更新日: 2019.01.10 介護
あなたは知っているのか・・親を在宅で介護した場合の費用
家計経済研究所が2016年に実施した「在宅介護のお金とくらしについての調査2016年」によると、在宅介護にかかる費用(平均)は月額5万円となっています。
このうち介護サービスへの支出が1.6万円、介護サービス以外の支出が3.4万円となっており、介護保険では賄えない費用の割合が高いことがわかります。
認知症介護になるともっとお金がかかります。この調査結果を参考に在宅介護の費用を知り、介護のお金を準備しましょう。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
在宅介護にかかる費用は平均で月5万円
家計経済研究所の調査によると、在宅介護にかかる費用は月5万円となっています。内訳は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービス費用1.6万円、介護サービス以外の費用3.4万円となっています。
介護サービス費用の内訳は、介護保険サービスを利用限度額の範囲内で利用した費用(介護サービス費の1~2割)1万円と、利用限度額を超えて利用した費用(10割負担)0.6万円の合計です。
多くの世帯では、利用限度額の範囲内で介護サービスを利用していますが、利用限度額を超えて介護サービスを利用した場合には、全額自己負担になりますので注意しましょう。
介護サービス以外の費用には、流動食や配食サービス費などの介護食費や、おむつなどの排泄関連用品の費用、防水シートなどの寝具・衣類の費用、補聴器や杖、入浴用品などの介護用品の費用、自己負担分の医療費と通院交通費、税金・社会保険料などが含まれています。
介護サービス費以外の費用は自治体で独自に補助しています。
例えば、ある自治体では、一人暮らしの高齢者世帯に昼食や夕食を届ける配食サービス(1食410~670円)、日常生活で紙おむつを使用している高齢者に、月1回必要に応じた数量を費用の1割負担で届けるサービス、シーツ・毛布・タオルケット・寝巻などをクリーニングできる利用券を配布(利用券1枚について50円の自己負担)、などのサービスを提供しています。自治体が発行している「高齢者の生活ガイド」などで調べてみましょう。
認知症介護は費用が増える
同じ要介護度でも認知症の程度によって介護費用が増します。同調査の認知症の状態別費用の内訳を見ると、認知症がない場合の費用(平均)は月額4.7万円ですが、中度だと5.5万円、重度だと5.3万円となっています。
また、要介護4か5で認知症も重度という最も介護負担が重いと思われる世帯では、1カ月平均13万円の支出がありました。
一方、要介護度が低い場合でも、認知症の程度が重くなると介護費用が増えています。見守りのために、デイサービスやショートステイなどの利用が増える可能性があるからだと考えられます。
家族支援の状況
在宅介護では、介護する家族への支援が欠かせません。同調査では、在宅で介護するうえで各種の支援が役立っているかについてたずねています。
ケアマネジャーの定期訪問に関しては、「とても役立っている」25.1%、「まあ役立っている」54.7%。ケアマネジャーの緊急時対応は、「とても役立っている」15.2%、「まあ役立っている」22.2%。事業者のサポートは、「とても役立っている」22.2%、「まあ役立っている」50.6%。自治体講習会は、「とても役立っている」2.1%、「まあ役立っている」10.3%。家族会は「とても役立っている」2.5%、「まあ役立っている」7.0%となっています。
ケアマネジャーの定期訪問や事業者のサポートを、役立つと回答している世帯が7割近くになっています。
これらのサービスを利用していないのは、ケアマネジャーの定期訪問5.8%、ケアマネの緊急時対応25.9%、事業者のサポート11.1%にすぎません。
一方、自治体講習会や家族会に関しては、役立つと回答している人は少ないですが、自治体講習会に関しては70.0%、家族会に関しては79.8%が「利用・参加なし」ということが影響しています。
介護は、ひとりで抱え込まないことが大切です。同じ悩みを持つ家族会などに参加することで、精神的なストレスを和らげることができるでしょうし、地域の介護事業者などの評判などの口コミ情報を得ることができます。
地域包括支援センターなどで、自治体講習会や家族会についての情報が得られますので、参加してみましょう。参加すれば役立つと思います。
介護の備え
介護は情報戦です。親の介護に備え、公的介護保険について利用の仕方やどのようなサービスが使えるのか知っておきましょう。
自治体では「よくわかる介護保険」などパンフレットを作っており、自治体のホームページからダウンロードできます。
また、公的介護保険のサービスメニューにないサービスに関しては、利用者の全額自己負担になりますが、自治体独自で費用の補助をしていますので調べてみましょう。
また、誰もが要介護状態になるわけではありませんが、いつ始まり、いつ終わるかが読めず、長期化することがあるのが介護です。貯蓄で備えるが基本ですが、介護が長期化した場合、貯蓄が底をつく可能性があります。
もし、親が介護になったら、その費用は親の貯蓄から出せるのであれば良いのですが、出せない場合は子どもが負担せざるを得ません。
子どものライフプランにも影響してきますので、親にそろそろ介護が必要かなと思ったら、介護費用としてどのくらい出せるのか聞いておくと良いでしょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。