更新日: 2023.10.17 その他暮らし

ある日自宅に「開示請求」が!? SNSの書き込みで100万円の賠償金「なぜ自分だけ…」事例や注意点を解説

執筆者 : 鳥居佳織

ある日自宅に「開示請求」が!? SNSの書き込みで100万円の賠償金「なぜ自分だけ…」事例や注意点を解説
SNSは多くの人々の間で人気のコミュニケーションツールとして利用されています。しかし、その気軽さゆえに、間違った投稿をしてしまうと突如として高額な賠償金を請求されてしまうリスクも伴います。
 
本記事ではSNSなど、インターネット上での誹謗中傷に関する裁判の事例やSNSを利用する上での注意点、対処法などを詳しく解説します。

SNSによる誹謗中傷とは

誹謗中傷とは、社会的評価や名誉を損なうような言葉や文章を使って攻撃する行為を指します。インターネット上での誹謗中傷は、内容に応じて名誉毀損罪や侮辱罪として刑事的な責任が問われる可能性が考えられます。
 

ネットへの書き込みによる損害賠償の2つの事例

SNSやインターネット掲示板などでの誹謗中傷では、過去にどのような事例があったのか、見ていきましょう。
 

侮辱的な表現を用いた投稿の事例

20代の女性プロマージャンプレイヤーに「整形雀士(じゃんし)」とのレッテルを貼り、インターネット掲示板に外見や異性関係に関して不適切な書き込みをした匿名のユーザーが訴えられました。侮辱的な表現を用いた投稿は、女性の社会的評価を損なう行為であるとして、損害賠償を求める訴えを起こした裁判です。
 

損害賠償額:100万円

 

なりすましの投稿の事例

原告は、被告がインターネットの掲示板で原告の名前をかたり、第三者を侮辱するような投稿をしたと主張しています。これにより、原告は自らの名誉権、プライバシー権、肖像権、アイデンティティ権が侵害されたとして損害賠償を求める訴えを起こした裁判です。
 

慰謝料:60万円
弁護士費用(特定手続き:発信者情報の取得手続き):58万6000円
弁護士費用(本訴訟):12万円

 

SNSの損害賠償請求までの流れ

SNSやインターネット掲示板で誹謗中傷する人は、匿名であることがほとんどです。そのため、アカウント情報のみでは、直接損害賠償請求をすることが困難です。
 
ただしプロバイダ責任制限法の第4条には、誰かが匿名で情報を発信して他人の権利を侵害した場合、その被害を受けた人が加害者を特定し、損害賠償などの請求をすることができる権利や手続きが定められています。
 
SNSなどでの誹謗中傷に対して、被害者にどのような流れで損害賠償請求をされるのか解説します。
 

1.発信者情報の開示請求の手続き

被害者は問題の投稿があったSNSやインターネット掲示板の運営者に対し、投稿者の情報を開示するよう請求します。これにより、IPアドレスや投稿時刻などの情報が明らかになります。多くのケースで、投稿者の情報を得るためには裁判所での手続きが必要です。
 

2.プロバイダに発信者情報開示請求

裁判所で所定の手続きを行ったあとに、プロバイダに対して発信者情報の開示請求ができます。開示請求できる情報は主に以下のとおりです。
 

・発信者の氏名、住所、電話番号、電子メールアドレス
・侵害情報の書き込み時、同書き込みの対象サービスのログイン時等に係るIPアドレス、ポート番号、年月日及び時刻

 

3.損害賠償請求

プロバイダから得た情報によって身元が判明したあとに、加害者に損害賠償請求ができます。加害者が支払わない場合、訴訟による請求を検討する必要もあります。
 

SNSの誹謗中傷に関する3つの注意点

SNSに投稿する際に誹謗中傷と判断される投稿とならないように、注意しておきたい3つのポイントを解説します。
 

感情的な投稿のリスク

怒りやいら立ちなどの一時的な感情で投稿すると、後悔の原因となることが多いです。一度立ち止まり、冷静に考えてから投稿するように心掛けましょう。
 

「芸能人は目立つから仕方がない」という考えは誤り

インターネット上で他人を攻撃する投稿は、どんな背景や立場があろうと正義ではありません。中には、「芸能人は目立つから仕方ない。有名税だ」と考える人もいるかもしれませんが、その考えは誤りです。人の名誉や感情を傷つけるような投稿は避けましょう。
 

再投稿も誹謗中傷とみなされる

誹謗中傷は自身の書いた投稿のみではありません。SNSのサービスによって名称は異なりますが、他人の書き込みを再投稿(自分のフォロワーへ向けて投稿をシェア)できる機能があります。再投稿者でも誹謗中傷に加担したことになるため、元の書き込み内容が適切かよく考えてから再投稿を行いましょう。
 

SNSに悪質な書き込みがあったときの2つの対処法

SNSを利用する際には、前述のとおり投稿や再投稿の際に、誰かを傷つける内容でないかよく考える必要があります。また、中には自身に対する悪質な書き込みを発見することもあるでしょう。ここでは、そういった際の対処法を2つ解説します。
 

ミュート機能やブロック機能を活用する

多くのSNSは、投稿のコントロール機能を備えています。SNSに関するトラブルや悪質な投稿に対応する際、投稿を非表示にする「ミュート」機能や、一定のユーザーとのつながりを断つ「ブロック」機能を活用しましょう。サービスごとに名称や操作方法が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
 

投稿の削除を依頼する

不適切な投稿の削除を希望する場合、直接投稿者に連絡して削除をお願いする方法もあります。ただし、無理に要求するのは避けたほうがよいでしょう。
 
具体的な手続きは、問題の投稿のURLやスクリーンショットを取得し、SNSの「通報」機能や「報告」機能を通じて削除を依頼するのが一般的です。このような手段でも削除されない場合は、発信者を特定し損害賠償請求を検討することも考えられます。
 

まとめ

SNSは気軽に楽しめるコミュニケーションツールですが、誹謗中傷の投稿は高額な損害賠償請求の対象となる可能性があります。画面の向こう側には実際の人がいることを忘れず、投稿する前に十分に考慮し、注意して利用しましょう。
 

出典

法務省 侮辱罪の法定刑の引上げについて
大阪地方裁判所 平成29(ワ)1649損害賠償請求事件
東京地方裁判所 平成24(ワ)24571 損害賠償等請求事件
総務省 発信者情報開示の在り方に関する研究会最終とりまとめ(案)
裁判所 11.発信者情報開示命令申立て
総務省 インターネットトラブル事例集2022年版
 
執筆者:鳥居佳織
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