今回は、住宅ローンの残高がまだ残っている自宅を売却する際の注意点などについて確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
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住みながら売るか? 空き家で売るか?
自宅の買い替えのパターンには大まかに、先に現在の自宅を売却して、その後に新居を購入する、いわゆる「売り先行」と、先に新居を購入し、その後に自宅を売却する「買い先行」の2種類の方法があります。
買い替えの際、現在の自宅にローンの残高が残っている場合には、原則は自宅を売却して引き渡した段階で入ってくる売買代金でローンの残債を一括返済することになります。「売り先行」の場合には、ローンの残債を一括返済した後で新居の購入時に新たに住宅ローンを組むため、二重ローンとなる心配は少ないといえます。
ただし注意点としては、自宅を売却して新居を購入するまでの間の住まいをどうするかを考えなくてはなりません。
実家に一時的に転居する、賃貸物件に引っ越すなどさまざまなケースがあります。当然、その間に必要となる家賃などの費用負担も考慮する必要があるでしょう。また、自宅に住みながらの売却となるため、購入希望者などへの内覧対応が必要となる場合もあります。
逆に「買い先行」では、現在のローンが残っている状態で新居の住宅ローンを新たに組んだ場合、二重ローンとなることが想定されます。二重ローンの負担に耐え得る経済的な余裕がある方は別として、通常はできる限り二重ローンの状態を避けるべきでしょう。
買い先行のメリットとしては、自宅を「空き家」の状態にして売却できるため、内覧などの対応も不動産会社に任せられることが挙げられます。また、既に新居が確保されているため、あまり焦ることなく、じっくりと好きな時期に売却することができます。
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アンダーローン or オーバーローン?
いざ自宅を売却する際には、残っているローンの残高と売却額とを比較することなります。このときに売却額がローン残高を上回る状態を「アンダーローン」といいます。アンダーローンの場合には特に問題は無く、売買代金でローンの残債を一括返済することができます。
逆に、ローン残高が売却額を上回る状態を「オーバーローン」といいますが、この場合には不足している差額部分について、何かしら別の方法で返済しなくてはなりません。
オーバーローンの対処方法として、まずはご自身の預貯金などで返済する方法が最優先となるでしょう。また、親族などからの借り入れや贈与などの支援を受けることができる場合もあるでしょう。
さらに、新居の住宅ローンに残った差額部分の残債を含める「住み替えローン」を利用することも方法の1つです。「住み替えローン」が利用できるか否かについては、金融機関によって異なりますので、事前に確認しておく必要があります。いずれにしろ、ローンが残っている自宅を売却する際には、ここまでは最低限考慮しておく必要があるでしょう。
オーバーローンでも使える特例
原則、自宅(居住用財産)の売却は、譲渡所得として分離課税となるため、たとえ損失(オーバーローンなど)が生じても、給与所得などの他の所得と相殺(損益通算)することはできません。しかし、一定の条件を満たすと「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を適用することができます。
例えば、会社員が自宅を売却してオーバーローンの損失が△300万円発生した場合、給与所得+700万円と損益通算することができ、確定申告することで既に支払った所得税などの税金の還付を受けることができます。
さらに、控除しきれなかった場合には、翌年以降3年間にわたって繰越控除することができます。特例の適用可否については国税庁のホームページなどでご確認ください。
まとめ
このほかにも自宅を売却する際の注意点としては、抵当権が設定されている場合の抹消登記の件や売却の際にかかる費用負担などについても考慮しておく必要があります。
不動産会社に売却の仲介を委託した場合には仲介手数料がかかりますし、抵当権抹消登記の費用や司法書士への報酬、印紙税などの費用が発生します。これらを全て考慮の上、総合的に判断することが重要となります。
執筆者:高橋庸夫
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