ディーラーで中古車を買ったら実は「事故車」だった!?「物は言いよう」で損をしないために、中古車売買の際に注意すべきことを解説
配信日: 2023.10.09
本記事では、「修復歴車」と「事故歴車」の違いや、中古車の売買の際に気を付けなければならないことについて解説します。
執筆者:平良ひとみ(たいら ひとみ)
FP2級(AFP)、損害保険プランナー
前提
馴染みのディーラーへ中古車購入の相談に行ったAさんを例に挙げます。
Aさんは、とある車を「修復歴はあるけれど、気にしなくてもいい程度の修理」だと説明され、走行距離も3万kmと少なかったこともあり購入することにしました。車体価格はカーナビなどオプション込みで63万円。諸費用も合わせ合計80万円を支払いました。
1年後、車を手放すことになり、中古車買取センターで査定をしたら、他の査定業者を断ることを条件に40万円で買い取ってくれると言われ、そのまま手続きを進めました。
しかしその後、電話があり「詳しく調べると事故車として登録があったので、査定価格は17万円に下がる」と言われてしまいました。Aさんは納得がいかないながらも、「他を断って売ると約束したから……」と言われるがまま手続きを完了したのです。
当初は40万円とされていた買取額が17万円に下がり、予定より23万円のマイナスが出た形です。
しかし、Aさんは17万円で契約をする前にとるべき行動がありました。その行動をとっていれば、もしかしたら17万円で売ることはなかったかもしれません。Aさんのように、中古車売買で損をしないためには、何に注意をしたらよいかを見ていきます。
「修復歴車」と「事故車」は何が違うのか
ディーラーは「修復歴」と言い、中古車買取業者は「事故車」と言っていました。両者の違いは何なのか、素人では判断が難しいところです。
衝突などの損傷があった車を広く「修復歴車」といいます。その中でも、車両の枠組み部分に損傷があり修復した車は、「事故車」と言われます。ドアを交換したなどの修復であれば「事故車」には該当しない場合もあります。
「修復歴車」の中に「事故車」が含まれているため、人によって言い方が異なることを知っておかないと「物は言いよう」で認識の違いが生まれてしまうことを覚えておきましょう。
また、修復歴車(事故車含む)を販売する際には、必ずその事実を説明しなければいけません。Aさんは、ディーラーから「修復歴はあるけど気にしなくてもいい程度」と聞いていたので、その車が事故車に該当するとは思いませんでした。
修復歴車(事故車含む)について、その事実を隠して引き渡しを行うと「契約不適合責任」に問われるのですが、Aさんは「修復歴はある」と聞いていたため、ディーラーに過失は問えません。
中古車購入の注意点
Aさんのような失敗をしないためにも「物は言いよう」で説明されることを鵜吞みにせず、曖昧だと感じた説明には、しっかりと確認することが大切です。
修復歴ありの詳細を確認する
Aさんは、事故車と言われていたら購入していませんでした。
「修復歴はあるけれど気にしなくてもいい程度」と言われた場合、単なる修復歴車ではなく、事故車として履歴が残っている場合があります。ディーラーや査定業者、担当者によっても表現の仕方が違うことがありますので、その後トラブルにならないように修復歴の程度は詳しく確認しましょう。
車の枠組みに修復歴があるか確認する
車の枠組みは、車の土台となるパーツなので、その部分に損傷歴がある場合は、事故車として履歴が残ります。
「フレーム(枠組み)に少しの歪みがありますが、気にしなくていい程度」と言われた場合でも、査定では事故車扱いとなるため、「物は言いよう」に惑わされないように気を付けましょう。
一社だけではなく、他の自動車販売店で比較をする
馴染みのディーラーだと、ついお任せにしてしまったり、ちょっと気になったことがあっても確認しなかったりしてしまう人もいるのではないでしょうか。
中古車の情報はどこの業者でも同じサイトで検索していることが多いです。聞きづらいことがある場合などは、他のディーラーや中古車センターにも足を運び、説明や価格が同等かなど比較するようにしましょう。他に条件に合う中古車が見つかるかもしれません。
中古車買取査定の注意点
中古車を査定に出す場合にも、「契約不適合責任」に注意しなければなりません。修復歴・事故歴を申告せずに引き渡した場合、売った側が過失を問われることになります。Aさんは、査定の時にディーラーから言われていた通り「修復歴はあるけれど、気にしなくてもいい程度と聞いています」と申告していました。
よって、Aさんが契約不適合責任で問われることはありません。
今回、Aさんがとるべきだった行動は2つあります。
一つは、17万円の契約書にサインする前に、相談機関に問い合わせるべきでした。後述する機関で経緯を話し、17万円の売却が妥当なのかどうか、相談することができたはずです。
中古車買取業者の中には、実は修復歴(事故歴含む)があることを知ったうえで、はじめは他者を断る条件を付けて高い査定額を提示する、その後、事故車だとわかったと言って査定額を下げてくる、悪意ある業者も一部存在するといいます。
相談機関に問い合わせていれば、査定業者が本当に知らなかったのか、相談機関から査定業者に指摘してもらうことも可能でした。
次に、Aさんには他社と比較検討する権利があるため、他の査定業者が提示する買取額を確認し、その中から納得できる買取業者との手続きをとるべきでした。
17万円の契約書類にサインをした段階で、Aさんはすべてを承諾したことになるため、その後の交渉は難しくなります。「今日中に決めてくれたらこの値段で買い取ります」などと期限を決められたとしても、焦らずに検討する時間を確保することが大切です。
他の査定業者と比較することの大切さや専門機関に相談できることを知っていれば、結果が変わっていたかもしれません。たとえ査定金額が変わらなかったとしても、納得した取引となっていたはずです。
中古車売買の相談窓口を利用する
消費者相談センターのように、車の取引を専門とした機関があるのはご存じでしょうか。
Aさんは、この出来事を自分が無知だったことが原因だと言い聞かせていましたが、もやもやした気持ちが晴れず、1年経って消費者相談センターに相談してみました。すると、以下のように車の取引を専門とした相談機関があることを教えてもらいました。
・自動車公正取引協議会
・一般社団法人 日本自動車購入協会
この2つの相談機関に経緯を説明したところ、「事故車」と「修復歴車」の違いや取引の際に気を付けるべきことを教えてもらえました。
ただ、Aさんの場合は、相談する前に契約を締結してしまっていたことや、売却後1年が経過していたため、遅すぎて相談機関でも助けられないとのことでした。「知らなかった」で損をするのは自分自身です。どちらの相談機関も、自動車の取引の相談を行う際は、必ず契約締結前にするようにしましょう。
まとめ
Aさんはすでに手遅れでしたが、中古車売買についてのトラブルにあわないためにも、事前に注意すべきことをあらかじめ把握しておきましょう。そして、自分では判断が難しいと思ったときは、迷わず専門機関に相談することをおすすめします。
出典
一般社団法人 自動車公正取引協議会
一般社団法人 日本自動車購入協会
執筆者:平良ひとみ
FP2級(AFP)、損害保険プランナー