変化する特殊詐欺の手口、どう対策をすればよい?多発している2つの手口とは
配信日: 2020.11.18
最近では現金等を脅(おど)し取る「恐喝」や、隙を見てキャッシュカード等を盗む「窃盗」も行われるようになり、巧妙化や凶悪化も進んでいます。詐欺から身を守る方法を、真剣に考える必要があります。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
特殊詐欺の傾向と手口の変化とは?
警察庁の広報資料(令和元年)によると、特殊詐欺の被害総額は315億8000万円です。被害の認知件数は1万6851件で、主に大都市圏に集中しており、5都府県(東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県)の全体に占める割合は67.0%です。
平成29年は被害者の親族を名乗るケースが半数以上を占めていましたが、令和元年は警察官、銀行協会職員、税務署職員、大手百貨店店員等の親族以外を名乗るケースが65.2%に増加しています。
特殊詐欺の中ではオレオレ詐欺が一般的ですが、公的機関を名乗るなど最近では詐欺グループの手口も変化しており、他人を簡単に信用してはいけない時代となっています。制服や身分証明書などまで偽造してなりすますケースもあり、手口も巧妙になっています。
また、銀行職員や税務署職員などを名乗り、資産状況や家族構成などをあらかじめ調査する電話をかけてきて、その後その人の自宅を訪問して金銭などを強奪するケースも増えていることから、凶悪化も進んでいます。
特殊詐欺2大多発手口とは?
令和2年1月1日から、警察庁では特殊詐欺の手口を下記のように分類しています。従来のオレオレ詐欺が最も被害総額も発生件数も多いですが、その他にも最近の2大多発手口は以下のものがあります。
還付金等詐欺
1.市区町村役場や税務署の職員等を名乗る。
2.「医療費、税金、保険料等の還付金があるので手続きしてください」
などと言って、ATMへ行くよう誘導する。
3.ATMへ着いたら、携帯電話から詐欺グループの指定した連絡先に電話をさせ、ATMの操作方法を電話で指示する。
4.詐欺グループの指示どおりに操作をすると、還付金を受け取るためにATMの操作をしたつもりが、実は逆に自分の口座から犯人の口座に送金させられる。
キャッシュカード詐欺盗(窃盗)
1.警察官、銀行協会や大手百貨店等の職員を名乗る。
2.「キャッシュカードが不正に利用されているので使えないようにする」
などと言って、その後自宅を訪問する。
3.現在のキャッシュカードを保護するという名目で、封筒に暗証番号を書いた紙とキャッシュカードを入れさせる。
4.封印の印鑑を取りに行っているなどの隙を見て、キャッシュカード等をすり替えて盗み取る。
5.盗み取られたカードから暗証番号を使って現金を引き出される。
被害にあわないための対策は?
■すぐに電話に出ない
詐欺グループが近づいてくる手段は、まずは電話が圧倒的に多数です。留守録設定にしておいて、相手を確認してから応答するようにするとよいでしょう。
■「こちらから折り返し電話をします」と言って相手の連絡先を聞く
もし電話に出てしまい、お金やキャッシュカードの話になったら、折り返し電話をすると言っていったん電話を切ります。相手が親族を名乗っていれば、本人から伝えられた自分の知っている本来の番号に電話をして確認します。もしわからなければ、その人の家族へ電話してもよいでしょう。
相手が公的機関を名乗る場合は、先方の連絡先、役職、名前をたずねてみます。
警察官ならどこの警察署なのか、税務署ならどこの税務署なのか、大手百貨店や市区町村役場の職員なら、どこの部署に在籍しているか、詳しく聞いて「折り返し電話します」と言います。たいてい、そこまで詳しく聞かれると、折り返し電話をされても不都合なため、その時点で先方から電話を切ります。
市区町村役場の職員を装っていた場合は、本来の番号を調べて連絡をして確認してもよいでしょう。
■「電話でお金が返ってくることはない」と肝に銘じる
還付金や返還金などがある場合のほとんどは、文書での申請が必要です。電話などの容易な方法だけでは、受け取ることができないと思っていてもよいでしょう。
■キャッシュカード(クレジットカード)の暗証番号は絶対に誰にも教えない
銀行の職員であっても、暗証番号をたずねることは絶対にありません。誰かに聞かれても答えてはいけません。
■親族を名乗られたら、その人と自分しか知らない質問を投げかける
その人の親、子、兄弟などの名前、年齢、居住地、現在の消息などや、過去に一緒に行った場所の名前、時期、目的など、その人と自分にしかわからない情報を聞き出します。正しい情報が返ってくれば本人と確認ができるでしょう。
まとめ
詐欺も年々進化をしているため、絶えず新手の手法で攻め寄ってくる可能性があります。特に高齢者などは、これまでのパターンを学習して備えても、新手の攻めには対応しきれない場合があるかもしれません。
そのため「最初から詐欺グループに接触されないこと」に尽きると思われます。それには「留守電に録音された人以外の電話には決して出ないこと」です。詐欺グループの最初のコンタクトを避けられれば、被害を未然に防ぐことができます。
留守電にしておくことは失礼ではありません。もし家族に高齢者がいたら、まずはそれを伝えてあげてください。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士