更新日: 2020.10.18 その他暮らし

2個買うと、もう1個がタダでもらえる! 「2BUY 1GET」は、おトクなの?

2個買うと、もう1個がタダでもらえる! 「2BUY 1GET」は、おトクなの?
コロナ禍の影響もあって、ネットショップの利用が増えているようです。お店側も顧客獲得や販売増大のためにいろいろなキャッチフレーズでアピールをしていますが、ときどき見かけるのが「2BUY 1GET」のセール。
 
つまり「2個買うと、もう1個タダでおまけします」ということですが、これっておトクなのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

 

お店の立場から見ると

「2BUY 1GET」は、「BUY2 GET1 FREE」とか「3 FOR 2」などと表示されたりもしますが、要は2個分の価格で3個が手に入るのです。その派生で「1BUY 1GET」や「3BUY 1GET」、あるいは「BUY2 GET1 50%OFF」(2個買うと、もう1個を半額におまけ)などパターンはたくさんありえます。
 
以下では「2BUY 1GET」について、1個の定価が2000円の商品で考えてみましょう。まず、お店(売り手)の立場から見ると、「4000円で3個売れる」のです。「定価から33.3%の割引をする代わりに一気に3個売れる」とも表現できます。
 
そして、この商品の原価(仕入価格)がいくらなのかによって、お店の粗利益(売上-原価)の額は結構変わります。なお、定価で2個売れた場合も売上は同じ4000円です。その場合の収支も合わせて試算してみたのが【図表1】です。
 


 
こうした割引セールは、定価で売れたときに比べて原価が高いと粗利益の額も率も当然大きく下がります。しかし、原価が安い場合には【図表1】の(3)と(ウ)のようにその差はかなり縮まります。
 
この手のセールは、ネットショップだけではなく実店舗の店先でも見かけます。対象商品は小物もありますが、例えば靴や服など季節性や流行性があって、しかもかさばるものが多いようです。
 
また、人気商品や保存がきいて流行性のない日用品などでは、こうした売り方は少ないと思われます。売り手としては、保管コストがかさむような在庫品を早く処分できて、しかも一つひとつを割引販売するよりも処分のスピードアップが期待できるなどのメリットがあります。
 
もちろん「損切り」につながりますが、先述のように原価が安い商品ならば、定価販売に比べて粗利益の額も率も意外と見劣りしないことだってあるのです。
 

お客の立場から見ると

それでは、お客(買い手)の立場から見るとどうでしょうか。「4000円で3個買える」、あるいは「定価から33.3%割引してもらう代わりに3個まとめて買う」ことになります。
 
モノの価格(総額)は【数量×単価】で構成されますが、【図表2】のような4つのケースを考えてみましょう(1円未満は切り捨て表示)。
 


 
例えば、同じような商品群の中からデザインや色柄などの違うものが選べたり、同一商品でもスペアとして確保しておきたい動機があるなど、3個あってもかまわないのであれば(C)の買い方は納得感があってしかもおトクです。
 
一方、この商品が取りあえず1個しか必要ではないとすると、(A)の買い方が基本形です。もしも(D)の形で販売されていればおトクに入手できることになりますが、早く大量に処分したい売り手がそうした売り方をしているとは限りません。
 
(C)の買い方によって単価はかなり下がったとしても、仮に1個しか使わずに残り2個はクローゼットや物置にしまいっぱなしだったらどうでしょうか。使っている1個のために4000円投じたことになります。
 
1個を定価で買った場合よりも総額・単価とも2倍につく高い買い物なのです。2個使う場合でも、定価で2個買ったのと違いはありません。
 

「フレーミング効果」とは? そしてまとめ

「2個買うと、もう1個タダでおまけします」は、「定価から33.3%割引します。ただし、3個買わないと割引対象外です」ともいい換えることができます。2つのフレーズがいっている内容はまったく同じですが、前者はとても好意的で前向きな印象なのに対して、後者には少しトゲも感じられます。
 
前者のフレーズならば買うけれど、後者だったら買わない判断をすることもあるでしょう。このように、論理的には同じことなのに表現によって受け取り方や判断が違ってくる現象を、行動経済学で「フレーミング効果」と呼びます。
 
上記の前者では「タダでおまけ」という枠(フレーム)に関心が集中する一方、後者では「(条件を満たさないと)割引対象外」がフォーカスされて、異なる判断になりえるのです。
 
結局のところ、その商品がその個数だけ本当に必要なのかどうか、買う前に冷静に考えてみることに尽きます。結果的に「3個も買えた」のであればよいのですが、「3個も買わされてしまった」ことにならないよう注意が必要です。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
 

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