更新日: 2019.06.18 その他暮らし

奨学金、借りる前に知っておきたい「返還」のポイント

奨学金、借りる前に知っておきたい「返還」のポイント
現在高校3年生の皆さん及びその親御さんは、4月、5月に学校で日本学生支援機構(以下「機構」)の「奨学金の説明会」が行われることも多いでしょう。
 
進学希望者で機構の奨学金を利用したい場合は、まず受験をする前に学校から申込関係書類を受け取り申請します。申請が採用されると、進学後に奨学金が受けられます(予約採用)。
 
つまり、高校在学中に受験の合否は置いておいて、準備しておくことができるわけです。申請が採用されても進学を辞める場合は、奨学金も辞退できます。
 
奨学金を借りて大学や専門学校へ通う、あるいは留学をすることが珍しくない昨今ですが、借りるにあたり、返す時の注意点を知った上で借りれば、いざ返す際に慌てずに済みます。また、奨学金というものをよく考えてから借りるきっかけになると思われます。
 
機構の奨学金は以下の通りです。
 
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

知っておくべき返還に関すること

奨学金を返す際は「返済」ではなく「返還」という言葉を使います。なぜなら、返したお金は次の世代の奨学生への奨学金として使われるためのお金になるからです。
 
<返還の開始>
貸与が終了した月の翌月から数えて7カ月目から始まります。つまり、3月で貸与が終了すると10月27日が初回の振替日となります。
 
<返還方法>
毎月定額で返す月賦返還と、これに半年ごとの返還を加えた月賦・半年賦返還があります。いずれも決まった金額を返還する「定額返還方式」です。無利子の奨学金(第一種)を借りている人に限り、毎年の所得に応じて返還月額が変わる「所得連動返還方式」も選択できます
 
<返還の期間>
最長は20年です。借りた総額によって1年あたりに返還する基準額が変わります。機構の返還年数算出票に基づいて,返還年数を計算します。
 
例えば、毎月3万円の奨学金を4年間借りた場合、借りる総額は144万円になりますが、その場合は、13年間(156回)で返還することになります。ただし、所得連動方式を選択している人は、毎年の所得に応じて返済月額が変わるため、返済期間は定まりません。
 

返還に困った時の救済措置

長い時間かけて返還していく中では、人生がいつも思い通りにいくとは限りません。途中で傷病や災害などによる健康上の困難、あるいは失業などの経済的困難に会うかもしれません。
 
そんな際には、次の二つの方法があります。
 
<減額返還>
毎月の返還額を2分の1、または3分の1に減額して、その減額期間に応じて返還期間を延ばす制度です。ただし、無利息の奨学金(第一種)を借りた人で、所得連動方式で返還をしている人は、この制度は利用できません。
 
<返還期限猶予>
返還期限を先延ばし(猶予)にしてもらう制度です。いずれも、願い出が必要で審査があります。1回の願い出で適用される期間は1年ですが、通算10年間まで可能です。
 
通常の返還期間は最長20年ですが、この措置により20年を超える場合もあるでしょう。利息がつく第二種奨学金の場合でも、これらの救済措置による期間延長や猶予期間にかかる利息は増えません。
 

延滞したらどうなる?

<年利5%の延滞金>
延滞している元本(利息除く)に対して、年5%の延滞金が延滞している日数分かかります。
 
<督促・請求>
債権回収会社から、文書・電話にて返還の督促・請求があります。連帯保証人や保証人がいる場合は、それらの人々へも督促・請求されます。
 
<個人信用情報機関への登録>
返還開始から6か月経過後、延滞3か月以上となった場合、延滞となっていることを含む個人情報が個人信用情報機関に登録される対象となります。
 
そうなると、住宅ローンや自動車ローンなどの審査が通りにくくなる、あるいはクレジットカードを作るのが難しくなるなどの可能性があります。
 
<最後は法的措置>
延滞が長期にわたると、(1)返還期日が来ていない分を含めたすべての返還すべき金額、(2)利息(利息付(第二種)の場合)、(3)延滞金について全額一括返還の請求がなされます。
 
返還が難しくなっても、延滞をしないために、まずはコールセンターに電話をして相談することが大切です。
 
また、奨学金を借りている期間は、しっかり学業に励んでいることが前提となり、これに反する場合は奨学金がストップする可能性もありますので、そうしたことを踏まえて借りるとよいでしょう。
 
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
 

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