住宅ローンの控除額1%が見直されるかもしれない。住宅購入の予定のある人は急いだほうがいいか?
配信日: 2021.03.22
ところが、その住宅ローン控除の内容が来年度(2022年度)の税制改正で見直される動きがあります。「見直し」とは、具体的に何か、また、どのように見直されるのでしょうか。この記事ではその点について解説してみたいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
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住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、住宅を取得するために返済期間10年以上の住宅ローンを借り入れた場合、取得時期・入居時期に関する一定の条件を満たせば、年末のローン残高の1%が10~13年間税額控除される制度です。
少し前の話になりますが、2019年度税制改正の消費税引き上げにより住宅需要が減少することをカバーするため、住宅ローン控除の控除期間が10年から13年に延長されました。これは、消費税10%で住宅を購入し、契約時期・入居時期などに関する一定の条件を満たす人に対する優遇措置といえます。
この優遇措置は時限立法でしたが、2021年度の税制改正では、コロナ禍による景気減退を下支えする目的で、次のとおり、契約時期が1年、入居時期が2年延長されました。
契約時期:新築 2021年9月30日まで
建売・増改築等 2021年11月30日まで
入居時期:2022年12月31日まで
こう述べると、住宅ローン控除の条件改善や期限の延長など、住宅購入者にとってはいいことずくめのように思われます。
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実質的にマイナス金利になるという批判
しかし、その制度が2022年度以降存続するかが疑問視されています。その理由は、国の税金の使い道をチェックする機関である会計検査院が、住宅ローン控除で住宅ローンの年末残高の1%を控除すると、住宅ローンが実質マイナス金利になっていることを問題視しているからです。
現状、住宅ローンを変動金利で借り入れると、年利0.4%程度での借り入れが可能なので、1%相当分の税額控除を適用すると、年利マイナス0.6%の逆ザヤになってしまうとの指摘です。
会計検査院の調査では、2017年から住宅ローン控除を開始した人のうち80%が逆ザヤになっているとのことでした。逆ザヤになるため、ローンを組む必要のない人がローンを組んだり、繰上返済をする余力のある人が繰上返済をしなくなるという点も指摘されています。
これを受け、令和3年度(2021年度)税制改正大綱(抄録)(以下、「大綱抄録」とする)では、「住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直すものとする。」とはっきり書かれています。
どのように見直すかについては、大綱抄録にあるように、控除率を1%または実際に支払っている利率のどちらか小さい方と規定すれば、最大でもゼロ金利になるので、逆ザヤを求めてあえてローンを借り入れるような現象は起こらなくなります。
すなわち、令和4年度(2022年度)の税制改正では、住宅ローン年末残高の1%の控除の見直しの可能性が高いといえます。従って、住宅ローン減税を活用するのであれば、2021年中に住宅ローンの借り入れを済ませておく必要があるというわけです。
重要なので、以下に大綱抄録の対象箇所を掲載します。
「令和3年度税制改正大綱(抄録) (令和2年12月10日 自由民主党・公明党)」から引用
「なお、平成30年度決算検査報告において、住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れているケースが多く、その場合、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回っていること、適用実態等からみて国民の納得できる必要最小限のものになっているかなどの検討が望まれること等の指摘がなされている。消費税率8%への引上げ時に反動減対策として拡充した措置の適用期限後の取扱いの検討に当たっては、こうした会計検査院の指摘を踏まえ、住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直すものとする。」
まとめ
低金利時代にふさわしい控除率にすべきであるというのは正論ですが、すでにその恩恵を受けている人に対してまで見直しがさかのぼって適用されることはまずないと考えられます。
そうであれば、住宅購入の予定がある方は、新築なら2021年9月30日までに、建売・増改築なら 2021年11月30日までに契約を済ませて、マイナス金利の恩恵を受けることを考えた方がいいのかもしれません。
出典
税務研究会 [全文公開] 重要資料 令和3年度税制改正大綱(抄録) (令和2年12月10日 自由民主党・公明党)
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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