退職前後に必要な「年金、健康保険、雇用保険、税金」の手続き
配信日: 2017.11.08 更新日: 2020.11.07
それは、年金、健康保険、雇用保険、税金の手続きです。これらの手続きは、やるべき期限までに自分で行わないと、受給額が減ったり、資格を失うような場合もあります。
定年や退職時期の半年前ぐらいには、準備をはじめるように心がけましょう。
執筆者:尾上好美(おうえ よしみ)
アルファプランナーズ代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP(R)認定者
2級キャリア・コンサルティング技能士
大学卒業後、IT関連企業で、技術支援、マーケティング職等の業務に約12年間従事した後、子育てを経て、CFP®として独立。現在、ファイナンシャルプランナーとキャリアコンサルタントを兼業し、仕事(キャリア)と資産運用に関する相談業務、講師、執筆を行っている。住宅相談、教育資金に関する相談、リタイアメントプラン、相続など、子育て世代から中高年世代からの個人相談に数多く対応。「後悔のない選択ができた」と感じてもらえるような支援やサービスの提供を志している。
年金の手続きで注意が必要なケース
退職後、受給資格を満たした厚生年金の対象者が年金受給を開始する場合には、誕生日の約3ヶ月前に裁定請求書が日本年金機構から送られてきます。
その手続きは、勤務していた事務所を管轄する年金事務所で行います。また、最後に加入していた年金が共済組合や国民年金の場合には、お住まいの市区町村の年金事務所で行います。
注意しなくてはならないのは、会社員の夫(妻)の扶養配偶者の手続きです。
夫(妻)が退職し再び厚生年金に加入しない働き方を選んだ場合、その扶養に入っていた60歳未満の配偶者は、第3号被保険者から第1号被保険者に切り替える手続きが必要です。
ご自身でお住まいの市区町村役場の国民年金課に行き、夫(妻)の退職日から14日以内に手続きを行わなければなりません。
退職後にどの健康保険に加入するかを考えておこう。
退職後に加入できる健康保険と加入条件は、次の通りです。
(1) 国民健康保険
※ 退職日の翌日から加入できる
(2)任意継続被保険者
※ 退職した日まで健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上ある場合は、退職後2年間まで継続可能
(3)健康保険の扶養家族
※ 年収が180万円(60歳未満は130万円)未満の方
どの健康保険に加入した場合でも、医療費の自己負担割合は3割になります。そのため、支払う保険料や保養施設の充実度などが判断のポイントになります。
配偶者が働いている場合には、保険料だけを比較すると、(3)健康保険の扶養家族 になるのが一番ですが、退職される方が引き続き収入がある場合には、扶養家族としての収入基準※を満たす必要があります。退職後に受ける年金、失業手当、出産手当や障害手当等、一定期間継続的に支払われる金額も、収入として判断されます。
実際には、退職後、給料が全くなくなっても、何かしらの手当を給付する場合が多いので、退職した年には健康保険の扶養家族としての認定が難しい場合が多いようです。
たとえば、退職後、失業手当等を受ける場合、3612円※以上の基本手当日額が支給される間は、扶養家族として健康保険に加入できません。
まずは、検討している健康保険の窓口で、扶養家族の認定資格について、個別に問い合わせてみることをお勧めします。
※被扶養者の加入要件の収入見込み額を日額相当で換算した金額(60歳以上は5,000円未満)
また、(1)国民健康保険の保険料は、居住する市区町村によって異なりますが、前年の世帯所得等が基準になるので、退職した年と翌年の保険料は高額になることがあります。
そのため、実際には、まず、(2)任意継続被保険者を選択し、時期をみて、(1)国民健康保険に切り替えるケースが多いようです。
再就職を考える場合には、雇用保険の手続きをしておこう。
退職後にすぐに働く予定がなく、雇用保険の基本手当を受ける場合には、自分の住所地を管轄するハローワークで手続きを行います。
退職時に会社から受け取っておく必要がある書類は、次のとおりです。
(1)雇用保険被保険者証
※在職中に保険者証の有無を確認しておきましょう。
(2)雇用保険被保険者離職票
※離職票は、退職後10日以内に発行されます。
雇用保険被保険者離職票が届いたら、離職の日までの賃金額に、残業代、諸手当が含まれているか等、確認しておきましょう。
退職後、年金の支給が始まる場合ですが、雇用保険の基本手当と年金は同時には受給できません。定年退職後に支給される基本手当は、最大360日分、一般的に60歳前賃金の約4割程度と言われています。
通常は基本手当の方が高額になるので、そちらを選ぶ方が多いようです。
確定申告など、税金の手続きを知っておこう。
退職後の税金で注意したいのは、住民税です。住民税は、前の年の所得に対してかかる税金をその翌年に支払う仕組みになっているので、退職後に年収がないにもかかわらず現役時代の所得で算出された税額を払わなくてはなりません。
そして、退職後は、所得税の確定申告などの手続きも自分で行うことになります。会社勤めをしていた方にとっては、本来の税額との過不足を精算する年末調整も会社で行っていたので、退職するまで最寄りの税務署の所在を知らなかったという話を聞くことがあります。
わからなことがあれば、税務署の相談コーナーでも丁寧に教えてくれるので、気軽に足を運んでみましょう。
※2017/11/15 内容を一部修正させていただきました。
Text:尾上 好美(おうえ よしみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
2級キャリア・コンサルティング技能士
アルファプランナーズ代表