コロナで家賃が支払えない! そんなときに使える住居確保給付金制度
配信日: 2020.08.20
ただ、生活が苦しくなったときに使える制度は「生活保護だけではない」ことをお伝えしたいと思います。
執筆者:長崎元(ながさき はじめ)
行政書士/特定行政書士
長崎元行政書士事務所 代表
学校を卒業後、IT企業に就職。約15年勤めた後、行政書士として開業。前職で培ったITの技術と知識を活かし、効率的で、お客様にストレスのかからないサービスを提供している。主な取扱業務は、「許可の取得」や「補助金の申請」。
長崎元行政書士事務所 HP
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生活保護者の件数は増加
厚生労働省が7月に公開した、生活保護者の件数を示す「被保護者調査」によると、4月の生活保護申請件数は、前年の4月と比べ24.8%増加し2万1486件となっています。
■生活保護 申請件数(月別)
令和2年1月:1万8660件
令和2年2月:1万6118件
令和2年3月:2万1026件
令和2年4月:2万1486件
3月に2万件を超え、4月も高い数値のままです。時期を考えても、新型コロナウイルスが影響しているとみるのが自然でしょう。収入が減ってしまい、家計がどうしようもなくなって「生活保護を受ける」というのも当然かもしれません。
どうしても苦しくなってしまったときには、我慢せず、ぜひ保護を受けて生活を立て直し、次の一歩につなげてほしいと思います。
住居確保給付金とは?
前段でお話したのは、「生活保護」ですが、生活が苦しいときに、使える国の制度は他にもあります。例えば、今回ぜひご紹介したいのは、住居確保給付金です。
新型コロナウイルス感染症の影響による休業等に伴う収入の減少により、家賃の支払いに困り、住居を失うおそれが生じている際に、家賃相当額が支給されます。給付金は、自治体から、賃貸人や不動産屋に直接支払われます。申請者に現金が渡されたり、口座に振り込まれたりすることはありません。
支給期間は原則3ヶ月間で、2回の延長をすると最大9ヶ月になります。1回あたりの支給額の上限は、お住まいの市区町村ごとに定められています。例えば、横浜市は上限が5万2000円、東京都23区の場合は5万3700円です。これは、1人で生活している場合の金額で、世帯の人数が増えれば上限も上がります。
ただし、給付の対象となるのは家賃のみです。駐車場も一緒に借りている場合、駐車場の賃料は含まれません。あくまでも家賃のみが支援される点には、注意が必要です。また、家賃に関しても住居が対象であり、店舗や事務所と併用している物件の家賃は支援対象外です。
誰が受けられるの?
この制度を利用するには、次の4つの要件をすべて満たさないといけません。
(1) 主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合、もしくは個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合。
(2) 直近の月の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12(以下「基準額」という)と、家賃(ただし上限あり)の合計額を超えていないこと。
(3) 現在の世帯の預貯金合計額が各市区町村で定める額を超えていないこと。
(4) 誠実かつ熱心に求職活動を行うこと。
(2)と(3)の要件について、具体的な数字については、お住まいの地区の自立相談支援機関か、厚生労働省の住居確保給付金相談コールセンターに電話をすると教えてもらえます。その際は、「住居確保給付金の相談がしたい」と伝えてください。
(4)については、自治体ごとに異なりますが、「就労支援を受ける」「ハローワークでの面談を受ける」など、就職に前向きな姿勢が必要になります。
どうやって申請するの?
上表のとおり、申請は、生活困窮者自立相談支援機関に対して行います。お住まいの地域ごとに申請場所が設けられています。申請前に確認や相談をしたい場合も、相談支援機関に対して行うことになります。
また、感染症予防の観点から、横浜市のように“原則郵送申請”としている自治体もあるため、申請方法についてはお住まいの自治体のホームページや電話などで確認すると良いでしょう。
実際に申請を行っても、すぐに給付が開始されるとは限りません。自治体や時期による差異が当然あります。横浜市においては、申請から振込まで1ヶ月から2ヶ月かかると明記されています。他自治体についても同程度の時間がかかると考えておきましょう。
申請時には、必要なものは以下のとおりです。
1.本人確認書類
2.収入が確認できる書類
3.預貯金が確認できる書類
4.離職票や勤務先のシフト表など、勤務日数や勤務時間が確認できるもの
自治体によっては、追加の書類を求められることもあります。2と3の書類は、世帯全員分を用意するのを忘れないようにしましょう。
返済が必要?
住宅確保給付金は「給付」であるため、返済は不要です。住居確保給付金は、生活保護と比べると要件を満たしやすい制度ではありますが、住居の家賃のみが対象であるなど、思ったほどの給付を受けられないと感じるかもしれません。
そうはいっても、生活をしていく以上、お金は絶対に必要です。使える制度は使いましょう。しかし、「働かなくてもお金がもらえる」と、この制度に甘えるのは禁物です。この給付金は永遠に支援がされる制度ではないのです。給付金をうまく利用して生活を立て直し、自立した生活を送れるように、計画的な利用を考えたいものです。
執筆者:長崎元
行政書士/特定行政書士
長崎元行政書士事務所 代表