国の教育ローン。利用するときの年収の上限は?
配信日: 2019.06.02 更新日: 2019.06.13
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
国の教育ローンを利用する人の世帯年収(所得)の上限額
国の教育ローンは、あくまでも国の制度であるため、利用に際し世帯の年収(所得)に制限が設けられています。
これらの金額は1世帯あたりであるため、世帯主だけでなく配偶者の分も含まれます。また所得は、収入(年収)から社会保険料と所得税や住民税を差し引いた可処分所得を指します。
この表の見方としては、例えば子どもが1人の世帯の場合、年収が790万円以下のご家庭でなければ国の教育ローンは利用できないということになります。
ただし、次のいずれかの要件を満たせば、子どもが2人以下のご家庭に限り、世帯年収(所得)上限額が990万円(770万)までに緩和されます。
(1)勤続年数が3年未満
(2)居住年数が1年未満
(3)世帯のいずれかの方が自宅外通学(予定)者
(4)借入申込人またはその配偶者が単身赴任
(5)融資の目的が海外留学資金
(6)借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超
(7)親族などに要介護・要支援認定を受けている方がおり、その介護に関する費用を負担
(8)大規模な災害により被災された方
国の教育ローンはお金を借りやすい仕組みが整えられている
学生自身が借りる奨学金と違い、国の教育ローンの借り手は親御さん(保護者)です。そして、お金を借りた親御さんが返済する義務を負います。
これらの要件に当てはめて考えてみると、例えば「(2)居住年数が1年未満」や「(6)借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超」では、住宅ローンを借りたばかりで家計に占める総返済負担率が高いご家庭が想定されていることが分かります。
また、「(7)親族などに要介護・要支援認定を受けている方がおり、その介護に関する費用を負担」では、お子さんの教育・進学費用が掛かると同時に、親の介護をしているご家庭を想定しています。
このように、国の教育ローンではご家庭の事情に配慮し、お金を借りやすい仕組みが整えられています。少子化により、さまざまな子育て支援や教育施策の必要性が叫ばれています。高等教育においては、すでに奨学金制度があり、また国の教育ローンも昔から存在します。
いずれも、子育て世帯を対象にした家計に対する支援策です。教育・進学資金について考える際は、選択肢としてこれらの制度があるということを知っておく必要があるのではないでしょうか。
次回は、国の教育ローンにおける「融資額」や「金利」についてお伝えしていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)