更新日: 2019.01.10 その他暮らし
知っておいて損はない!マイホームの売却について
また、マイホームを売るときには税金の負担が軽くなるように様々な税の軽減措置があります。ポイントを解説します。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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目次
土地や建物を売ったときの税金
※配信した記事の中に一部誤りがあり、一部修正を行っております。※
土地や建物を売ったときの「儲け」を譲渡所得といいます。譲渡所得は次の算式によって計算します。
譲渡価格-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
譲渡所得-特別控除額(一定の場合)=課税譲渡所得金額
取得費は、売った土地や建物の購入代金(建物は減価償却費相当額を控除します)や仲介手数料などの合計額です。実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算することができます。相続した不動産の取得費は故人(被相続人)がその不動産を取得したときの取得費を引き継ぎます。
取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算することができます。
譲渡費用は、仲介手数料、測量費など土地や建物を売るために直接要した費用、貸家の売却に際して支払った立退料、建物を取壊して土地を売ったときの取壊し費用などです。
特別控除額はマイホームを売ったときの3,000万円控除などです。
所有期間によって税率が違う
税額は課税譲渡所得金額に税率を掛けて求めます。所有期間は土地や建物を売った年の1月1日現在で判断されますので注意してください。所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。
例えば、本年中に土地や建物を売った場合、取得したのが平成24年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、平成25年1月1日以降であれば「短期譲渡所得」になります。
「長期譲渡所得」の税率は20%(所得税15%、住民税5%)、「短期譲渡所得」の税率は39%(所得税30%、住民税9%)となります(2037年までは復興特別所得税2.1%もかかります)。
相続した土地や建物の所有期間は、相続時からではなく、故人(被相続人)がその土地や建物を取得した日からカウントします。取得費同様、故人(被相続人)がその不動産を取得したときの取得時期を引き継ぎます。間違いやすいので留意しましょう。
マイホームを売ったときの3,000万円控除
マイホームを売ったとき、譲渡所得から3,000万円控除できます。譲渡所得が3,000万円に満たない場合は、特別控除額は譲渡所得の金額が限度となります。
特別控除を受けるには、自分が住んでいる家と敷地を売ったときや、以前に住んでいた家と敷地を住まなくなってから3年後の12月31日までに売ったときなど、一定の要件を満たす必要があります。この他にも細かい要件がありますので、事前に税務署や税理士に確認してください。
マイホームを売ったときの軽減税率
売った年の1月1日現在で、マイホームの所有期間が10年を超えている場合、「3,000万円の特別控除の特例」を適用した後の課税長期譲渡所得金額が6,000万円までは、税率が14%(所得税10%、住民税5%)に軽減されます。6,000万円を超える部分は原則どおり20%です。
マイホームの買い換え特例
今住んでいるマイホームを売って新たにマイホームを購入する場合、売ったときに生じる譲渡益(儲け)に課税される税金を繰り延べる買い換えの特例があります。
マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームの買い換え(交換)をした場合は、譲渡価額が1億円以下、売った年の1月1日現在で所有期間10年超、居住期間10年以上の場合など、一定の要件を満たすと、その譲渡益の課税を繰り延べる特例が受けられます。
ただし、上記の「3,000万円の特別控除の特例」又は「軽減税率の特例」とは、選択適用となっています。この他にも細かい要件がありますので、事前に税務署や税理士に確認してください。
マイホームを売って譲渡損失が生じた場合
これまで譲渡益(儲け)が生じた場合について見てきましたが、譲渡損失が生じた場合にも特例があります。
売った年の1月1日現在で、所有期間が5年を超えるマイホームの譲渡損失が生じた場合には、その譲渡損失の金額をその年の他の所得と損益通算することができます。
その年で通算しきれなかった譲渡損失の金額がある場合には、その年の翌年以後5年内の各年分の所得から繰越控除することができます。なお、繰越控除をする年の合計所得金額は3,000万円以下でなければなりません。この特例を受けるためには他にも要件がありますので、事前に税務署や税理士に確認してください。
相続した居住用財産(空き家)を売ったときの特例
マイホームを売ったときの3,000万円控除と同様、相続した居住用財産(空き家)を売ったときの特例として譲渡所得から3,000万円控除できます。
控除を受けるには、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であること、建物を取り壊して売るか、耐震リフォームしてから売ること、平成31年(2019年)12月31日までの間に売ることなど要件が厳しく、適用できるケースは限定的です。この特例を受けるためには細かい要件がありますので、事前に税務署や税理士に確認してください。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続により取得した土地、建物、株式などを、相続の申告期限から3年以内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるという特例です。上記の「相続した居住用財産(空き家)を売ったときの特例」とは選択適用になります。この特例を受けるためには他にも要件がありますので、事前に税務署や税理士に確認してください。
参考・参照:国税庁パンフレット「暮らしの税情報」(平成30年度版)、国税庁ホームページ
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。