更新日: 2019.01.11 その他暮らし
【コンパクトシティ構造】ってなに? 私達の暮らしへの影響とは
コンパクトシティとは、ざっくりいえば、「中心市街地に公共の施設やオフィスなどの都市機能を集約させ、交通の利便性を向上させた機能集中型の街づくり」のことです。
この考え方自体は、特に目新しいものではありませんでした。ところが、近年の人口減少、少子高齢化によって、再び注目を浴び、各自治体や国土交通省などが主体となり地方都市の再生に向けた取り組みとして進められています。
今回は、私たちの暮らしとコンパクトシティ構想のかかわりについて、詳しくお伝えしたいと思います。
コンパクトシティ構想とは
かつて、市街地が空洞化したり、駅前の商店街がシャッター通りと化してしまうといった状況の中、国が規制緩和や市町村への権限委譲などの方法で活性化を試みたのですが、地価の安い郊外の開発を止めることができず、中心市街地は思うように活性化されませんでした。
そこで、法律の見直しがされ、中心市街地に公共施設やオフィスなどの都市機能を集約させ、コンパクトにまとめて効率的な都市経営と住民の利便性向上を目指したのが、2006年に掲げられた「コンパクトシティ構想」です。
これは郊外化を防ぐために公共交通機関を整備したり、郊外から市街地に商業施設を誘致することなどが主な取り組みですが、自治体によって課題は異なるので、それぞれ個別のアプローチを行う必要があります。
コンパクトシティは、自治体にとっては税収アップを見込めるというメリットもあります。例えば都市計画域内の人口が増えれば都市計画税の増収や、地価の高い中心部にマンションが増えることで、固定資産税の増収にもつながります。
そのため、多くの地方都市や国土交通省が中心となり、コンパクトシティに取り組んできました。しかし、ある程度の成果が認められるものの、住民の賛同を得られないといったさまざまな困難も多く、まだまだ課題は多いといえそうです。
生活への影響と、気をつけるべきことは?
では、このコンパクトシティ構想によって、暮らしにはどんな影響があるのでしょうか。
・資産価値への影響
例えば、不動産に関しては大きく価格に差が出てしまうかもしれません。
住む人が多い街の中心部は、不動産の利用価値が高いので地価が上がりやすく、郊外など中心部から外れたところでは資産価値が下がる傾向があります。コンパクトシティ化によって、不動産価格の格差はさらに大きくなるでしょう。
積極的にコンパクトシティ化を進める自治体などは、下記のような国土交通省の情報や、各自治体のウェブサイトなどでも知ることができますので、土地や住宅の購入を検討している方や、相続などで不動産を入手する予定がある方は、ぜひ確認しておくと良いと思います。
参考:国土交通省「地方再生のモデル都市として32都市を選定~空き店舗対策、城下町の再生等、全国の地方都市の再生を強力に推進します~」
・居住環境の変化
また、コンパクトシティが実現すると、交通や買い物などの利便性が高まり、日々の暮らしが便利になる一方で、住居の集約化により、例えば、騒音やプライバシーの侵害などのトラブルが増えたり、高層化による日照の問題や治安の悪化などが考えられるかもしれません。
「静かに暮らしたい」と思って郊外の暮らしを選んだ人にとっては、住みにくくなる面も出てくるといえます。
・医療や福祉の変化
現在、大都市圏では医療設備等の不足、その他の地方では医師などの医療従事者の不足が深刻化しています。
コンパクトシティを実現するには、人が多く集まる市街中心部の医療や福祉の利便性を充実させなくてはなりませんが、中心部は地価が高く、これまで以上にコストがかかる可能性があります。また、それ以外の地域についてはさらに医師不足などを招いてしまうことにもなるでしょう。
こうした行政主導のコンパクトシティの政策は、実際にはさまざまな要因で思うように進まないところもあるようです。
ただ、東京や地方中核都市への若者の流出はとどまるところを知らず、一方で、多くの自治体では過疎化が進んでいるのが今日の状況です。そのため、多くの地域でコンパクトシティ化が進むことは避けられないといわれています。
私たちの暮らしに密接にかかわる、このコンパクトシティ化の動きには今後も注目していきたいところです。
出典:国土交通省「地方再生のモデル都市として32都市を選定~空き店舗対策、城下町の再生等、全国の地方都市の再生を強力に推進します~」
Text:藤丸 史果(ふじまる あやか)
ファイナンシャルプランナー