更新日: 2023.12.19 子育て
1年目は高校の授業料無償化の基準をクリアしていましたが2年目は所得要件をほんの少し超えそうです。どうしたらいいですか?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
高校無償化の基準を知っておく
まず、大切なことは、高校無償化の基準はどのようになっているのかを知ることです。
私たちが高校無償化と呼んでいるのは、「高等学校等就学支援金制度」のことであり、高校の授業料が給付されるほか、家計が急変してしまったときの支援なども行っています。
ただし、給付を受けるには基準をクリアしていなければなりません。
高校無償化のための給付金を受けるための基準、受給要件を満たす必要があります。
受給要件は、2つの要件があります。
1. 在学要件
日本国内に在住し、高等学校等に在学していること。
・国公私立の高等学校(全日制、定時制、通信制)
・中等教育学校後期課程
・特別支援学校の高等部
・高等専門学校(1~3学年)
・専修学校(高等課程)
・専修学校の一般課程や各種学校のうち国家資格者養成課程に指定されている学校
・各種学校のうち一定の要件を満たす外国人学校
2. 所得要件
以下の人。世帯で年収約910万円未満世帯の生徒が対象となる。
保護者等の課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除額 → 30万4200円未満
具体的な所得要件は図表1のとおりです。
図表1
(文部科学省「高校生等への修学支援 年収目安」より抜粋)
図表1を見れば、両親の就労形態と子どもの人数等によって基準となる年収に違いがあることが分かります。
自分の家庭はどの部分に当てはまるのかを確認してみましょう。
所得控除を活用してみよう
学年が上がると教育にかかる費用が増すため、ほんの少しだけ基準の年収を超えてしまうだけで、給付が受けられないのは家計にとっては大きな痛手になります。
そこで注目すべきは、課税額を抑えることです。とはいえ、「すでに稼いだ収入を減らすなんて無理なのではないか?」と思うかもしれませんが、実はできるのです。
その方法は、所得控除を利用することです。所得控除は、特定の条件を満たしているとき、所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。ちょっとピンとこないかもしれませんが、会社員なら年末調整でお金が戻ってきた経験のある人は多いと思いますが、実はこの手続きが所得控除なのです。
身近な所得控除を考えよう
代表的な所得控除としては、医療費控除や生命保険料控除があります。
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払ったとき、支払った医療費が一定額を超えたなら、所得控除を受けられるというものです。
実際に支払った医療費から保険金として受け取った金額を差し引くことになりますが、「10万円」もしくは「総所得金額等×5%」のどちらか低いほうの金額を超える部分を所得から年間で最大10万円控除できます。
また、生命保険料控除は、新生命保険料控除、介護医療保険料控除、新個人年金保険料控除のそれぞれ4万円を控除でき、年間で最大12万円控除できます。
その他の控除としては、iDeCoに加入するという方法もあります。
iDeCoの場合は、掛金は全額所得控除になります。加入している年金制度によって掛けられる金額(拠出金)は変わってきますが、確定給付型の年金および企業型DCに加入していない厚生年金保険の被保険者は、月額2万3000円、年間で27万6000円まで掛けることができ、全額が控除になります。
働き方やライフスタイル、家族構成は家族ごとに違いがあります。自分が利用できる所得控除はないのかをチェックしても良いでしょう。
ただ、データ上では簡単にお金を動かすことはできますが、実際にiDeCoや生命保険等を毎月掛け続ける、支払い続けるとなると家計の負担は大きくなってしまいます。必ず家計の見直しをし、無理のない範囲で利用するようにしましょう。
出典
文部科学省 高校生等への修学支援 高等学校等修学支援金制度
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1140 生命保険料控除
厚生労働省 iDeCoの概要 3. 制度の概要
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト