更新日: 2023.09.24 その他暮らし

自然災害から事業を守る方法は? 「BCP」について見てみよう

自然災害から事業を守る方法は? 「BCP」について見てみよう
今年に限らず、夏になると台風をはじめ大雨、さらには時期を問わず地震等の自然災害は毎年のように起こり、そのたびに多くの方々が被災し大変な思いをしています。このような状況であっても、事業を行っている場合は続けていくしか方法がありません。

自然災害が起こっても、いかにご自身の事業への影響を最小限に抑えることができるか……、本記事でそのためのBCP(事業継続計画)について見ていきましょう。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

BCP(事業継続計画)とは

BCP(事業継続計画)とは、(Business Continuity Plan)の略です。
 
自然災害や大火災、テロ攻撃などの緊急事態は、現存するすべての企業に遭遇する可能性があります。中小企業は大企業と比較して経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)なことが多いため、このような緊急事態に突然遭遇すると、経営を維持するための有効な手段を持ち合わせていなければ、廃業せざるを得なくなるかもしれません。
 
場合によっては、廃業を免れるため、もしくはなんとか経営を維持するため、事業の縮小であったり、従業員の解雇を余儀なくされたりする可能性もあります。
 
企業が緊急事態に遭遇したときにもっとも重要なことは、事業の資産損害を最小限に抑えて中核となっている事業を継続させること、あるいは早期復旧を図ることです。
 
事業継続・早期復旧を可能とするために、平常時から行うべき活動と緊急事態時に事業を継続するための方法・手段などを決めておく計画、それが「BCP」です。特に中小企業は前述のような理由から、平常時からBCPをしっかり準備しておくことが大切だといえます。
 
実はBCPの役割は、緊急事態への対策だけではありません。BCPを周到に準備している企業は、顧客の信用を維持できます。また、これにより市場関係者からの評価も上がり、株主にとって企業価値の維持と向上にもつながる効果が見込めるのです。
 
これは事業者全般を指しているものですので、当然事業を行っている個人事業主やフリーランスにもいえることです。最近の例ですと、新型コロナウイルスの影響で多くの事業者が緊急事態に陥ってしまいました。よって、今日ではBCPの重要性は以前にも増して高まっているといえます。
 

BCPの特徴、役割、メリットは

BCPの特徴として次の5つが挙げられます。

(1) 優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
(2) 緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
(3) 緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客とあらかじめ協議しておく
(4) 事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
(5) すべての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図っておく

(出典:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」)
 
企業が緊急事態に遭遇すると、操業度(生産可能な生産量と実際の生産量との比率)が下落してしまいます。しかし、予測不能の緊急事態に備え、BCPを周到に用意していたとすれば、状況は変わるかもしれません。
 
前述のとおり、BCPは緊急事態時の事業継続・早期復旧を図るために事前に取り決めておく計画です。BCPがあることにより、主に中核事業を維持すること・早期復旧することで、何も備えておかなかった企業よりも早く、災害前の活動ができるようになるかもしれません。
 
また、緊急事態時においても中核事業を維持した・早期に復旧させたとして、市場の信頼を得て、その後さらに事業を拡大できる可能性もあります。BCPを準備することにより、ピンチをチャンスに変えることができるかもしれません。
 

どのように策定するの?

BCPの策定は、次の(1)~(5)までの手順を踏みます。

(1) 基本方針の立案
(2) 重要商品の検討
(3) 被害状況の確認
(4) 事前対策の実施
(5) 緊急時の体制の整備

上記はあくまでも策定の手順ですが、これを基に運用します。その際はBCPの定着→見直しという手順になります(策定の具体的方法・内容は省略します)。
 

事業者だけでなく従業員や取引先の協力も必要

BCPの策定・運用は大切な経営課題ですので、経営者自らが策定・運用するようにしましょう。ただし、一定規模以上の事業者の場合は経営者だけで運用を行うと、どうやっても無理が出てしまう項目があります。その場合は、従業員等にも運用を行ってもらうこともあるかもしれませんので、事業者一丸となって行う必要があるでしょう。
 
また、緊急事態が発生した場合でも事業を継続させるためには、取引先等との連携も重要となってきます。さらに自治体によっては、策定されたBCPを実践するために必要な設備等や物品の購入等に係る費用を助成する地域もあります。
 
何かが起こる前に対策を練る、これが事業継続の1番のポイントではないでしょうか。
 

出典

中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針 〜緊急事態を生き抜くために〜
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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