日常生活のトラブル。訴訟を起こす前にトラブル解決の一方策「調停」を活用しよう!

配信日: 2023.10.28

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日常生活のトラブル。訴訟を起こす前にトラブル解決の一方策「調停」を活用しよう!
日常生活では、相続問題での意見の相違や隣地との境界線を巡る争いなど、各種トラブルが起こります。問題がこじれれば裁判に持ち込む方法を選択することになりますが、その前段階で活用したいのが、「調停」という仕組みです。
 
特に相続や離婚など家族間のトラブルを解決するために、この調停という仕組みはかなり活用できそうです。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

個人間のトラブルに「調停」を活用

会社単位の脱税の追及や傷害事件の立証などでは、この「調停」の仕組みは利用できません。
 
しかし、家族間のトラブルや個人同士のトラブルを解決するために、裁判という手段ではなく「調停」という仕組みは活用できます。
 
特に、家族間のトラブルの際は双方が感情的となり、一度意見の相違が起こると妥協点がみつからないまま、それぞれが自己主張の正当性を譲らずに、問題をこじらせてしまうことが多くみられるからです。
 
そのような場合に、第三者である公的機関が双方の主張に十分耳を傾け、お互いが妥協できそうな案を提示し、解決に向かうことを手助けするのが「調停」という制度です。この役割を担っている公的機関が裁判所です。
 
裁判所で調停を担当する調停委員は、トラブルとなっている依頼者双方の主張を慎重に聞くだけでなく、調停委員のもつ専門知識も活用します。これまでの解決案なども参考にしつつ、依頼者それぞれが対立していた主張を再考させ、妥協点をみつけるように努めます。
 
提示された調書に対して、どちらかが納得できないときは、家族間の争いの場合は「審判」という拘束力をもった方法でトラブルを解決します。
 

民事の調停と家事の調停

調停には大きく分けて2つあります。一つは、主に簡易裁判所と地方裁判所が担当している「民事」の調停です。もう一つは、家庭裁判所が担当している「家事」の調停です。どちらも身近な日常生活のなかで起こるトラブルですが、その性質により調停の手続きを進める裁判所が異なります。
 
「民事」の調停は、交通事故後の賠償額を巡る被害者と加害者とのトラブル、給与の遅配や労働条件の変更を巡る経営者と従業員とのトラブル、土地の境界線を巡る隣人同士のトラブル、家賃の変更を巡る借家人と大家とのトラブル、医療事故を巡る患者と医師とのトラブルなど、日常生活での主に個人同士のトラブルが対象です。
 
民事上の争いに精通した裁判所の調停委員が対応して調停を進めます。
 
「家事」の調停、これは家庭裁判所の担当になります。相続問題を巡る相続人同士のトラブル、離婚後の養育費を巡るトラブル、子どもを認知するかを巡る親子間のトラブルなど、家族間のトラブルが家庭裁判所の調停の対象です。ある意味、この「家事」調停が利用されることが増えています。
 
訴訟を起こそうと考えている方でも、調停が先決とする方も多いと思われます。家事調停には、家庭裁判所の家族関係に詳しい専門の調停委員が加わります。まず、意見の対立する家族から裁判所に申し立てが行われると、調停委員や裁判官が双方の意見を十分に聴取し、それをもとに中立的な立場で、解決するための調停案を提示します。
 
民事であれ家事であれ、担当する調停委員の身分は、裁判所の非常勤の職員で、年齢は原則40~70歳の弁護士、会計士、医師、建築士、社会福祉士など、各方面で豊富な知識をもった専門家です。裁判所の職員とともに調停を進め、依頼者に提示しています。
 

調停は訴訟と比較しメリットが

調停には、訴訟と比べメリットがあります。まず時間と費用が少なくて済むことです。訴訟になると、期間は少なくとも1年、場合によっては数年かかります。弁護士を立てることも不可欠で、それを含めた費用もかなり高額です。特に勝算の少ない訴訟は、どうしてもためらってしまいます。
 
これに対して調停は、調書がまとまるまでの期間も数ヶ月で済み、実際にかかる費用も、多くの場合数千円単位の金額で済みます。費用に関しての心配は、ほとんど必要ありません。
 
調停の手続きに関しても、申立書や戸籍謄本など必要な書類と、調停を依頼するための手数料をそろえるだけで済みます。訴訟を進める際には弁護士など必要な人材を選任する、といった手間と費用も不要です。
 
さらに訴訟と比べて、審理の内容が原則非公開のため、調停委員にも守秘義務が求められ、プライバシーが守られます。特に離婚や婚外子の認知といった社会の目にはさらされたくない事象も多いため、原則公開の裁判とは異なり、非常にメリットがあります。
 
当事者同士が会すると何かと気まずいことも考えられるため、調停委員が別々に意見を聞くこともできます。プライバシーの保持が可能なため、家族間のトラブルに関する調停に期待する方は多いかと思われます。
 

当事者間で調停が成立しないことも

当事者双方が「調停」に合意すると、その合意内容が調書に記載されます。合意内容を誠実に履行することが求められます。合意した調停の内容は、裁判での「判決」と同様の法的な効力があり、当事者には、調停内容を守ることが求められます。民間の機関など第三者による仲裁による合意とは、大きな違いがあります。
 
当事者同士の合意が難しく、調停が成立しそうもない場合は、調停が打ち切られます。調停が打ち切られると、裁判所による強制力をもった「審判」の形に進みます。特に遺産分割を巡る争いなどでは、調停が成立せずに、強制力をもった「審判」に移行するケースも多いので留意しましょう。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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