電車やバスには「二重運賃」があると知りました。「交通系ICカード」と「切符」ではいくらくらいの差額がありますか?

配信日: 2025.01.16

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電車やバスには「二重運賃」があると知りました。「交通系ICカード」と「切符」ではいくらくらいの差額がありますか?
2014年に消費税率が引き上げられた際、交通系ICカードの「1円単位運賃」が導入されました。これは消費税率の引き上げ分を正確に転嫁するための手法で、「交通系ICカード」と「切符」では運賃が異なる、いわゆる「二重運賃」が導入されるきっかけとなります。
 
当時は話題となりましたが、導入から10年がたち、「覚えていない」「あまり意識していない」という方もいるのではないでしょうか。そこで、当記事では改めて「二重運賃」についておさらいし、「交通系ICカード」と「切符」の差額についてみていきたいと思います。
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2014年の消費増税をきっかけに電車・バスの「二重運賃」が開始

2014年に消費税率が5パーセントから8パーセントに引き上げられた際、首都圏の鉄道事業者やバス事業者を中心とした公共交通機関の事業者から「1円単位運賃」を導入したいとの申し出がありました。
 
公共交通事業を管轄する国土交通省は2013年10月29日、「今後、このような運賃改定申請が出てくる場合には、消費税率の引上げ分をより正確に転嫁する観点から認める方針です。」との見解を示し、いわゆる「二重運賃」が導入されることになります。
 
自動券売機での少額硬貨の取り扱いや利用者の利便性などを踏まえ、現金運賃は「10円単位」であることに対し、「交通系ICカード」については「1円単位運賃」が認められたことで、「切符」と「交通系ICカード」で運賃が異なる状況が生まれたのです。
 

JRの電車特定区間・山手線内は常に「交通系ICカード」の方が「切符」より安い

それでは、実際に「交通系ICカード」と「切符」で運賃はいくらくらい違うのでしょうか。まず前提として、交通系ICカードの「1円単位運賃」導入に際し、国土交通省は「ICカード運賃は現金運賃と同額ないしそれより安価となることを基本」とする方針を示しています。
 
一方、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は「『IC運賃』が安い場合と『きっぷの運賃』が安い場合がありますが、なぜですか。」との問いに対し、以下のように回答しています。
 
「IC運賃は、基本的には税抜運賃に1.1を掛け、小数点以下を切り捨てて1円単位にしています。これに対し『きっぷの運賃』は、税抜運賃に1.1を掛け、原則に基づいて一の位を四捨五入し10円単位にしています。
 
ただし、ICカードのご利用が多い首都圏においては、電車特定区間・山手線内に限り、常にIC運賃の方が『きっぷの運賃』以下になるようにするため、『きっぷの運賃』の計算で10円単位にする際に一の位を切り上げています。」
 
そのため、電車特定区間・山手線内については、常に「交通系ICカード」の方が「切符」より安い運賃となっています。例えば、2024年11月21日現在、山手線内の普通運賃は表1の通りです。
 
表1

営業キロ 交通系ICカードの運賃(円) 切符の運賃(円)
1~3 146 150
4~6 167 170
7~10 178 180
11~15 208 210
16~20 274 280

出典:東日本旅客鉄道株式会社「山手線内の普通運賃表」を基に筆者作成
 

首都圏外延部や地方エリアだと「交通系ICカード」より「切符」の方が安いケースも

国土交通省は「ICカード運賃は現金運賃と同額ないしそれより安価となることを基本」とする一方、「端数処理の技術的な方法については、事業全体として108/105以内の増収を前提に、各交通モードの利用特性を踏まえて現実的に対応」との方針も示しています。
 
そのため、値上げに伴う増収の幅が一定の範囲内に収まることを前提に、運賃の端数処理は各事業者に委ねられることになりました。その結果、電車特定区間や山手線内は常に「交通系ICカード」が安価になる一方、首都圏外延部や地方エリアだと「切符」の方が安いケースも見られるようです。
 

一部の事業者では「小児用ICカード」利用時に小児運賃が大幅に安くなる

さらに近年、「小児用ICカード」を利用すると小児運賃が大幅に安くなる鉄道事業者やバス事業者が登場しています。例えば、小田急電鉄株式会社は2022年に小児用ICカード利用時の小児運賃を一律50円に、京浜急行電鉄株式会社は2023年に一律75円に改定しました。
 
バス事業者では、神奈川中央交通株式会社が2023年に「小児IC運賃の一律50円」を開始しています。沿線人口の減少に直面する路線も多いこともあり、小児一律運賃のように大胆な施策を推進する事業者も今後は増えてくるかもしれません。
 

まとめ

今回は電車やバスの「二重運賃」について解説しました。二重運賃は2014年の消費増税に伴い導入された手法で、交通系ICカードと切符で異なる運賃体系を設定するものです。運賃の端数処理は各事業者に委ねられているため、電車特定区間や山手線内のように交通系ICカードの方が安い区間もある一方、首都圏外延部や地方エリアなどは切符のほうが安いケースもあるようです。
 
近年は小児一律運賃を導入する事業者も現れているため、交通系ICカードと切符を使い分けてお得に公共交通機関を利用しましょう。
 

出典

国土交通省 報道発表資料:消費税率引上げに伴う公共交通運賃(鉄道、バス)への1円単位運賃(ICカード利用)の導入について
東日本旅客鉄道株式会社 「IC運賃」が安い場合と「きっぷの運賃」が安い場合がありますが、なぜですか。 | よくいただくお問い合わせ
神奈川中央交通株式会社 小児IC運賃の一律50円
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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