生活保護は「不正受給」が多いって本当? 割合や金額、近年の傾向などを解説
配信日: 2024.01.20 更新日: 2024.01.22
本記事では、生活保護の不正受給の件数や金額、割合、近年の傾向など、不正受給にまつわる問題について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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生活保護の不正受給の割合はどのくらい?
厚生労働省の「生活保護制度の現状について」によれば、2020年度の生活保護負担金は3兆5258億円でした。このうち不正受給は約126億4659万3000円で、割合にすると約0.36%に過ぎません。不正受給の件数は3万2090件で、1件当たりの不正受給額は39万4000円でした。
不正受給の内容の約6割を占めているのは、稼働収入の無申告と過小申告です。例えば、生活保護を受けている世帯が高校生のアルバイト収入を申告していなかった場合なども無申告に該当し、世帯主の収入を少なく申告した場合は過小申告となります。
生活保護の不正受給は減少傾向にある
近年、生活保護の不正受給の件数や金額は減少傾向にあります。例えば不正受給の件数に注目すると、2012年~2016年は4万件台でしたが2017年には約3.9万件となり、2018年は約3.7万件、2020年~2021年は約3.2万件になりました。
減少傾向の背景にあるのは、生活保護制度の信頼確保のために、2013年度から施行された生活保護法の改正です。この改正では、生活保護の申請を受ける福祉事務所の調査権限の拡大や、不正受給した際の罰金を30万円から100万円にしたり返還金に上乗せしたりする罰則強化が加わりました。
また、不正受給に関わる保護費の調整や、必要に応じて報告を求めるなどの項目も追加されています。生活保護の不正受給は今に始まった問題ではなく、国としても対策を講じているのです。
必要な人が生活保護を受けられないことも問題となっている
不正受給の割合が少なく減少傾向にあるとはいえ、まだまだ「多額の国税が無駄に使われている」と考える人もいるでしょう。もちろん、こうした不正受給に厳しく対処することは大切ですが、本当に生活保護を必要としている人が給付を受けにくくなる問題が発生している現実も見逃せません。
これは、役所が生活保護負担金を減らそうとして、「多忙だから申請を受けられない」「無料低額施設を利用してほしい」などと、申請者を追い返すような対応を取ることがあるという問題です。これによって、最後のセーフティーネットであるはずの生活保護制度が機能しなくなるケースが出ているのです。
また、一部の人の不正受給によって生活保護を受ける人のイメージが悪くなり、国民の正当な権利である生活保護を受けにくい社会的な雰囲気があることも大きな問題です。実際に、世間体や家族、親戚の反応を気にして生活保護の申請をためらう人は少なくありません。
生活保護の不正受給に過度な偏見を持たないことが大切
生活保護に不正受給の問題があるのは確かですが、全体の割合でみると多いとはいえません。また、生活保護法の改正によって不正受給も減少傾向にあります。
一部の人の不正受給によって生活保護を受ける人全体が偏見を持たれてしまい、国民の正当な権利を行使しにくい社会は健全ではありません。不正受給を減らすだけでなく、生活保護を本当に必要とする人がすみやかに生活保護を受けられるようにすることも大切です。
出典
厚生労働省 生活保護制度の現状について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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