離婚の話し合いが進まず、離婚調停へ…どんな費用がかかるの?
配信日: 2020.10.28
実際に弁護士としてクライアントへアドバイスをする場合は、事案に合わせてテクニカルな助言を加えることも多々あるのですが、本項ではそうした技術的な細かいことは抜きにして、費用の点を中心とした手続き的なこと一般論をご説明します。
執筆者:佐々木達憲(ささき たつのり)
京都市役所前法律事務所弁護士
相続・事業承継を中心とした企業支援と交通事故が主要対応領域。弁護士としての法律相談への対応だけでなく、個人投資家兼FPとして、特に米国株投資を中心とした資産運用に関するアドバイスもご提供。京都を中心する関西圏に加え、毎月沖縄へも通っており、沖縄特有の案件も数多く手掛けている。
調停とは何か
離婚調停とは、家庭裁判所を活用した、離婚のための話し合いの場です。調停の当日は家庭裁判所に任命された男女1名ずつ計2名の調停委員という立場の人物に間に入ってもらい、その人たちを通じて話し合いをすることとなります。
夫婦のうちどちらかが調停委員と話している最中、夫婦のうちもう片側は別室で待機して、自分の話を聴いてくれる順番が来るのを待ちます。そして片側がひととおり調停委員へ言い分を伝えたら、調停委員は待機していたもう片側へその内容を伝えつつ、今度はその人の言い分等を聴きます。こうしたことを繰り返すのが、調停です。
日本の法律では、離婚をしたい夫婦間でいきなり離婚の「裁判(訴訟)」を起こすことはできません。必ず、まずは調停の申立てをしなければならないというシステムとなっています。調停で話し合いを続けたけれどもどうしても結論がまとまらない、という場合に初めて裁判を起こす権利が与えられます。
よって、離婚のために裁判所の手続きを使う夫婦は、調停申立てを避けては通れないものであり、その費用についてもあらかじめ知っておく必要があります。
申立てにかかる費用
(1)裁判所へ納める費用
まず、離婚調停を起こすための機関は、「家庭裁判所」です。「地方裁判所」や「簡易裁判所」ではないですのでご注意ください。離婚調停を起こすことを、離婚調停の「申立て」と言います。申立てをするには家庭裁判へ「申立書」を提出することが必要です。
申立てをするにあたっては、裁判所へ手数料として1200円を納める必要があり、申立書に1200円分の収入印紙を貼り付ける方法で納めることとなります。同時に、裁判所から切手(「予納郵券」と呼ばれます)を、おおむね800円程度納めることも指示されます。
これは、裁判所から調停の相手へ送付する郵便物等を送る送料として使われます。調停を申立てた人が提出する申立書は裁判所から相手へ送られるのですが、この時の郵送費用も上記予納郵券から捻出されます。調停申立て後に郵送の回数が多くなり、切手が足りなくなった場合には、追加で裁判所へ切手を預けるように指示されることもあります。
詳細の説明は省きますが、離婚調停(夫婦関係調整調停)だけでなく、婚姻費用分担請求調停や面会交流調停等、他の調停も起こす場合にはそれらについても同様の費用が必要です。
(2)付随的な費用
調停の申立書を提出する際には、「戸籍謄本」も裁判所へ提出する必要があります。これを役所等で取得するのに、1通450円が必要です。また、調停の内容によっては「住民票」や「所得証明」等の提出を求められることもあり、その場合はそれらの取得費用も発生します。
調停を申立てた以降の費用
裁判所へ提出する書面の印刷代や、その郵送料等が発生します。また、住んでいる場所等によっては調停当日に裁判所へ行くのに交通費がかかることもあります。調停が1回で終わらず、複数回執り行われる場合、当然のことながらその都度交通費が発生します。
なお、別居している夫婦の場合、調停を申立てた側ではなく、申立てられた側の住所地の家庭裁判所にて調停が行われるのが原則となっていますので、注意が必要です。
調停がまとまり離婚が成立することとなった場合、その調停の内容について裁判所が正式に発行する文書(「調書」と言います)の発行や送付に関する費用も発生します。
意外に安い? 離婚調停申立ての費用
離婚調停をするには、何十万円も必要となる、というイメージを持たれることが、よくあります。そうしたイメージに比べて、上述した一連の費用を見ると、意外に安いと思った方もおられるのではないでしょうか。
実は、上記はすべて、離婚調停をする場合には必ず発生する「実費」について記載しています。代理人として弁護士がついている場合・ついていない場合にかかわらず生じる費用のことです。
弁護士へ依頼をする場合にはその弁護士への着手金・報酬・日当が必要で(金額等は個々の弁護士あるいは個々の依頼内容によって異なります)、何十万円という費用が発生し得るのは、この「弁護士費用」ということになります。
もっとも、調停を申立てる人・申立てられた人それぞれが代理人弁護士への依頼をする・しないは自由となっていて、弁護士への依頼が義務付けられているものではありません。
執筆者:佐々木達憲
京都市役所前法律事務所弁護士