更新日: 2020.01.25 子育て

奨学金破産を防ぐために。押さえておきたい奨学金のきほん

奨学金破産を防ぐために。押さえておきたい奨学金のきほん
「奨学金破産」という言葉をご存じでしょうか。経済的な理由などで卒業後に奨学金を返済できなくなり、自己破産に陥る。そうした事実が、近年盛んに報道されています。
 
そんな中、返還義務のある奨学金を受けることに抵抗を感じる人が増えています。全国大学生協の2018年学生生活実態調査(※1)によれば、将来返済する義務のある奨学金を受けている学生の内、約74%が将来の返済に不安を感じると回答しています。
 
しかし一方で、奨学金制度が、より多くの人に進学の道を提供していることも事実です。そこで、本記事では、奨学金を上手に利用するために、最低限、押さえておきたい奨学金の「きほん」についてご紹介します。
 
酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

進路先にかかる入学金、授業料、学生生活費を算出しよう

奨学金には、返済が不要なタイプ(給付型)と、返済が必要なタイプ(貸与型)があります。
 
もちろん、給付型の奨学金を受けることができればよいのですが、厳しい条件があり、給付型で奨学金を受け取ったとしても総受給金額が授業料をカバーするには十分ではないケースがほとんどです。よって、貸与型の検討もあわせて行う必要があります。
 
まずは、この貸与型の奨学金を必要以上に借りてしまったり、逆に足りなかったりしないように、希望進学先の学費と学生生活費をしっかりと把握しましょう。私立大の理系を例に取ると、日本学生支援機構の調査(※2)によると、初年度に入学金と授業料で平均約150万円、4年間での学費合計は約540万円かかります。
 
課外活動費や通学費などの学生生活費については、自宅通学であれば平均で約60万円/年、下宿やアパートからの通学なら平均約120万円/年かかります(※3)。こうした費用を加えると、大学での4年間の総費用は、自宅通学で約800万円、下宿・アパートなら約1000万円かかる計算です。
 
これ以外にも、進路先によっては、学外での活動費などが高額になる場合もありますので、希望先の進路にいったいいくらかかるのか、事前にしっかり調べましょう。
 

自分に合う奨学金をしっかりリサーチして見つけよう

奨学金を支給している団体は、全国で約5000ヶ所(※4)あります。その中から自分に適した奨学金をもれなく見つけ出すには、下調べが欠かせません。まずは、インターネットや書籍(※5)を使って調べることから始めてみてください。
 
こうした情報源をもとに、希望する学校、および学部に奨学金制度があるのか、あるとしたら、奨学金の支給額や支給期間、給付・貸与別(および併用)や返済までの期間などもしっかりと調べましょう。また、複数の団体の奨学金を併用できる場合もありますので、特定の奨学金制度だけに留まらず、幅広く調べることが大切です。
 
また、奨学金を実際に利用した人や、奨学金制度に詳しい専門家から話を聞いてみるのもよいでしょう。
 
ただし、奨学金制度は年々大きく変わっていることに注意してください。従って、アドバイスを受ける際は、奨学金を受けた時期が比較的最近の人や、奨学金制度の動きをしっかり把握している人からがよいでしょう。
 

奨学金を借りるのは保護者ではなく、学生本人であることを忘れずに

奨学金を受ける前に、学生の方にしっかり理解していただきたいことがあります。それは、奨学金を借りるのは保護者ではなく、学生である本人だということです。
 
そこで、たとえ保護者の方が奨学金の返済資金を準備するとしても、保護者だけでなく奨学金を受ける本人が、奨学金の条件やリスク、そして返済資金が足りなくなった場合の対処方法について、しっかり理解しておくようにしましょう。こうした点を認識しておくだけでも、返済の延滞を防ぐ可能性を高めることができます(※6)。
 

奨学金以外の教育費準備方法も検討しよう

教育費を準備する方法は、奨学金だけではないこともあわせて知っておきたいところです。まずは、2020年4月から始まる政府の高等教育無償化制度。これは、住民税非課税世帯等の学生が、条件を満たせば授業料の減免または減額と、給付型奨学金をあわせて受けることができる制度です。
 
また、大学が入学金や授業料の免除または猶予を独自に行う制度もあります。狭き門ではありますが、少しでも可能性があれば応募してみましょう。そのほか、日本政策金融公庫や民間金融機関の教育ローンもありますが、いずれも返済義務があることに注意してください。
 
奨学金は、上手に使えば学生の将来の可能性を広げてくれます。ぜひ本記事を参考に、準備を進めてみてください。
 
出典
(※1)全国大学生活協同組合連合会「第54回学生生活実態調査の概要報告」
(※2)独立行政法人日本学生支援機構「奨学金ガイドブック2019 P1」
※数値は、入学金+(授業料+施設設備費・その他)×4年間で算出
 
(※3)独立行政法人日本学生支援機構「平成28年度 学生生活調査結果 1-1表 居住形態別・収入平均額および学生生活費の内訳(大学昼間部)P44」
※数値は、支出合計から「授業料」と「その他の学校納付金」を除いたもの
 
(※4)独立行政法人日本学生支援機構「平成28年度奨学事業に関する実態調査」
 
(※5)例えば、インターネットを利用する場合、独立行政法人日本学生支援機構のホームページで条件を指定して検索できます。主な大学や短大はカバーしていますが、一方で企業などの奨学金事業実施団体は、同ホームページに載っていないものもありますので、奨学金について詳しく書かれた書籍等を併用するとよいでしょう。
独立行政法人日本学生支援機構「大学・地方公共団体等が行う奨学金制度」
 
(※6)一例として、独立行政法人日本学生支援機構「平成27年度奨学金の返還者に関する属性調査結果【概要】」によると、減額返還制度(要件を満たせば、一定期間返済額を減額できます。
 
ただし、減額期間に応じて最終返済日は延長するので、総返済額は変わりません)について知っていると回答した者は、延滞者 20.7%に対し、無延滞者 37.1%で、無延滞者の方が 16.4%高いという結果です。
 
執筆者:酒井 乙
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。


 

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