更新日: 2024.12.09 その他暮らし
お隣の庭のみかんが「わが家の敷地」にしょっちゅう落ちています…返した方がよいのでしょうか?
「わが家に落ちたものだから、食べてもいいだろう」と思うかもしれませんが、隣人の同意を得ずに対処すると、罪に問われる可能性もあるようです。
今回は、隣家の木から落ちた果実の所有権と対処法について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
落ちた果実の所有権は、木の所有者に帰属すると考えられる
木から落ちた果実の所有権は、木の所有者に帰属するようです。表題のケースでは、落ちたみかんの所有者は隣人になると推測されます。
根拠となる法律が、民法第89条第1項です。民法第89条第1項は、木から落ちた果実の所有権は、果実を収取する権利を持つ人にあると定めています。条文は次の通りです。
民法第89条(果実の帰属)第1項
●天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
そして、同法第206条に基づけば、果実を収取する権利を持つ人は、木の所有者と解釈できるでしょう。
民法第206条(所有権の内容)
●所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
したがって、隣家の木から落ちた果物は、その家に返さなければならないようです。勝手に食べたり処分したりすると、窃盗や占有離脱物横領とみなされるかもしれません。
窃盗や占有離脱物横領とみなされると、懲役や罰金を科される可能性がある
窃盗や占有離脱物横領とみなされると、懲役刑や罰金刑を科される可能性があります。具体的には、窃盗では10年以下の懲役または50万円以下の罰金、占有離脱物横領で1年以下の懲役または10万円以下の罰金、もしくは科料となります。
刑法第235条(窃盗)
●他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法第254条(遺失物等横領)
●遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
裁判所が公開している「令和4年 司法統計年報」によると、2022年に発生した窃盗罪1万79件のうち、懲役・禁錮刑を科されたケースは9749件(約96.7%)、罰金を科されたケースは330件(約3.27%)となっています。刑期は1年以上、罰金額は20万円以上が最多です。
果実の無断処分にどれほどの刑期、罰金が科されるかは一概には判断できませんが、最悪の場合には上記の罰則が科されるかもしれないことは頭に入れておくとよいでしょう。
木の所有者と話し合い、解決策を模索しよう
量が多く、都度返すことが大変な場合は、隣人と話し合い、双方が納得できる解決策を見いだすとよいでしょう。
話し合うきっかけがつかめない場合は、あいさつなどで日常的にコミュニケーションをとり、話しやすい雰囲気を作ることも大切です。それでも相手が真摯(しんし)に向き合ってくれない際は、町内会長などに相談することも有効でしょう。
いずれにせよ、隣家の木から落ちた果実に対処する際は、隣人の同意を得ることが重要と考えられます。
隣家の木から落ちたみかんは返さなければならないと考えられる
民法第89条第1項、および同法第206条に基づけば、隣家の木から落ちた果実は隣人に返さなければならないようです。量が多い場合などは、隣人と話し合い、対応方法を確認するとよいでしょう。話し合いに応じてもらえない際は、町内会長などの助けを借りることも有効かもしれません。
なお、勝手に処分すると窃盗や占有離脱物横領とみなされ、懲役、もしくは罰金を科される可能性があるようなので、注意が必要です。
出典
e-Govポータル 法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第一編 総則 第四章 物 第八十九条(果実の帰属)、第二編 物権 第三章 所有権 第一節 所有権の限界 第一款 所有権の内容及び範囲 第二百六条(所有権の内容)
e-Govポータル 法令検索 刑法(明治四十年法律第四十五号) 第二編 罪 第三十六章 窃盗及び強盗の罪 第二百三十五条(窃盗)、第三十八章 横領の罪 第二百五十四条(遺失物等横領)
裁判所 令和4年 司法統計年報 2 刑事編 (44~49ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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