更新日: 2020.11.10 その他暮らし

コロナ禍の影響?特殊詐欺被害が急増…高報酬の闇バイトで詐欺に加担してしまう若者たち

執筆者 : 黒澤佳子

コロナ禍の影響?特殊詐欺被害が急増…高報酬の闇バイトで詐欺に加担してしまう若者たち
ガスの点検を装い強盗に入り、現金やキャッシュカードを奪って逃げるという事件が相次ぎました。いずれも被害者は高齢者で、ひとり暮らしの方が大半でした。
 
事前にガス会社を名乗る電話がきて(アポ電)、何の疑いもなくドアをあけると、豹変した犯人が入ってきて、粘着テープ等で被害者の手足を縛り、現金やキャッシュカードを奪って逃げるという手口です。
 
なぜ縛るかというと、「キャッシュカードの暗証番号を聞き出すため」だそうです。被害者は「殺されるかと思った」と恐怖の体験を語っていました。
 
命とお金を天秤にかけたら、誰もが命をとる心情を利用した卑劣な手口です。このような事件の背景には、組織的な犯罪である可能性と、簡単に「裏バイト」に手を染めてしまう若者の事情があります。
黒澤佳子

執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

お金を取られる被害者だけじゃない、実行犯もだまされている?!

コロナ前は、現金を振り込ませる事件、いわゆる「振り込め詐欺」が横行していました。注意喚起を呼び掛けているにもかかわらず、手口がどんどん巧妙になり、「かけ子」「受け子」「出し子」を巧みに操る元締めがなかなか捕まらず、被害額は一向に少なくならない状況でした。
 
だます側にとって、コロナ禍はまさにビッグチャンス。良心につけこみ、また人々の不安な心情をついて、さらに上手(うわて)になっている気がします。外出を控える、マスクを外せない、人とのコミュニケーションは電話かインターネットという「新しい生活様式」に、一番先に対応したのが詐欺集団なのかもしれません。
 
これまでの「振り込め詐欺」でも、「かけ子」「受け子」「出し子」は元締めを知らず、多くは詐欺とも知らずに、軽いバイト感覚で詐欺に加担し、実行犯として逮捕されていました。「高額バイト」のハッシュタグで情報を得て、連絡は全部ネット、こちらから身分証を出すことはあっても、相手は自分の身分は明かしません。
 
そもそもその連絡相手も下っ端で、もっと上の人や組織がバックにいることもあるでしょう。今回のガス点検を装った強盗でも、逮捕された実行犯はネットでバイトを引き受けています。「怪しい」と思いつつも、一度受けて行動に移してしまうと、後戻りができない仕組みになっていることが多いようです。
 
「今日が実行日」と言われても、途中で待たされることも多く、その待機期間が長ければ長いほど「やらなければ」という思いにさいなまれます。そして「チャンスがやってきた、なんとしても成功させなければ!」と前のめりになり、そこで意外と簡単に成功してしまうと、その成功体験から抜け出せなくなります。
 
実行犯もマインドコントロールされているのです。

絶対に手を出してはいけない雇い主不明の闇バイト

新型コロナウイルス感染に便乗した詐欺事件の被害額は、ほんの数カ月で8000万円以上にのぼっており、そのうち電話やメールを使った特殊詐欺は7000万円以上になっています(警察庁ウェブページ)。この裏には、明るみに出ていない事件も多数あることでしょう。
 
以前、詐欺という認識がないまま、高齢者から受け取ったのが現金とは知らずに、結果として「受け子」をした高校生が逮捕され、実刑判決を受けたときはニュースになりました。たとえ初犯であっても、未来ある若者であったとしても、厳罰化の傾向があるのは間違いありません。
 
「ちょっとだけなら」「バレなければ」「あの人に比べたら自分は軽い」などと言い訳をしたり、ほんの少しの気の迷いで、その後の人生を棒にふることになります。捕まりそうになったとき、闇バイトの雇い主はまず助けてはくれません。逆に連絡をとっていた証拠を消され、見捨てられるだけです。
 
犠牲になるのは実行犯だけ、という構図を、初めから想定しています。逮捕され、拘留された時点で、学校や周囲に知れ渡ってしまうだけでなく、詐欺罪には実刑しかありませんので、実刑判決を受けたり、損害賠償請求されたりすると、詐欺で儲けた何倍もの代償が一生付きまとうことになります。
 
自分だけでなく、家族も巻き込み、ずっとついてまわる暗い過去、“黒歴史”どころではありません。
 
今は正規のバイトもネットで探す若者がほとんどの時代です。しかもこのコロナ禍で、バイトや働き口が少なくなり、また自由に動くことさえできない自粛生活を余儀なくされ、誰もが閉鎖的になる環境の中で、わらをもすがる若者を巧みに操っているのです。
 
雇い主がわからないようなバイトは、たとえ知人の紹介であっても、絶対にやってはいけません。そんな詐欺集団を絶対に見逃すことはできません。ですが、まず自分の身は自分で守ること! 高額な報酬の裏には何かあると疑ってかかりましょう。
 
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士

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