更新日: 2020.04.07 その他暮らし
奨学金で自己破産・・大きな負債になりえる「奨学金」
就職をした時点で、奨学金の返済をしなければならないが、就職した時点でのお給料はある程度限られている。ましてや、最近は派遣社員で就職する人も多く、ベースアップは難しい…。そうした状況から、返済が滞ってしまうと考えられます。
そこで、奨学金制度の大きな貸し手である「日本学生支援機構」も、制度を見直すなどの対応をしています。今回は、日本学生支援機構の奨学金制度について書いてみたいと思います。
日本学生支援機構の奨学金の概要
まず、日本学生支援機構の奨学金には、給付型と貸与型があります。
給付型は、国費を財源として、意欲と能力のある若者が経済的理由により進学を断念することのないよう、原則として返還義務のない奨学金を支給し、進学を後押しするものです。返還義務がないため、まずはこちらを優先して考えることになります。では、どのような人が対象になるのでしょうか。
大学等へ進学する希望を持っている人で、住民税非課税世帯(家計支持者の市区町村民税所得割額が0円の人)、生活保護世帯の人、社会的養護を必要とする人(18歳時点で児童養護施設等に入所していた人)が対象になります。
給付型は、一般の方は対象になりづらいかもしれません。
それに対して、一般的に活用されているのが貸与型です。貸与型はその名称通り、貸与であるため、借りたお金を返済することが前提条件です。
貸与型の奨学金には、利息の付かない第一種奨学金と、利息の付く第二種奨学金があります。それ以外に、入学時の一時金として貸与する、入学時特別増額貸与奨学金(利息付)があります。
第一種奨学金(無利息)は、国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)に在学し、特に優れた学生・生徒で、経済的理由により著しく修学困難な場合に貸与されます。
貸与額は、学校の種類(大学、短大等)や、国公立・私立の区分、入学年度、自宅通学か自宅外通学により違ってきます。返還に際しては、定額返還方式(貸与総額に応じて月々の返還額が算出され、返還完了まで定額で返還する)か、所得連動返還方式(前年の所得に応じてその年の毎月の返還額が決まる)があります。
第二種奨学金(利息付)は、国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専修学校(専門課程)の学生・生徒が対象で、第一種奨学金よりゆるやかな基準で選考されます。
在学中は無利息で、年(365日あたり)3%を上限とする利息がつきます。貸与額は、大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専修学校(専門課程)においては11種類の貸与月額から、大学院においては5種類の貸与月額から、それぞれ自由に選択できます。
なお、一種と二種の併用貸与も可能です。
入学時特別増額貸与奨学金は、第一種奨学金または第二種奨学金に加えて、入学した月の分の奨学金の月額に、一時金として増額し貸与する奨学金です。利息が付きます。
日本政策金融公庫の「国の教育ローン」に申し込んだが、利用できなかった世帯の学生・生徒を対象とする制度です。貸与額は、5種類の額から選択できますが、入学時特別増額だけの貸与はできず、入学前の貸与ではないため注意が必要です。
そのほか、海外留学のための奨学金もあります。
貸与と返還
第一種奨学金では、私立・自宅外通学で、月額最大6万4000円まで貸与を受けることができます。また、第二種奨学金では、月額最大12万円(医・歯学等の場合追加あり)まで貸与を受けることができます。
しかし、ここで気を付けていただきたいのは、貸与を受けたものは返還しなくてはいけないということです。たとえば、第二種奨学金で最大12万円の貸与を受けた場合、
12万円×12ヶ月×4年間=576万円となります。
就職をして、社会人として出発する時点で、550万以上の借金を背負うことになるのです。
貸与を受ける際には、「借りることができるから借りる」ではなく、返還することを頭に入れたうえで申し込みされることをお勧めします。借入可能額はあくまでも上限ですので、目一杯借り入れるのではなく、返還可能額を検討したうえで借入金額を決定していただきたいと思います。
なお、万が一、返還途中で返還が難しくなった場合は、減額返還制度と返還期限猶予制度がありますので、日本学生支援機構へ連絡してください。
日本学生支援機構の奨学金制度については、「スカラシップアドバイザー」としてファイナンシャルプランナーを対象に認定制度を作り、学校へ派遣しています。
この制度も活用し、無理なく奨学金を活用していただきたいと思います。
執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者