更新日: 2019.06.13 その他暮らし

フィンテックで何が変わるのか(3) マネーリテラシーを高めることの必要性

フィンテックで何が変わるのか(3) マネーリテラシーを高めることの必要性
前回まで、キャッシュレス決済やロボットアドバイザー、ネット証券やスマホ証券などについて触れました。
 
これらに共通することはICカード、パソコン、スマートホンなどで完結するサービスが多く、フィンテックによってこれらが誰もが使えるとても身近なサービスになっていくということです。身近になることは良いことですが、それだけに気を付けなければいけないこともあります。
 
今回は「フィンテックで何が変わるのか」の最終回として、フィンテック時代に向けて、どのようなことに備えておく必要があるかを考えます。
 
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

現金を使わない世界

ICカードやスマホ決済が浸透し、そう遠くない将来「現金を持ち歩かない世界」がやってくるでしょう。
 
これまでも、現金を使わずに決済する手段としてクレジットカードがありましたが、クレジットカードの保有率は2015年ころから85%程度の横ばいで推移しています(JCB調べ)。今後は何らかのキャッシュレス決済のためのツールが必要不可欠になるでしょう。
 
クレジットカードの普及率は横ばいですが、クレジットカードを使わなくても携帯電話の利用料金と一緒に支払う方法や、プリペイド型のICカード等を用いる決済方法(チャージは必要ですが)などの普及が進んであり、普段の生活では現金を使わなくても過ごせるようになってきています。
 
これまでも「財布に現金が入っているとついつい使ってしまう」という理由で、あまり現金を持ち歩かないという人がいました。しかし、財布は無くてもスマートホンを持ち歩かないという人は少ないでしょう。
 
現金を使わずにカードやスマホで決済出来てしまうようになると、手軽に買い物ができてしまいます。
 
クレジットカードや後払い型のICカードなどでは、ひとり一人が支出管理をしておかないと「いくら使ったかわからない」ということにもなりかねず、使いすぎてしまうという恐れがあります。一人ひとりの支出管理がより一層重要になると言えるでしょう。
 
今はこうした決済方法を使っていてももともと現金を使っていたころの記憶があるので、現金をイメージできますが、これから現金を見ない世界が来ると預金の残高はまるでゲームのような仮想世界のお金のように感じてしまうかもしれません。
 

子供のマネー教育も変わる

子供を連れて買い物に出かけ、スーパーやコンビニのレジで現金を支払う親の姿を見て、「こうやって買い物するんだな」「こうしてお金を払ってモノと交換しているんだな」と子供たちは感じ、学んでいました。今後、親がレジでカードやスマホで「ピッ」とタッチするだけでものと交換しているように見えてしまうでしょう。
 
「○○ちゃん、コンビニまで行って牛乳買ってきて」と100円を2枚預けて「おつりをもらうのを忘れないでね」というお遣いを頼んでも、「パパやママはいつもお金を払わないのはなんでだろう」と思ってしまうかもしれません。
 
親の姿を見て学ぶ子供たちへの「マネー教育」も今後変わっていかなければならないと感じます。
 

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子供たちだけではないマネーリテラシーの重要性

マネー教育が必要なのは子供たちだけではありません。大学生でも親に安定した収入があること、未成年の場合は親権者の同意があることなどが条件ではありますが、クレジットカードを持つことができます。社会人になって安定的に収入を得られるようになると、ほとんどだれでもクレジットカードを持つことができます。
 
クレジットカードがなければ、ネットショッピングなどもできず不便です。利用限度額を設定することはできるでしょうが、後払いのクレジットカードで気軽にショッピングができてしまうため、使いすぎてしまうという可能性は否定できません。
 
アルバイトの収入があるから支払えると思っていたが、何らかの理由で支払いが滞ってしまう。どうしてもお金が必要になり、キャッシングしてしまったら返せなくなった、などという理由で多重債務者になってしまうケースもあります。
 
こうしたことにならないよう「マネー教育」は、今後ますます必要性が高まると考えられます。
 

使う決済ツールで自己防衛する方法も

デビットカードというものがあります。日本ではJ-DEBITとして、2000年頃から使われ始めました。銀行口座から直接決済され、リアルタイムに残高に反映されるカードですので、銀行に残高がなければ決済できません。
 
プリペイド型のICカードやスマホ決済は使うたびに残高を確認することになります。これらは、残高の範囲内で利用でき、使いすぎることがなく、支出を管理するのはそう難しいことではありません。
 
しかし、デビットカードの保有率は24%、利用率は12%とあまり普及していないのが現状です。支出管理に不安がある人や、大学生や新社会人が初めて持つカードとしてはクレジットカードよりデビットカードの方が安心感があります。
 
今年の秋にはデビットカードのQRコード決済『Bank Pay(バンクペイ)』のサービス開始も発表されています。こうしたサービスの普及も期待したいところです。
 

投資も身近になってきたが…

前回、ロボアドやスマホ証券の話の中でお伝えした通り、投資も身近になりつつあります。低金利の時代には、預貯金の利息は望めず、何らかの投資を20代から始める人も増えるでしょう。長期投資はきちんと計画的に行えば、将来のための資産形成も有利になります。
 
身近になるということは誰でも気軽に始められる、使うことができるということではあるのですが、危険性も高まります。
 
最近も「簡単に稼げるアルバイト」「低リスクでハイリターンがのぞめる投資」などという詐欺まがいの迷惑メールが来ることがありますが、今後、こうした怪しい投資話も高度化し、「スマホで簡単にできる安全な投資」のような話も増えると考えられます。
 
内閣府で行った『特殊詐欺に関する世論調査』では、「自分は被害にあわないと思う」とする人の割合が8割という結果が出ています。フィンテックにより、お金に関する技術が急速に進歩していく中では、新しい手口の詐欺も現れるでしょう。
 
最近は、詐欺グループの拠点が海外にあったり、国内で海外にいる人を対象にした詐欺グループが検挙されるようになっている通り、インターネットでつながる世界でサービスが進化していく過渡期には、既存の法律が適用できないようなトラブルも起こり得ます。
 
それだけに信用性の低い商品や、機能、投資先、将来性、リスクなどをひとり一人が冷静に判断するより高い能力、リテラシーが求められるようになります。教育はもちろんですが、自分の身を守るための知識を自分で得ようとすることも重要です。
 
<参照>
出展資料「クレジットカードに関する総合調査(2018年度版)」
 
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
 

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