夫が「児童手当」をすべて使ってしまいます…受給者を私に変更したいのですが、無理なのでしょうか? 市役所では断られました…

配信日: 2023.11.30

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夫が「児童手当」をすべて使ってしまいます…受給者を私に変更したいのですが、無理なのでしょうか? 市役所では断られました…
中学校卒業までの子どもを養育する人には児童手当が支給されます。児童手当は原則として父または母の「所得の高い人」が受給者となり、任意に変更することはできません。本記事では児童手当の趣旨や、受給者の条件などを解説します。

児童手当の制度概要

児童手当は、0歳から中学校卒業までの子どもを対象として、その養育者に支給される手当です。
 

児童手当制度の目的

児童手当は、未来の社会を担う子どもたちの健やかな成長を目的としています。子育てにおいて重要な責任を持つ人に現金を支給することで、子育て世帯の経済的な負担を軽くし、子どもの生活を安定させることを目的としています。
 
児童手当の使い道は養育者に委ねられていますが、児童手当の制度の趣旨から考えると「子どものため」に使うのが望ましいといえるでしょう。
 

児童手当の月額

子ども1人あたりの児童手当の月額は、子どもの年齢や人数によって異なります。基本的には図表1のとおりですが、養育者の所得によっては手当が減額されたり支給対象外となったりします(2023年11月時点の内容です)。
 
図表1

図表1

こども家庭庁 児童手当制度のご案内より筆者作成
 

児童手当の受給者は原則として「所得が高い人」

子どもの養育者は両親の場合が多いので、今回はそのケースで記載します。
 
児童手当の受給者は、父または母のどちらかを任意で選択できるわけではありません。原則として、家庭の中で「生計を維持する程度が高い人」、つまり「所得の高い人」が受給者になります。例えば父が会社員で母が専業主婦の場合は、父が受給者になるということです。
 
父と母が共働きで所得が同じくらいの場合は、次の要素も考慮して総合的に判断します。


・父母の収入の状況(恒常的に収入が多い人)
・子どもに係る家族手当の状況(父母のどちらに支払われているか)
・住民税等の扶養控除の適用状況(父母のどちらの被扶養者になっているか)
・健康保険の適用状況(父母のどちらの扶養になっているか)
・住民票上の扱い(父母のどちらが世帯主になっているか)

いずれにしても、子どもの生計を維持することに、より深く関わるほうが受給者となります。家族間の合意があったとしても、受給者を任意に決めることはできません。
 

児童手当を子どものために使えない家庭も

内閣府の平成30~31年の「児童手当等の使途に関する意識調査」によると、児童手当の使い道のランキングは以下のとおりとなっています。(「使い道を決めていない」を除く)


1位:子どもの将来のための貯蓄・保険料(57.9%)
2位:子どもの教育費等(27.5%)
3位:子どもの生活費(22.0%)
4位:子どもに限定しない家庭の日常生活費(14.9%)
5位:子どものためとは限定しない貯蓄・保険料(8.6%)
6位:大人のおこづかいや遊興費(1.1%)

4位以下を見ると、子どものために使っていない家庭も一定の割合でいることがわかります。そのうち2.0%が「配偶者などが相談なく使ってしまうため」を理由として挙げています。
 

児童手当の受給者は任意に変更できない

ここまで見てきたように、児童手当について、「夫が勝手に使ってしまう」「妻が管理してくれた方が便利」という理由があっても、原則として変更を受け付けてくれません。
 
ただし、次のような場合は受給者を変更できます。
 

(1)配偶者のほうが所得が高くなった

児童手当は原則として「所得の高い人」に支給されますので、配偶者のほうが所得が高くなれば受給者を変更することができます。お住まいの自治体に書類の提出が必要です。
 

(2)父母が離婚協議中、あるいは離婚している

児童手当制度では「父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している人に優先的に支給」としています。
 
配偶者と住民票上別居していること、離婚したことがわかる公的な書類を提出することが必要です。
 

(3)配偶者から暴力を受けている

配偶者から暴力を受けていて住民票が移動できない場合、暴力の事実を確認できる資料と配偶者の扶養に入っていないことがわかる資料を提出することにより、児童手当を受給できます。
 

まとめ

児童手当をどう使うかは自由ですが、制度の趣旨を考えると「子どものため」に使われるのが望ましいでしょう。それぞれの家庭の状況に応じて使い道を決めるのが最適ですが、配偶者が相談なく使ってしまうケースもあります。
 
児童手当は受給者の条件が明確に決まっているので、残念ながら任意に受給者を変更することはできません。しかし「離婚が決まって別居している」「配偶者から暴力を受けている」などの状況であれば、受給者を変更できることもあります。お住まいの自治体の担当課に問い合わせましょう。
 

出典

こども家庭庁 児童手当
こども家庭庁 児童手当制度のご案内
こども家庭庁 児童手当Q&A(配偶者と別居されている場合の取扱いについて)
こども家庭庁 児童手当Q&A
 
執筆者:山田麻耶
FP2級

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