お金を貸した友人から「10年たったから返さない」とメールが届きました。これって本当に返してもらえないのでしょうか?
配信日: 2023.09.22
しかし、催促もせず放置してしまうと時効が成立し、相手に返済義務がなくなってしまう可能性があるのです。
FP2級
借金の時効が成立する条件
Aさんのもとに、長い間会っていなかった友人Bさんからこんな内容のメールが届きました。
「30万円借りてたけど10年たったから、もう返さないね」
Aさんは最初、Bさんの言っていることの意味が分かりませんでした。確かにAさんは、当時お金に困っていたBさんに30万円を貸した覚えがあります。しかしBさんに気兼ねして、長い間、返してほしいとは言いだせず、お金ができたら返してくれるだろうと軽く考えていました。
Aさんは、Bさんのメール中にあったURLをクリックしてびっくりします。リンク先のウェブサイトでは、「借金の時効」について解説されていました。それを読んで初めてAさんは、Bさんに貸した30万円の借金が時効をむかえ、もう取り戻せないことを知りました。
Bさんの言う通り、借金には時効があります。
個人間の借金については、2020年3月31日までに貸し借りした場合、借金の時効は貸主が借主へ借金の請求権があることを知ってから10年(借金の返済期限を定めなかった場合。返済期限を決めた場合は、返済期限から10年)です。例えばAさんが2013年9月1日に30万円を貸したのであれば、時効が成立するのは2023年8月31日になります。
この10年の間にAさんがBさんに対して借金返済の督促を一切せず、Bさんが「時効の援用」という手続きをすると時効が成立します。時効の援用とは、簡単に言うと借主が貸主に対し「時効期間が経過したので借金を返済しない」と主張することです。
今回の場合は、Bさんからのメールが時効の援用にあたります。時効の援用は、法律上口頭でも可能です。しかし口頭では「言った・言わない」の水掛け論になるので、配達証明付き内容証明郵便など記録に残る方法でおこなうことが推奨されます。Bさんからのメールは、証拠として残りますので内容証明郵便ほどではないですが、口頭に比べ有効性は高いと言えるでしょう。
なお、2020年4月に行われた民法の改正により、時効が成立する期間が変更されました。個人間の借金に関し、2020年4月1日以降に貸したものについては、時効が、貸主が借主へ借金の請求権があることを知ってから5年(権利を行使することができるときからは10年)で成立するようになりました。時効成立までの期間が短くなったのです。
借金の時効を成立させないためには?
借金の時効を成立させたくない場合は、相手に借金を返済させるための行動を起こすことが必要です。具体的には、以下のような方法があります。
・催促
借主に借金を返してほしいと催促すれば、6ヶ月間は借金の時効が延長されます。口頭でも可能ですが、配達証明付き内容証明郵便のように証拠として記録が残る方法が推奨されます。
・借主に借金の存在を承認させる
借主に借金の存在を認めさせれば、時効期間は更新され、その日からカウントしなおしになります。口頭でも可能ですが、借用書を作り直し署名捺印するのが安全です。
・一部返済させる
借金の一部でも返済させれば、借主が借金の存在を承認したことになるため、時効期間が更新されます。手渡しでも可能ですが、口座振込のように証拠に残る方法で返済してもらったほうがよいでしょう。
また相手がどうしても借金を返済しない場合、訴訟を起こせば訴訟中は時効が成立しません。
まとめ
誰かにお金を貸した場合、相手のことを気遣って返済を迫るのを遠慮してしまう人も多いでしょう。しかし借金の時効を成立させないためにも、一部だけでも返済してもらうなどの対応が必要です。
出典
法務省 民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-
法務省 民法(債権関係)改正 Q&A
e-Gov法令検索 民法
執筆者:小泉健太郎
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