休業で報酬が下がった場合、翌月から標準報酬月額(健康保険・厚生年金)が改定可能に?
配信日: 2020.09.14
今回は、標準報酬月額改定の特例制度について解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
標準報酬月額の特例改定とは?
厚生年金や健康保険の加入者が毎月支払う社会保険料は通常、4月から6月の給与を平均して標準報酬月額を定め、それに応じて社会保険料が算出されます(原則として同年9月から適用)。標準報酬月額は昇給や休業などで給与の変動があれば、都度改定することができます。
ただし、すぐに改定されるわけではなく、給与が減少してから4ヶ月目のタイミングで改定されます。
例えば、4月に給与が下がった場合、7月に標準報酬月額が改定されて社会保険料が下がるということになります。しかし、休業などで給与が下がった場合、その間の社会保険料が重くのしかかり、生活に支障をきたす可能性もあります。
そこで、新型コロナウイルス感染症の影響による休業などで給与が減少した翌月には標準報酬月額が改定させられるよう、特例改定が可能になったのです。
標準報酬月額の特例改定の対象となるのはどんな人?
標準報酬月額の特例改定の対象となる人は次の条件に合致する人です。
・新型コロナウイルス感染症の影響による休業で、2020(令和2)年4月から7月までの間に給与が著しく低下した
・低下した後の給与額に該当する標準報酬月額が現在に比べて2等級以上下がった
・標準報酬月額が特例により改定されることに同意している
標準報酬月額の特例改定が適用される期間はいつまで?
標準報酬月額の特例改定が適用されて保険料が減額されるのは2020(令和2)年5月分から8月分までの間です。
もし、仮に上記の期間より遅れて申請することになっても、2021(令和3)年1月末までであれば遡って適用させることが可能です。
標準報酬月額の特例改定手続きは誰が行うの?
標準報酬月額の特例改定に必要な手続きは事業主が行います。そのため、自身で行う手続きは基本的にはありません。
標準報酬月額が変わることでメリットとデメリットはあるの?
標準報酬月額の特例改定による最大のメリットは、収入に応じてすぐに社会保険料が変化し、生活への影響を最小限にすることができることです。一方、支払う社会保険料が少なくなることで、将来受け取れる給付の額が少なくなるというデメリットもあります。
具体的には、将来受け取れる年金額や傷病手当金、出産手当金などが該当します。少しでも将来に備えておきたいという場合、この点も確認しておくことが大切です。
休業によって給与が下がったら標準報酬月額の確認を
新型コロナウイルス感染症の影響により、勤務先が休業して給与が著しく低下した場合、標準報酬月額の特例改定を申請する手続きよって一時的に標準報酬月額を下げ、社会保険料を抑えることができます。
しかし、支払う社会保険料の額が少なくなることで、将来受け取れる給付が少なくなるというデメリットもあります。
標準報酬月額の特例改定の手続きは事業主が行いますが、あくまでも本人の同意があって行われる手続きです。少しでも将来に備えるため、特例の適用を受けたくないという場合は、その旨事業主に説明するようにしてください。
[出典]日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内」
執筆者:柘植輝
行政書士