更新日: 2021.04.17 住宅ローン
住宅ローン控除改正で、どんな人が得をする?
この度の改正内容の説明も含め、解説していきたいと思います。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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目次
改正前の住宅ローン控除の適用要件とは?
今回の改正点を述べる前に、改正前の住宅ローン控除の適用要件についておさらいしておきましょう。改正前において住宅ローン控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要がありました。
1.新築または取得の日から6ヶ月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
2.この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3000万円以下であること
3.新築または取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分がもっぱら自己の居住の用に供するものであること
4.住宅ローンの返済期間が10年以上あること
5.居住した年を含めた前後2年間に、居住用財産の譲渡で長期譲渡所得の課税特例を受けていないこと
など。
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住宅ローン控除の改正点
今回の改正における住宅ローンの改正点については以下のとおりです。
■住宅ローン控除適用期間13年の特例の延長
住宅ローン控除適用期間は、従前の内容では2020年12月までに入居した人が対象となっていましたが、この度の改正によって延長が決定し、「2022年12月末まで」の入居者が対象となります。
■対象物件の床面積基準の縮小
これまで住宅ローン控除の適用を受けるためには、「新築または取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分がもっぱら自己の居住の用に供するものであること」が要件となっていましたが、この度の改正により、要件とされる床面積が「40平方メートル以上」に変更されました。
改正によって得する人とは?
では、この度の改正によって得する人とはどのような人なのでしょうか。
■住宅購入の契約や入居が間に合わなかった人
前回の改正では、2019年に行われた消費税増税の影響を緩和することを目的とし、消費税10%適用の住宅を購入して2020年末までに居住した場合に、減税される期間が13年間に延長されました。また、新型コロナの感染拡大の影響により入居が遅れたケースでは、特例として2021年末までの入居までを延長の対象とするとしています。
今回の改正では、落ち込んだ経済の回復を目的として、一定期間に契約を終え2022年末までに入居すれば住宅ローン減税特例の対象とされたことから、適用要件が広がったことになります。
■単身や少人数の世帯
これまで住宅ローン控除の適用を受ける要件として、床面積が50平方メートル以上であったことから、単身世帯や少人数世帯では要件を満たせず、住宅ローン控除の適用を受けることができないというケースが見られました。
しかし、今回の改正により、床面積の要件が40平方メートル以上と緩和されたことにより、これまで適用とならなかった世帯の方も対象となる可能性があります。
2021年度、住宅ローン控除の改正に伴う注意点
この度の住宅ローン控除の改正により、以下の点に注意する必要があります。
■契約期間および入居時期に注意
入居期間が2022年12月末までに延長されましたが、契約期間については注文住宅の場合は2021年9月末まで、分譲マンションおよび中古住宅の場合は契約期限が2021年11月末までとなっていますので、注意が必要です。
今回の改正では期間が延長されましたが、今後も同じように延期される保証はありません。期日を過ぎると適用を受けることはできないと考え、早めに行動することが大切です。
■床面積40平方メートルの場合の要件
住宅ローン控除の適用対象となる床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合、所得の要件が50平方メートルの場合と異なります。
50平方メートル以上の場合はこれまでどおり、控除を受ける年の年間合計所得が3000万円以下であることが要件となっていますが、40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、その年の年間合計所得が1000万円未満であることが要件となっています。
その年の年間合計所得ですので、仮に購入時に1000万円以上の所得があったとしても、適用を受ける年の合計所得が1000万円以下であれば適用を受けることが可能です。
控除額の計算方法については変更なし
今回の改正においては、「期間の延長」と、対象となる「床面積条件緩和」がポイントとなっており、住宅ローン控除適用期間における控除額の計算方法に変更はありません。今後も、10年目までは年末のローン残高の1%で限度額である40万円にも変わりはありません。
11年目から13年目までの控除額の計算については、年末の住宅ローン残高の1%(上限40万円)、または税抜住宅価格の2%÷3のいずれか小さい金額となります。
2022年の改正の動きに注意!
2021年度の税制改正においては、「住宅ローン減税の控除率である1%という数値が妥当かどうか」という議論が行われ、その点については2022年度の税制改正によって見直す予定とされています。
もしも見直しが行われ、控除率については一律1%とするのではなく、支払利息を限度とするような内容となった場合、今回の改正によって延長した住宅ローン控除の適用期間内で1%の控除が受けられるのは2021年までとなってしまいます。
まとめ
借入残高にもよりますが、住宅ローン控除は税額控除ということもあり、大きな減税効果をもたらしてくれる制度です。とはいえ、控除を受けられる期間が限られていることはきちんと認識しておきましょう。
特に新型コロナウイルス感染症拡大によって働き方も変わり、今後の収入も増えないばかりか減少する可能性も否定できません。住宅ローン控除の適用後における、家計の収支の変化には注意が必要です。それまで控除されていた税金を負担することになれば、収入が変わらないのであれば支出が増えることになります。
また、収入減によって所得税さらに住民税からも控除しきれない、つまり住宅ローン控除の恩恵を最大限受けることができない状態も予想されます。
そうなった際、毎月の返済に困ることのないように、住宅ローン控除の適用を受けて還付もしくは減額された金額は、将来のために使わずに貯めておくか、その一部を運用にまわすなど、効率的に利用することも考えておきましょう。
今回の改正により、新築および中古住宅の駆け込み需要が予想されていますが、「慌てて購入したものの予想していた控除額の適用が受けられなかった」ということにならないように、住宅の購入は今後の税制改正の動きを見ながら慎重に進めていくようにしてください。
執筆者:新井智美
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