「側溝のふた」が盗まれる!?被害総額はなんと数百万円にも…その理由とは?
配信日: 2025.01.11
そこで本記事では、側溝のふたの役割や側溝のふたが盗まれてしまう理由とあわせて、窃盗罪の刑罰について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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側溝のふたの役割とは
側溝のふたは「グレーチング」と呼ばれる金属製の鉄格子で、道路の脇や公園、駐車場や建物の周囲などさまざまな場所に存在します。基本的な素材は「鉄」ですが、スチール製やステンレス製もあります。
グレーチングの基本的な役割は「人や物の落下を防ぎながら、水だけが流れるように促すこと」ですが、使われる場所や目的により性能や機能はさまざまです。
グレーチングがなくなることによって人が溝に落ちてけがをしたり、車がはまって事故が起きたりと危険性が高まります。また、自治体や個人がお金をかけて設置しているため、経済的負担も少なくありません。
側溝のふたを盗む目的は?
福島市では2024年10月、側溝のふたが約250枚盗まれる事件が発生しました。被害総額は440万円にもおよび、窃盗事件として捜査するといったニュースがありました。
側溝のふたが盗まれる背景には、転売する目的があるのではないかと考えられています。近年、金属の値段が高騰している傾向にあるためです。
鋼材類は、2020年初頭に需要が低迷したものの、経済活動の再開により鋼材需要が世界的に回復しました。それにともない、鉄鉱石や原料炭や鉄スクラップの価格が上昇に転じたとされています。2022年に入ると、ウクライナ情勢の悪化や円安などから、原料価格がさらに上昇し鋼材が高騰する要因の一つとなりました。
一般社団法人日本鉄リサイクル工業会が公表する、鉄スクラップ(鋼スクラップ)の価格も、2020年から比べると年々上昇していることが分かります。
2020年から2024年の、鉄スクラップ1トンあたりの価格推移を表1にまとめました。
表1
年代(1月の価格) | 関東・中部・関西の3地区平均価格 |
---|---|
2020年1月 | 2万2700円~2万3700円 |
2021年1月 | 3万5500円~3万6500円 |
2022年1月 | 5万1800円~5万3200円 |
2023年1月 | 5万円~5万1200円 |
2024年1月 | 5万1200円~5万2800円 |
出典:一般社団法人日本鉄リサイクル工業会「価格推移表(2020年~2024年)鉄スクラップ(鋼スクラップ)価格」を基に筆者作成
2020年では2万円台だった価格が、2022年には5万円台になっています。2022年以降は多少の増減はあるものの、5万円台を維持したままです。
なお、グレーチングの盗難対策として、ボルトで固定する・クサリを付ける・防犯カメラを取り付けるなどがあります。また、小型GPS機器をとりつけ、容疑者逮捕につながったケースもあるようです。
窃盗による刑罰
刑法235条では、他人の財物を盗んだ者は窃盗罪にあたるとされ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるようです。
また、窃盗罪は未遂でも刑罰をうける可能性があると、刑法243条に記されています。刑法243条の窃盗の未遂罪に問われる行為の例としては、財布などの目的物を探すスリのような行為や、金目の物がないか物色する行為などが挙げられます。
グレーチングの盗難が発生している背景には、金属価格の高騰にともなう転売利益を狙う目的があると考えられる
世界的な経済活動の再開にともない、2020年頃から鋼材の需要が回復しました。さらに2022年頃からは、世界情勢の変化や円安の影響などもあり、鉄スクラップの価格が上昇する現象が見られるようになりました。このような影響から、金属の転売目的によるグレーチングの盗難が起こっていると考えられます。
窃盗罪は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処されます。また、窃盗未遂の場合も罪に問われる可能性があります。
グレーチングがない場所は、けがや事故につながりかねません。ふたのついていない側溝を見かけたら近づかないようにしましょう。可能であれば、警察や行政に連絡してもいいかもしれません。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十五条、第二百四十三条
一般社団法人 日本鉄リサイクル工業会 価格推移表 鉄スクラップ(鋼スクラップ)価格(2020年~2024年)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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