座ってらくらく通勤 首都圏で増える「通勤ライナー」

配信日: 2018.10.18 更新日: 2019.01.10

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座ってらくらく通勤 首都圏で増える「通勤ライナー」
毎日の通勤は距離と時間が長いほど、体力を消耗します。首都圏では、座席指定料金を払えば座って快適通勤できる「通勤ライナー」の導入が増えており、人気を集めています。
 
定期券でも指定席券300~500円を支払えば乗車ができます。朝は過密ダイヤのため、運行本数が制限されている路線が多いですが、帰宅時間帯には多数の列車が運行されています。
 
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

昼の観光用列車を朝晩は通勤用に

昼は観光目的で走らせている同じ車輛を、朝と晩は通勤ライナーとして転用します。先駆者としての代表が小田急電鉄で、京成電鉄もほぼ同様なサービスを展開しています。小田急は観光目的で箱根湯本や江ノ島へ、京成は海外旅行者向けに成田空港まで運行している「ロマンスカー」「スカイライナー」を、朝と晩に通勤用に走らせています。
 
小田急電鉄は上りが「モーニングウェイ」、下りが「ホームウェイ」の名称で、朝は、小田原、秦野、本厚木、藤沢などが始発で、新宿まで快適な通勤が可能です。帰りは新宿からその逆のコースで運行しています。停車駅は通常のロマンスカーより多く、通勤客の便宜を図っています。指定券を購入すれば定期券で乗車できます。
 
京成電鉄は上りが「モーニングライナー」、下りが「イブニングライナー」の名称で、京成上野と成田空港間を運行しています。空港利用者向けのスカイライナーと異なり、途中の主要駅に停車することで、通勤客が利用しやすいダイヤが組まれています。指定券を購入すれば定期券で利用できます。
 
西武鉄道にも観光特急「レッドアロー」号を使った通勤ライナーがあります。昼間は観光用で西武秩父まで運行している車輛を、池袋=飯能間などに通勤ライナーとして運用しています。
 
また、池袋線だけでなく新宿線にも、新宿=本川越の通勤ライナーがあり、新たに拝島行きの「拝島ライナー」の運行も始めました。JR東日本で運行している「ホームスワローあかぎ」(高崎線)、「ホームライナー千葉」(総武線)も、昼間の観光用の特急列車の車輛を利用した通勤ライナーです。
 

観光特急を持たない鉄道会社の通勤ライナー

観光目的だけの特急車輛を持たなかった会社でも、通勤ライナーを走らせています。その代表格が京浜急行の「ウィング」号です。夜の帰宅時間帯の運行が中心ですが、過密ダイヤとなる朝も2本程度「モーニングウィング」を走らせています。
 
京浜急行の場合、観光用で特急列車はありませんが、通勤と観光を兼ねた速達列車として、特急料金不要の「快速特急」があり、2人掛けのクロスシートの車両も使われていました。「ウィング」号にも、主としてこの車輛が運用されています。特急料金は要りませんが、着席を保証した指定券の購入が必要です。
 
停車駅についても、遠距離通勤者向けになっています。帰宅時の始発となる品川や泉岳寺を出ると、京急川崎や横浜といった乗降客の多い快速特急停車駅は通過し、最初の停車駅は上大岡となっています。続いて金沢文庫、横須賀中央といった駅に停車します。川崎や横浜を利用する人は、この列車に乗車できません。
 
また、JR東日本が東京=小田原間などで運行している「湘南ライナー」も同じコンセプトです。使用する車輛は、観光特急「踊り子」号に運用されているものを使い、ライナー券を購入すれば利用できます。
 
そのため「踊り子」号の特急料金よりも、安い料金で乗車できます。京浜急行の「ウィング」号と同じく、川崎、横浜には停車せず、最初の停車駅は大船となります。
 

新たに通勤ライナーの導入した会社も

これまで通勤ライナーのなかった鉄道会社でも、新たな導入が進んでいます。京浜急行をモデルにして、最近では東武鉄道や京王電鉄が、新たに通勤ライナーの運行を始めています。東武東上線の池袋=森林公園・小川町間を走る「TJライナー」、京王電鉄の新宿=京王八王子・橋本間を走る「京王ライナー」です。
 
この2路線は観光目的の特急列車がなかったため、両社とも遠距離通勤者を意識して新造車輛で運行を開始しました。
 
通常運行の場合は、1人でも多くの人が乗れるように横に長いロングシートになっていますが、通勤ライナーとして運行する場合は、2人掛けのクロスシートに転換できるように設計されているのが特徴です。
 
通常の急行に比べ停車駅は少なくなっており、京浜急行と同じように、都心の始発駅に近い主要駅(東上線は成増、志木、京王線は明大前、調布)は通過します。遠距離通勤客を意識しダイヤが組まれています。この路線を走る急行・特急などは追加料金を必要としないため、座席指定券を購入すれば乗車できます。
 

今後も通勤ライナーは増えそう

大手の鉄道会社の中には、沿線の宅地開発を熱心に進めてきたため、住宅購入者に対するサービスとしても、この通勤ライナーは欠かせない存在となりつつあります。
 
小田急、京王、東武、西武などの鉄道会社は、積極的に沿線の宅地開発を進めてきました。小田急の新百合ヶ丘、京王の聖跡桜ヶ丘、東武のふじみ野などは、宅地開発の副産物とて出来た代表的な駅で、通勤ライナーも停車します。こうした地域に住む住民の通勤を、少しでも快適にという狙いも読み解くことができます。
 
西武池袋線から東京メトロに乗り入れする通勤ライナーも生まれています。西武鉄道のS-TRAINで、平日には所沢から有楽町線の豊洲までの区間で朝と夜に通勤用として運行されています。
 
この列車はメトロ乗り入れのため、レッドアローの車輛は使用せず、回転式でクロスシートにもロングシートにもなる車輛を新規に製作して投入しました。土曜・休日には、これが東京メトロ副都心線、東急東横線を経由して、みなとみらい線の元町中華街までの座席指定ライナーとして運行されています。
 
通勤ライナーとは縁のなかった東急電鉄でも、最も混雑の激しい田園都市線の利用客を対象に、田園都市線から大井町線の大井町へ行く通勤ライナーを走らせる計画が進んでいます。今後も乗客のニーズに合致すれば、通勤ライナーは増加していくと思われます。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト

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