更新日: 2019.12.26 その他暮らし
不動産を売るにはどれくらい期間がかかるの?不動産会社に査定依頼するときの注意点とは
ご自身やご家族がお持ちの大切な資産である不動産を売却しようと考えたとき、どのように考えるべきかについてお伝えします。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
http://www.nishiyama-ld.com/
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
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不動産売却の決断
ご自身やご家族が所有している不動産は、購入するときにもさまざまなこだわりがあったことと思います。ご実家等であれば、かつてそこで幼少期を過ごしたなどの思い出があったり、ご先祖が守ってきた資産であったりします。
購入した不動産は家族構成の変化に伴って広すぎたり、狭すぎたりするようになる。配偶者が亡くなり、ひとりで住むには広すぎるなどの理由で売却、買い替えをお考えになる方もいます。
いずれにしても、不動産を売却するというのは大きな決断でしょう。不動産は保有しているだけでもコストがかかる資産。特に都市部では固定資産税の負担も重くなります。
田舎の土地建物であれば固定資産税などは安いかもしれませんが、いずれにしても長年そのままにしてしまうと内外装や設備も老朽化し、再び使うことは難しくなってきます。
草木が伸びて周辺環境に悪影響をおよぼしたり、空き家になっていることで火災や犯罪の温床になってしまうこともあります。
かといって、人に貸すという選択をする場合には「大家」としての建物管理責任も発生しますし、本当に借りてくれるかどうかわからない場合には、費用をかけて貸すかどうかも悩ましい問題です。
コインパーキングなどとして活用する場合は、建物が不要で初期投資もさほど大きくありませんが、そもそも需要があるかどうかの見極めが肝心です。場所によっては周辺が駐車場だらけで利用率が低くなっているエリアもあります。
日本では空き家が増えていることが社会問題になっています。全国平均では13.55%、7軒に1軒以上が空き家になっているといわれています。住宅地などを歩いていても「この家は空き家だな」とわかる家が少なくありません。
しかし、今日の日本では核家族化が進行し、結婚して家を出た子供たちはみんな持ち家を持っているというケースも少なくありません。使う予定のない不動産であれば、何かしらの活用を検討するか、売却することを考えるべきでしょう。
不動産売却で最初に考えること
不動産を売却するときに最初に考えることは、「いくらくらいで売れるのだろうか」ということではないでしょうか。
現在60歳以上の方の場合、30年ほど前のバブル期に非常に高い価格で購入されているケースもあります。その前から所有されていた場合でも、新聞などに掲載される「公示価格」「基準地価格」などで近隣の不動産の評価額から自分の資産価値を大まかに知り、「売るつもりはないけれどこんなに高いんだ」と感じられたことのある方もいらっしゃいます。
かつての値段のイメージがあるため、不動産屋に査定してもらって「こんな金額にしかならないのか」と肩を落とされる方もいらっしゃいました。
近年の住宅地の価格は比較的安定しています。バブル期には確かに高騰し、当時のサラリーマンは手の届くマイホームを求め、その立地は郊外に広がっていきました。その当時は郊外で数多くの宅地開発が行われ、新幹線通勤を認めた企業もありました。
現在、住宅地の価格は沈静化する一方、マンション価格が高騰しています。まず、どのくらいで売れるのかについて調べることからはじめることになるでしょう。
不動産会社に「査定」を依頼する際の注意
不動産の価格を調べる方法にはどんなものがあるでしょうか。
インターネットで「あなたの不動産の価格査定を複数の不動産会社に一括して依頼できます」というサイトもあります。こうしたサイトに査定を依頼されるのは一つの方法です。
また、「売却不動産を探しています」「あなたのお住まいのエリアで不動産を探している人がいます」などと書かれたチラシが折り込まれていることもあります。
これらを利用して、一つの会社ではなく、複数の会社の査定を受けることでも、想定される売却価格についておおよそつかむことができるでしょう。
ただし、本当にその価格で売れるかどうかは別の問題です。不動産の価格に「定価」はありません。
同じものが二つとない不動産の価格を評価する際には、その場所の用途地域やさまざまな規制、周辺の価格相場や取引事例のほか、その土地の面積や方位、形状、地勢(高低差など)、道路付け、公共交通機関へのアクセスや電気・水道・ガスなどの敷設状況、周辺環境など、あらゆる条件を考慮して価格を査定します。
これだけさまざまな要素を考慮して査定しますので、すべての会社が同じ金額にそろうわけではありません。また、その価格はあくまでも「想定」です。不動産の価格査定は中古車のものと違い、多くの場合、その会社が買い取るわけではありません。
不動産会社との付き合い方
不動産会社は、売主に自分の会社と「媒介契約」を締結していただくことを重視します。そのため「自分の会社が一番高く売れます」と思わせるために、査定では高めの価格を提示されることがほとんどです。
不動産を売却される場合、重要なのは「売却戦略」です。いくらで売りに出すのかはもちろんですが、その不動産の良いところをどのようにアピールし、価値を高く見せるか、といったテクニックも重要です。
査定が高い会社と話を進めるのではなく、こうした売却戦略についてもきちんと立案できる会社を選ぶべきでしょう。
不動産売却にかかる期間
不動産を売却される方の事情もいろいろです。長く空き家になっている不動産の場合には急いで売却しなくても良いでしょう。一方、中にはすぐに現金化したいという事情をお持ちの方もいらっしゃいます。
不動産売却に期間の制限がある場合、価格は低くなりがちです。
特殊な事情がなく、すでに家の中が片付いていて、すぐにでも売れる状態になっている場合でも、売却のための相談を始めてから引き渡しまで少なくとも2、3ヶ月はかかると考えておくべきです。
多くの不動産売却ではそれ以上の期間がかかっています。隣地との境界が確定していないような物件だと、測量や境界確定などを行わなければならないケースもあり、それだけで1ヶ月程度はかかります。
家の中にまだ家財などが残っている場合には、その片付け・処分にかかる期間も必要なばかりでなく、購入希望者が内覧に来た際の印象も悪くなり、価格にも影響しかねません。
まとめ
不動産の売却には準備と戦略が必要です。準備はご自身で進める必要があります。また、戦略の立案には信頼できる不動産屋を選ぶ必要があります。何をどう準備すべきか、相談に乗ってくれる不動産屋もあるでしょう。
多くの不動産屋が自社の中で売主と買主をマッチングする「両手取引」を行っていますが、「両手取引」を前提に考える業者は、「本当に信頼して大丈夫?」と感じます。
大きな金額になる不動産。いろいろな思いの詰まった大切な資産を大切に扱ってくれる不動産屋を探していただきたいと思います。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役