更新日: 2023.08.19 その他暮らし
子どもが祖母の車を傷つけ「5万円」の修理費が必要に! 保険は使える? 別居・同居でなにか変わるの?
本記事では、筆者が体験した別居の祖母の自動車に子どもが自転車で傷をつけてしまった状況で保険が適用されるのか詳しく解説します。また、子どもが原因で賠償金が請求される事例もあわせてみていきましょう。
執筆者:鳥居佳織(とりい かおり)
FP2級
個人賠償責任保険とは
個人賠償責任保険とは、個人またはその家族が誤って日常生活で他人にけがをさせてしまったり、他人の物を壊してしまったりしたときなど、法律上の損害賠償責任を負った場合にその損害を補償するための保険のことです。損害保険会社によって名称は異なり、「日常生活賠償責任補償特約」といった名称などがあります。
個人賠償責任保険は、主に以下のような保険に付加して加入します。
●火災保険
●自動車の任意保険
●自転車保険
●傷害保険
●勤務先の団体保険
●クレジットカードのオプション など
年間保険料は数千円ほどです。また保険金額は、1億円や3億円など手厚い金額のものが多くなっています。
そして、個人賠償責任保険は原則「生計をともにする同居の親族」が補償対象となります。補償対象となる個人賠償責任保険の被保険者の範囲は、以下のとおりです。
1. 記名被保険者(本人)
2. 配偶者
3. 本人またはその配偶者の同居の親族
4. 本人またはその配偶者の別居の未婚の子
5. 本人が未成年者または責任無能力者の場合、親権者その他の法定監督義務者および監督義務者に代わって本人を監督する人(本人の親族に限る)。ただし、本人に関する事故に限る
6. 2~4のいずれかが責任無能力者の場合、親権者その他の法定監督義務者および監督義務者に代わって責任無能力者を監督する人(その責任無能力者の親族に限る)。ただし、責任無能力者に関する事故に限る
例えば、夫が加入する自動車保険に個人賠償責任保険が付加されていた場合、子どもや妻も補償の対象となります。同居していない子どもでも、未婚で親からの仕送りを受けていれば補償の対象です。
別居の祖母の自動車を子どもが傷をつけた事例は保険金が支払われるのか
個人賠償責任保険は、他人の身体や物に損害を与えたケースが対象となりますが、別居の祖母の車は保険金の支払い対象となるのでしょうか?
これは筆者が実際に体験したことです。それは別居の祖母が自宅に自動車で訪問しており、子どもが帰宅して自転車をとめるときに起こりました。駐車してあった祖母の自動車に自転車のハンドルが当たってしまい、車に傷をつけてしまったのです。修理代は約5万円でした。
この事例は祖母が別居だったことが大きなポイントで、賠償金の支払い対象となり、修理代が支払われました。もし祖母が同居だった場合には、子どもと祖母の両者が被保険者となるため、個人賠償責任保険の支払い対象外となります。
個人賠償責任保険で賠償金が支払われないケース
両者が被保険者だった場合には、支払い対象外となります。そして、賠償金が支払われないケースはほかにもあります。個人賠償責任保険で賠償金が支払われない主なケースは、以下のとおりです。
1.契約者、被保険者の故意による損害賠償責任
2.地震・噴火またはこれらによる津波に起因する損害賠償責任
3.被保険者と同居の親族に対する損害賠償責任
4.被保険者が所有、使用、管理する財物の正当な権利を有する者に対する損害賠償責任
5.被保険者の職務遂行に直接起因する損害賠償責任
6.被保険者の心神喪失に起因する損害賠償責任
7.航空機・船舶・車両の所有、使用、管理に起因する損害賠償責任
8.他人への名誉毀損やプライバシー侵害
このように賠償金が支払われない条件があるため、事前に確認しておきましょう。
子どもが原因となる個人賠償責任保険の支払い事例
子どもが原因となって、個人賠償責任保険の賠償金が支払われたケースは、ほかにも多くあります。なかには高額となる事例もあるため、詳しくみていきましょう。自転車での事故で支払い対象となった事例は以下のとおりです。
・賠償額9521万円の事例
小学生が夜間、自転車で坂道を下っていたところ、歩行者に正面衝突してしまった。歩行中の女性は頭の骨を折り、意識が戻らない状態になった。
(神戸地方裁判所・平成25年7月判決)
・賠償額9266万円の事例
自転車横断帯のかなり手前の歩道から、高校生が車道をななめに横断。自転車で対向車線を直進してきた男性会社員と衝突しる事故が起こった。男性会社員には言語機能の喪失等、重大な障害が残った。
(東京地方裁判所・平成20年6月判決)
自転車以外にも以下のような事例もあります。
●買い物中に陳列商品を落とし破損させた
●子どもが駐車場に停めてあった他人の車に傷をつけた
●投げたボールがそれて車のガラスを割ってしまった
このように、子どもの行動が原因となって賠償金が発生する事例は多くなっています。
まとめ
親族であっても、個人賠償責任保険で補償できるケースはあります。ただし、さまざまな条件があるため、事前に確認しておくことが大切です。
子どもの行動が原因で、賠償金が発生する事例も珍しいことではありません。高額な賠償金が発生する可能性もあるため、子どもがいる家庭では個人賠償責任保険への加入、すでに加入済みの場合は補償範囲を確認しておくと安心なのではないでしょうか。
出典
一般社団法人日本損害保険協会 個人賠償責任保険
一般社団法人日本損害保険協会 問92個人賠償責任保険は、どのような保険ですか?
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執筆者:鳥居佳織
FP2級