「ボーナス支給日」より前に退職すると、ボーナスをもらえない!? 払ってもらうことはできないの?
配信日: 2023.08.25
しかし、勤め先からは、Aさんにはボーナスが支給されないと告げられました。Aさんにボーナスが支給されないのは一体どのような理由からだったのでしょうか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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なぜボーナスが支給されなかったのか
転職するために△△銀行を5月31日付けで退職したAさん。退職するまでは業績を残し、収益にもそれなりに貢献したと自負していたことから、前回のボーナス支給日から退職日までの間の業績評価、労務評価分のボーナスが、額が減ることは覚悟をしていたものの、ボーナス支給日に在籍してはいなくても当然のこととして受給できると思っていました。
しかし、△△銀行からは、6月のボーナス支給日に在籍していないので、ボーナスは支給できないと告げられました。Aさんは、なんとかボーナスを受給できないかと担当者に掛け合いますが、△△銀行では、昔からの慣習でボーナス支給日に在籍している行員のみを対象に支給しているとのことでした。その慣習について、労使の話し合いで、当年の4月に就業規則を改訂し当該文言を書き加えたと言います。
Aさんは、確かにそのように就業規則が改訂されたことは知っていましたが、就業規則が改訂される前から自分は在籍していたため、既得権として当該就業規則は自分には該当しないと、担当者に訴えました。しかし担当者は、これまでも慣習として、ボーナス支給日に在籍していた行員に対してのみボーナスを支給していたことを主張するばかりでした。
何を言っても取り合ってもらえないAさんは、△△銀行を相手に提訴することを決めました。
裁判の行方
地方裁判所に△△銀行を被告として提訴したAさん。しかし、その結果はAさんの敗訴。それでもAさんはくじけず、高等裁判所に控訴しました。その結果もAさんの敗訴。そして、最終的にAさんは最高裁判所に上告したのでした。
最高裁の判決
「主文。本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。」
結局、Aさんは最高裁判所の上告審でも負けてしまいました。判決の理由は、次のとおりでした。
・就業規則の改訂前から、年2回の決算期の中間時点を(ボーナスの)支給日と定めて、その支給日に在籍している者に対してのみ、決算期間を対象とする賞与が支給される慣行が存在していた。
・就業規則の改訂は単に△△銀行の労働組合の要請によって慣行を明文化したものであって、その内容においても合理性を有する。
これらの理由から、Aさんは△△銀行を退職した後のボーナスについては、支給日に在籍していなかったので、受給権を有しないというものでした。
支給要件の確認を
全ての会社が△△銀行のように、就業規則にボーナス支給日在籍要件を定めているわけではありません。
中途退職でボーナス支給日に在籍していなくても、前回のボーナス支給日から退職日までの期間の勤務成績を加味し、ボーナスが支給される会社もありますし、公務員はボーナス支給日に係る基準日から1ヶ月以内に退職して在籍していなくても、退職日までのボーナスは支給されます(もちろん規程に則ってのことです)。
大切なことは、自社の就業規則をしっかり読むということです。就業規則は、労働基準法により、必ず、何らかの方法で社員が見ることができるようになっています。
現在、政府は人口減少を見据え、労働移動の円滑化に取り組んでいます。転職を考えている人もいるかと思いますが、「ボーナスを受給してから転職しよう」と考えている人は、今一度、自社の就業規則におけるボーナス支給要件を確認しておいたほうがよいでしょう。
出典
e-Gov法令検索 労働基準法
独立行政法人労働政策研究・研修機構 (31)【賞与】支給日在籍要件
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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