更新日: 2023.12.15 その他ローン
借金が膨らんで返せない… いざというときに知っておきたい「債務整理」とは?
また、支払いが滞り、債権者からの督促状や催告書が届いているなどの切羽詰まった状況のなかでは、できるかぎり早く判断が求められることもあるでしょう。
債務整理とは、返済以外の方法で借金を減らしたり、返済を猶予したりして借金問題を解決する、法律で認められた制度のことを指します。本記事では、債務整理の概要や特徴を確認していきたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
その1 任意整理とは?
債務整理には、「任意整理」「民事再生」「自己破産」の3つの手続きがあります。さらに、状況によっては、これまでに払い過ぎていた利息の返還を請求する「過払い金請求」を利用できる場合もあります。
まず、1つ目の任意整理とは、債権者と和解交渉し、将来分の利息カットなどによる借金の減額や、返済を3年などの期間での分割払いにしてもらう、といった手続きのことをいいます。毎月の返済負担が軽減されることで、全体の支払総額を低くできるメリットがあります。
ただし、個別の事案ごとに和解の可否やその内容は異なるため、注意が必要です。
任意整理は他の個人再生や自己破産と異なり、債権者との和解交渉による手続きであるため、裁判所を通さずに進めることができます。
そのため、職場に債権者からの連絡が頻繁に入ったり、給与が差し押さえられたりするなどの事態に陥らないかぎり、職場に自分自身の借金問題が知られる可能性は低いでしょう。また、任意整理した事実が官報に記載されることもありません。
その2 民事再生とは?
2つ目の民事再生とは、債務者などが裁判所に申し立てを行い、借金の返済が困難な状況であることを認めてもらうことで、許可決定を受けて借金(負債)の額を5分の1程度まで大幅に減額してもらう手続きのことをいいます。
どこまで減額されるかは、借金額や保有している資産額などの状況によって異なり、減額された借金は3年程度の期間で返済していくことになります。なお、税金など一部の負債は、裁判所の許可決定を得た場合でも減額されません。
民事再生の場合は、後述の自己破産とは異なり、原則、保有している財産は処分されません。そのため、一定の条件を満たしていれば、自宅などの財産を手放すことなく手続きを進めることができます。ただし、自宅に担保が付いている場合や差し押さえられた場合は除きます。
民事再生は任意整理とは異なり、裁判所への申し立てを通じて行う手続きのため、民事再生した事実が官報に公告されることになります。官報は、誰でも入手・閲覧可能な媒体のため、職場や知り合いなどに自分自身の借金問題が知られてしまう可能性があります。
その3 自己破産とは?
3つ目の自己破産とは、借金返済の見込みがない場合に、返済が不可能であることを裁判所に認めてもらい、返済を免除してもらう手続きのことをいいます。
債務者が保有する一定の財産は換金され、債権者に公平に分配されることになります。これと併せて、裁判所から免責許可決定を得ることにより、原則、借金はゼロとなり、その後の返済が免除されます。
ただし、税金など一部の負債は、免責許可決定を得た場合でも支払い義務が免除されません。また、自己破産も民事再生と同じく、裁判所への申し立てを通じて行う手続きのため、自己破産した事実が官報に公告されます。
その4 過払い金請求とは?
過払い金請求とは、貸金業者などに払い過ぎた利息の返還を請求する手続きです。過払い金が発生している可能性が高い条件としては、「2010年6月17日以前に借り入れを開始」かつ「借金の完済から10年以内」となります。
すでに完済済みの場合でも、過去に過払い金が発生していれば請求により返還される可能性があり、現在も返済中の場合には、過払い金と残債務を相殺することで借金を減らせる可能性があります。
過払い金請求の手続きは、貸金業者に対する訴訟や和解によって進めますが、その事実が官報に記載されることはありません。
まとめ
債務整理の手続きは、多くの場合、専門的な知識を有する弁護士や司法書士に依頼することになります。しかしながら、債務者自身がそれぞれの債務整理における手続きの概要を知っておけば、実際に相談することになった際にも、その後の手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
なお、当然のことながら、債務整理をした後の影響(デメリットなど)についても十分に理解しておく必要があります。特に、信用情報(ブラックリスト)への登録によって、その後一定期間の借り入れができなくなったり、一定の職業に就くことができなくなったりする場合があることには注意しておきましょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー