子どもの教育資金は、児童手当を貯めた「200万円」のみです。私立大学への進学を希望しているのですが、奨学金はいくら必要になるでしょうか…?
配信日: 2023.11.19
そこで本記事では、なんとか頑張って児童手当だけは貯金したという家庭をベースに、私立大学へ下宿で進学した場合の奨学金利用額について解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
児童手当を全額貯めるといくらになるのか
児童手当は中学校卒業までの子どもを育てる家庭に対して、3歳未満は月1万5000円、3歳以上小学校修了までは月1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は月1万円が支給されています。受給総額は誕生月によって若干異なりますが、4月生まれだと最大となる総額209万円を受け取れます。
なお、2024年12月支給分より支給期間が高校卒業(18歳の誕生日後の最初の3月31日)までに延長されます。まだ中学校を卒業していない子どもがいる人は、さらに36万円(1万円×36ヶ月/第1子・第2子の場合)貯金できる可能性があるということですね。
私立大学にかかる学費
文部科学省の調査によると、令和3年度入学者の私立大学の初年度納付金合計は約137万円です。初年度と同額の授業料と施設設備料が在学中にかかると想定すると、その後の費用は年間約111万円、3年間で約333万円となり、4年間の学費合計は約470万円となります。
国立大学、公立大学の納付金は4年間で約250万円なので、私立大学は国公立大学の倍近くの費用がかかるようです。
下宿にかかる費用
大学に通うため下宿する場合には、さらに費用がかかります。全国大学生活協同組合連合会の調査によると、2022年における下宿生の1ヶ月の生活費は約12万円となっており、そのうち約7万円を仕送り、3万円をアルバイト、2万円を奨学金でまかなっているという結果になっています。
4年間でかかる下宿費用は576万円です。うち144万円はアルバイトで稼ぐとしても、仕送り7万円は奨学金でまかなうとなれば月9万円、4年間で約432万円の奨学金を利用する必要があります。
これは学費約470万円とは別に必要となる金額であり、奨学金の合計額は約901万円に跳ね上がります。
児童手当のみの貯金だと奨学金700万円
貯金が児童手当のみの200万円だと奨学金を700万円利用することになるでしょう。仮に独立行政法人日本学生支援機構で奨学金を利用するとした場合の返済額を、「奨学金貸与・返還シミュレーション」を使って計算してみます。
2023年度10月の貸与利率0.400%(利率見直し方式)で計算すると、月々約3万円の返済となりました。これが20年続くのです。22歳から返済し始めたとすると42歳まで続きます。
なお本記事では計算の便宜上、日本学生支援機構で全額借り入れる前提で計算していますが、本来は第二種奨学金の貸与月額は最大12万円、4年間で576万円となっています。足りない分124万円については、金融機関などの教育ローンを利用することになるでしょう。
下宿なしなら奨学金260万円程度
参考までに自宅から通う場合も計算してみましょう。自宅からの通学であれば下宿にかかる仕送り代約432万円が不要になるので、奨学金は260万円程度で済みそうです。
この場合の月々の返済額は約1万5000円なので700万円借りた場合の半額となります。就職したばかりの時期は給与も少ないので、子ども本人もかなり救われるのではないでしょうか。
まとめ
児童手当のみの貯金200万円で子どもが私立大学に下宿で進学した場合には、700万円程度の奨学金を利用することになりそうです。卒業してから20年間、月約3万円の返済が続くことを知っておきましょう。
下宿がなければかなり負担は軽減されるので、進学先を選択する際にこの点を考慮できるとよいですね。
出典
内閣府 児童手当制度のご案内
文部科学省 私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
文部科学省 (参考2)国公私立大学の授業料等の推移
全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) 第58回学生生活実態調査概要報告
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士