金融資産残高に約3倍の差? “両手で働く”アメリカ人と“片手で働く”日本人
配信日: 2018.10.03 更新日: 2020.05.25
41か国で比較している2011年から2014年のOECD貯蓄率統計では、日本は下から8番目の34位になっています。1970年代には20%を超えていた貯蓄率も、今では2%ほどに下がっているのです。
この要因は少子高齢化によるもので、働いている世帯の給与の伸びに比べて、リタイア世帯が年金の不足分を取り崩して使っている人が増えているからなのです。
また、低金利政策も行われているので、金利で増やすこともできなくなっています。
ここ20年間で、“両手で働く”アメリカ人と“片手で働く”日本人では、金融資産残高に約3倍の差が開いています。アメリカ人はいったい何をしてきたのでしょうか?
執筆者:木田美智子(きだ みちこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
確定拠出年金相談ねっと認定FP、DCアドバイザー、証券外務員内部管理責任者、相続士、金融知力インストラクター、FP未来への扉(幹事)、SANWA DCサポート代表。
両手と片手ってどういうこと?
日本人は、一生懸命働いて得た給与からこつこつ銀行預金で貯めています。投資にまわしている人は少なく、金融資産の半分以上が預貯金です。金利が高かった時代はそれでも十分に増やすことができましたが、今のマイナス金利ではそれもかないません。
一方、アメリカ人は株式や投資信託で給与からこつこつ積み立てをしてきたのです。
日本人は頑張って貯めたお金を、「私が働くからあなたはゆっくり休んでいてね」と銀行で休ませているのですが、アメリカ人は働いて得たお金を「あなたも国の発展や会社の成長のために働いてね」と投資にまわしているのです。
また、ほとんどの日本人の金融資産は勤労収入で、ほぼ“働いた分だけ”ということになるのに対し、20年過ぎた頃のアメリカ人の金融資産を見てみると、3倍に増えた資産の中の3分の2は、“働きに出した”お金が稼いでいるのです。
両手になれない日本人の習慣! アメリカ人が活用確定拠出年金401k
アメリカ人は、1980年からスタートしている確定拠出年金401kを使って、給与からこつこつ積み立てを行っています。所得控除ができるこの制度を使い、投資信託で約7割を運用してきた結果なのです。それが、アメリカ人が成長に合わせて資産を増やすことができた理由です。
日本においても、アメリカの制度をモデルに日本版401kとして確定拠出年金が2001年10月からスタートしていますが、そんなに前から始まっていたことをご存知でしたか? ご存じない方も多かったはず。なぜなら誰も教えてくれなかったからなのです。
また、加入できる対象者が、国民年金だけの自営業者と企業年金として制度を導入した会社の社員だけしか使うことができなかったことがあげられます。
なぜこのようなことが起こったのか、それは加入した人にメリットがあり、金融機関や保険会社は儲からない制度だったからなのです。
それに加え、せっかく企業型確定拠出年金の制度がある会社の社員であっても、投資信託をリスクがあるものとして、安全資産の預貯金や保険を選んでいる人が約6割。掛金を会社が出してくれているので、あまり関心がなかったり、お金が減ってしまうかもしれないリスクは取りたくないと考えたりする傾向が強いからなのです。
日本人は、元本が減らない安全な商品が大好きなのです。みんなと同じ行動を取ることに安心感を覚えます。そんな日本においても金融庁が中心となり、アメリカ人が証明してくれているこの方法をお手本にしようと動き始めています。
早く始めるとお得な制度! 乗り遅れにご注意を
少子高齢化、さらに長寿時代になり、将来に不安を感じている人は8割以上。老後にみんなが頼りにしている年金も、支給開始年齢が遅くなったり、減額されたりすることも予想されます。
老後皆さんが困らないように、自分で準備できるようにと、2017年から確定拠出年金iDeCoが始まり、全員が加入できるようになっています。
この制度は60歳まで払い出しができませんが、払い出しせずに必ずセカンドステージの資金として貯められるというメリットもあります。
資産運用を経験したことのない人でも、学びながら資産を増やせるよう、2018年からは運用益が非課税になるNISAに加えて、つみたてNISAが登場。NISAは2023年まで、そしてつみたてNISAは2037年までと期限付きです。
もし、利用を検討しているようなら、始めるのを遅らせるとどんどん使える期間が減ってしまいます。資産運用のリスクを抑える方法は、長期・分散・積み立て。こつこつ長く預けるのがポイントです。
最後に、皆さんが“働きに出したお金”は、皆さんの生活を豊かにするために頑張っている会社の資金となって働きます。そして、便利さと豊かさがあなたに戻ってきます。片手で働いている方は、両手で働く人になってみてはいかがでしょうか。
Text:木田美智子(きだ みちこ)
CFP(R)認定者