更新日: 2023.12.22 子育て
子育てで時短勤務の「給料10%上乗せ」は意味がない? フルタイムで働く人が「損」して不公平にならないの?
本記事では、子育てで時短勤務をする際に給料の10%を上乗せされても意味がないのか、フルタイムで働く人との間に不公平感を生むおそれがあるのか解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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給料が減ることは問題ではない?
民法624条で「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。」と規定されており、一般的に労働者は企業などの使用者に対して提供した労務への対価として給料を受け取ります。
つまり何らかの理由で労働しなかった場合、使用者は労働者に対して給料を支払う義務はありません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といい、給与計算の基本原則として扱われることが多いです。ただし、以下のような場合はノーワーク・ノーペイの原則の対象外です。
●年次有給休暇の利用
●会社都合による休業や自宅待機など
●会社規定の福利厚生制度を活用した休業
●休憩時間であっても実際は取引先の来訪などがあれば対応する必要がある手待ち時間
育児が理由で時短勤務をする場合もフルタイムの場合に比べて労働時間は減るため、それに応じて賃金を調整することは法的に問題ありません。もちろん収入が減ると家計への影響がありますが、労働時間が減るため給料も少なくなってしまうのは仕方がないことだと考えられています。
フルタイム労働者との間に不公平感が生まれる可能性がある
育児休業明けに時短勤務をする労働者が賃金の10%を給付されることは、もちろん当事者としてはうれしいケースが多いでしょう。ただしノーワーク・ノーペイの原則の例外として扱われるため、時短勤務を行う人とフルタイムで働く人との間に不公平感が生じる可能性もあります。
例えば、フルタイムで働く場合の月給が20万円、所定労働時間は1日8時間(週40時間)の状況で1時間の時短勤務を行っているとします。1時間あたりの単価(時給)は1250円で、時短勤務だと月間で2万5000円少なくなり17万5000円です。仮にフルタイム勤務時の賃金の10%が給付される場合は2万円が補助されるため、合計で19万5000円もらえる計算です。
給付金を受け取ってもフルタイムの場合に比べると給料は少ないとはいえ、5000円の差であれば真面目に働くほうが損と考える人も増えるかもしれません。
このシミュレーションは残業や基本給以外の手当などについては考慮していませんが、時短労働の内容や所得税や住民税、社会保険料などの控除額などによって実際の手取り金額は変わります。
フルタイム勤務時と時短勤務時、どちらの賃金をもとに給付額が決まるのか現時点で明らかになっておらず「賃金の10%上乗せ」が、時短勤務をしない場合と含めて得かどうかは一概にはいえない点にも注意する必要があるでしょう。
職場に影響が出る可能性も?
もちろん育児や介護などによって仕事ができなくなるのは労働者や経営者も含めて全員に起こり得ることであり、労働時間が短くなることは悪いことではありません。ただし、組織運営を行う以上は「誰かが休むと誰かがカバーしなければならない」のは事実です。
そのような中で今回検討されている内容が実現されると「事情があるとはいえ働いていないのに給料が上乗せされるのはおかしい」と不満の声が出る可能性も考えられます。
まとめ
本記事では政府が検討している「育児休業明けに時短勤務をする労働者に対して賃金の10%を給付する施策」について、仮に実現した場合はフルタイムで働く人が損して不公平になるのかを解説しました。
実際は労働環境や働き方、福利厚生の有無なども大きく関係するため、賃金の10%給付で直ちに不公平感が出るかどうかはわかりません。しかし対象者が2歳未満の子どもがいる人に限定されることから、2歳以降の未就学児や小学校低学年の子どもがいる人に補助はないのかという問題もあります。
もちろん収入が補てんされることはうれしいことですが、例えばフレックスタイム制度の導入で勤務時間を柔軟に選べたり、出社か在宅勤務か、その時の状況にあわせて選択できたりといった形でのサポートも求められるかもしれません。
出典
e-Gov法令検索 民法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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