とはいえ、住宅ローンを完済することによって団体信用生命保険の契約もそこで終了してしまいます。一括返済と団体信用生命保険、どのように考えたら良いのでしょうか。解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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目次
住宅ローンを一括返済することで得られるメリットとデメリット
住宅ローンの一括返済を考える際には、それによって得られるメリットとデメリットを比較して決める必要があります。
■一括返済のメリット
1.利息削減効果および総支払額の減少効果を得ることができる
低金利下であったとしても、住宅ローンという大きな金額の借り入れの場合、返済額における利息が占める割合が大きくなります。毎月返済を続けても元金部分の減少のスピードが遅いことから、完済までには長期間を要します。
しかし、一括返済をしてしまえば、それ以降に払うはずだった利息分を支払わなくてもよくなるので、その分、総返済額を少なくすることにつながります。借り入れを行う金額であったり、一括返済のタイミングであったり、さまざまな状況にもより異なりますが、数百万円の利息分の支払い削減効果を得る場合もあります。
2.毎月の返済から解放される
一括返済を行うことで、住宅ローンは完済となります。したがって、それ以降は毎月の返済の必要もありませんから、家計の収支に余裕が生まれるでしょう。
■一括返済のデメリット
1.一時的に資金の余裕がなくなる
一括返済をするということは、当然多額の現金を支払う必要があります。その後のライフイベントによってはまとまった支出が必要となり、それらを支払うための現金がないというリスクも考えておかなければなりません。
住宅ローンを返済している世代というのは、一般的には子どもがいたり、子どもが増え世帯人数が多くなることで生活費が増加したり、子どもの教育費などにお金がかかったりする世代でもあります。
日常生活やライフイベントにおいて、さまざまな支出が想定されるこういった時期に、「早くローンを返済したい」という思いだけで、無理をして一括返済をしてしまうという方もいらっしゃいます。
しかし、それにより教育資金を捻出することが困難になってしまったり、生活が苦しくなってしまったりすることは本末転倒といえるでしょう。生活を維持するためには、目安として、生活費の6ヶ月分~1年分は貯金として確保しておくことを留意しましょう。
2.団体信用生命保険の保障がなくなる
住宅ローンを利用する際には、団体信用生命保険への加入を義務付けている金融機関がほとんどです。団体信用生命保険は、契約者の死亡など特定の条件を満たせば、団体信用生命保険の保険金によって、以後の住宅ローンの残債を保障する仕組みとなっています。
そして忘れてはならないのは、団体信用生命保険の保障は、ローン完済とともに消滅するということ。その他の保険に加入しておらず、団体信用生命保険に頼っているという方は要注意です。
一括返済をした後に、もしも契約者が亡くなってしまった場合、一括返済をしたことで現金が残っていなければ、遺された家族の生活が苦しくなってしまう恐れがあります。
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老後の資金不足も視野に入れる
老後の資金としてある程度貯蓄をしておかないと、退職後の生活が厳しくなる可能性があります。一括返済でそれまで貯めた貯金を使ってしまい、老後にお金がなくなってしまうことのないよう、ローン返済と並行するかたちで老後資金にも目をむけ、貯蓄をしておいたほうがよい場合もあります。まとまったお金を手元に置いておくことは、万が一の備えとしても大切です。
一括返済にかかる手数料にも注意
住宅ローンの一部繰り上げ返済に関しては、手数料を無料としている金融機関が多いですが、一括返済は手数料が発生する金融機関がほとんどです。金額についてはばらつきがあるものの、およそ5500円から3万3000円程度となっています。
一括返済を行う時期やその時点の残債総額によって、利息削減そして総返済額削減効果は異なります。一括返済をすることでどのくらい利息削減効果があるのかシミュレーションサイトなどを利用して確認し、一括返済にかかる手数料を支払ってでも返済を行うメリットがあるのかどうかをきちんと判断するようにしましょう。
一括返済を行ったとしても生活していける保障があるかどうか
団体信用生命保険だけでなく、民間の保険会社の収入保障などに加入している場合であれば、一括返済を行ったとしても問題はないかもしれません。問題なのは、住宅ローンを組む際に団体信用生命保険の保障に比重をかけすぎて、その保障がなくなった時に対応できないことです。
一括返済を行った後に新たに民間の生命保険に加入しようとしても、健康状態によっては加入できない可能性がありますし、何よりも年齢が高くなるにつれて支払う保険料も高くなります。その保険料を払っていける経済力があるかどうかも考える必要があるといえるでしょう。
まとめ
一括返済を行うことで、万が一の備えや子どもの教育資金、老後の資金などが不足することのないように、よく考えてから実行するようにしましょう。無理に一括返済を行うことはせず、万が一の保障を残しておくことを考えることも大切です。
執筆者:新井智美
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