向けに国土交通省が策定した「修繕積立金についてのガイドライン」というものがあります。2021年、2023年に改訂・追補され、マンションの区分所有者や購入予定者にも修繕積立金の目安を示す内容になっています。
ここでは、築10年以上経過したマンションの区分所有者や購入予定者を想定し、修繕積立金について見てみましょう。
修繕積立金の課題
修繕積立金に関しては、いくつか課題があります。そのうちの一つは、積み立て不足のマンションが34.8%あるとされていることです。
修繕積立金は、長期修繕計画とセットで機能するもので、特に既存のマンションの場合は、12~15年程度に1回は大規模修繕が必要とされています。積み立て不足になると、必要なときに大規模修繕が実施できないという事態が起きることになります。
もう一つの課題は、修繕積立金の額などが他の分譲マンションと比較して妥当なのかという点です。
そこで、国土交通省が示す修繕積立金のガイドラインではどうなっているのか、概要を見てみましょう。
修繕積立金についてのガイドラインの要点
長期修繕計画と連動した修繕積立金を積み立てること
長期修繕計画は、12年~15年に1回実施される大規模修繕工事と、それ以外の設備などの劣化に応じて実施される補修工事があります(図表1)。
図表1
国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査を元に筆者が作成
大規模修繕工事は、足場とメッシュシートで覆う仮設工事を伴うものです。それに対し、その他の工事では同様の仮設工事は通常ありません。
このような修繕補修を長期で見通し、明細に基づいて長期修繕計画書が作成されます。総括表には「修繕積立金の年間収入」と「大規模修繕費とその他補修工事費」、「修繕積立金残高」の推移が記載されます(図表2)。
図表2
国土交通省 長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメントを元に筆者が作成
この例では、大規模修繕の年の修繕積立金の残高がゼロとなっており、突発的な支出増があると資金不足になることを示しています。そういったことを確認し、計画に連動した修繕積立金を積み立てていくためにも、長期修繕計画書は分譲マンションの管理にとってきわめて大事な資料です。
区分所有者ごとの目安となる金額
次に、ガイドラインでは、修繕積立金の金額が他のマンションと比較した場合、妥当な金額になっているのかを客観的に判断できる目安を示しています。
これは、1平方メートル当たりの修繕積立金の月額をマンションの規模や階層ごとに、ある程度の範囲における目安を提示したものです。
図表3
国土交通省 長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント及びマンションの修繕積立金に関するガイドラインの見直しについてを元に筆者が作成
図表3を元に、「マンションの総床面積5000平方メートル、20階未満の専有面積80平方メートル)」と仮定し算出すると、次の通りとなります。
1万3600円~2万5600円(170×80~320×80)とかなり幅がありますが、ひとまず目安になるのではないでしょうか。なお、機械式駐車場がある物件の場合は別途加算がありますが、ここでは除外しました。
積立方式
修繕積立金の積み立て方式は、均等積立方式と段階増額積立方式があります。
均等積立方式は、長期間同じ金額の修繕積立金を積み立てますが、段階増額積立方式は、経年によって積立額が増加する方式です。新築分譲時は少ない修繕積立金で募集をして、数年後から収支のマイナスを理由に増額するといったケースが多くなっています。
段階増額積立方式の場合の増額は、管理組合が管理会社と協議しながら改定することになります。したがって、しっかりとした管理体制になるよう管理組合と、区分所有者すべての理解と認識が求められます。
まとめ
修繕積立金は区分所有者にとっては負担でもあるかもしれません。ただ、マンションの修繕積立金不足を引き起こさないために、管理組合の構成員である区分所有者が、自分たちの住まいの住環境維持と資産価値を維持向上させる意識を持ち、マンション管理の知識を学んで、管理会社を正しくコントロールすることが大事ではないでしょうか。
出典
国土交通省 平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状
国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査
国土交通省 長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント
国土交通省 長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント及びマンションの修繕積立金に関するガイドラインの見直しについて
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP